デキない人ほど「観察力」が弱い
仕事の書類で誤字脱字が多い、人の気持ちが汲み取れない、起きるかどうかもわからないことでウジウジと悩んでしまう……こういう人に不足しているのは、もしかすると「観察力」かもしれません。
チェックの際に書類を観察できていないから誤字脱字をするし、相手の仕草や表情を観察できていないから気持ちがわからず、冷静に状況を観察できていないからやたらと悩む、というわけです。
かといってもやみくもに「観察しよう」と意気込んでも観察力は高まりません。実は観察力には「目」「脳」「意識」ひいては「体幹」が深く関わっており、筋トレと同じように鍛えなければ身につかないものだからです。
ではどうすれば観察力を鍛えられるのでしょうか。以下では観察力を高めるために行いたい、3つの習慣を紹介します。
どれも今日から取り入れられるハードルの低い「はじめの習慣」なので、ぜひ気軽に取り入れてみてください。
絵画・映画の鑑賞力を磨く

近年日本の医学部では、医学生に対して「診察の精度を高めるためには、観察力を鍛える必要がある」とし、カリキュラムのなかに絵画の鑑賞を組み込み、観察力を磨くトレーニングをしているそうです。
このことからも絵画や映画といった視覚芸術の鑑賞力≒観察力と言ってもいいほど、両者は密接な関係にあることがわかります。そのため、
・なんとなく興味が出て絵画展に行ってみたものの、何が何だか分からず出てきてしまった。
・「傑作」とされる映画を観たものの、イマイチその理由がわからなかった。
といった経験がある人は、鑑賞力を鍛えることで観察力を高めることができます。
鑑賞力アップの方法にはいろいろなものがありますが、手っ取り早くはじめられるのは「鑑賞ノート」を書くことです。
1.ノート、もしくはパソコンの文書作成ソフトを用意する。
2.絵画・映画を観ながら、その都度感じたこと、気づいたことをメモしていく。
3.メモをもとにいろいろな角度(ジャンル、時代など)から自分なりの感想を書く。
4.このエクササイズを積み重ねる。
最初は「これが何になるんだ?」と思うかもしれません。しかし積み重ねていくうちに、以前は気づかなかった作品の細部にも目がいくようになります。それこそ観察力が高まっている証拠です。
慣れてきたら「鑑賞ノート仲間」を作ってみるのもおすすめです。芸術作品の感想は、10人いれば10通りあるもの。意見交換を通じて「そんな見方もできるのか!」という発見を重ねていくことで、さらに観察力が磨かれていきます。
とはいえ、「はじめの習慣」のハードルは低く設定しておきましょう。手始めに月2〜3回、じっくり腰を据えて絵画・映画を観る時間を取ってみてはどうでしょうか。
はじめの習慣①:月2〜3回、鑑賞ノートをつけながら絵画・映画を観る
「見る力」を鍛える

人間は情報の90%を視覚から得ていると言われています。ということは、目の「観る力」を存分に発揮しなければ、観察力を十分に高めることはできません。
「観る力」を鍛えるためには、筋トレと同じようにトレーニングが必要です。鍛えるのはまず目。そして目と体幹の連動性です。
「目はわかるけど、なんで体幹なの?」と思うかもしれません。しかし、当たり前のことですが、目は頭についています。
もし体幹が目と連動しておらず、絶えずグラグラとしていたら、まともに観察することはできません。だから目と体幹の連動性を鍛える必要があるのです。
具体的な方法は以下の2つです。
<目のトレーニング1>
1-1.ペンを1本用意する。
1-2.ペンを視界の左端から右端へ、ゆっくり移動させて目で追う。
1-3.同じように右端から左端へ、ゆっくり移動させて目で追う。
1-4.これを10秒続ける
1-5.1〜4の動作を上下、対角線でも行う。
<目のトレーニング2>
2-1.ペンを2本用意する。
2-2.視界の左端と右端に、ペンを1本ずつ持つ。
2-3.左右のペンを交互に1秒ずつ見る。
2-4.これを10秒間繰り返す。
2-5. 1〜4の動作を上下、対角線でも行う。
<目と体幹の連動性のトレーニング>
1.幅6〜8センチ、部屋の1辺の長さ分の木の板(もしくはダンボールなど)を用意して平均台のようなものを作る。
2.板から落ちないように、板の上をゆっくりと歩く。
3.歩けたら「手でバランスを取らない」→「下を見ない」→「目を閉じる」の順で難易度を上げていく。
4.1回のトレーニングにつき、5分間行う。
※目のトレーニングでは体や首を動かさず、目だけを動かすよう意識する。
慣れてきたら時間を延長したり、回数を増やしたりして、負荷を高めていきましょう。とくに目のトレーニングは目の筋肉の筋トレなので、負荷を高めていくほど見る力はアップしていきます。
実践するのは、1日がはじまる朝がいいでしょう。いずれも時間にすると5分以内に収まるので、朝が忙しい人でも取り入れやすいのではないでしょうか。
はじめの習慣②:「見る力の筋トレ」を毎朝行う。
瞑想力を高める

スリランカ上座仏教長老アルボムッレ・スマナサーラは、映画監督である想田和弘との対談本『観察・「生きる」という謎を解く鍵』のなかで、次のように話しています。
個人個人の「私」という幻覚は、ずーっとストーリーを作りまくっているのです。だから「ストーリーを作るな」、と言いたいのです。
引用:前掲書 第四章「ストーリーを作るな」より
スマナサーラ長老はこう指摘しています。すなわち、私たちはニュースや人間関係、猫の仕草に至るまで、何かと「ストーリー」を作って解釈しがちで、そのせいで客観的な事実を観察できなくなっていると。
もっと簡単に言えば「人間はすぐにわかりやすい解釈に飛びついて、冷静に物事を見ることができていない」ということです。
今の世の中にはテレビ、ネットニュース、SNSなど、あちこちにさまざまな解釈があふれています。そのため、なおさら自分にとって納得のいく解釈に飛びついてしまいがちです。
その結果、自分の視野を狭めて観察力を低下させ、悩まなくていいことで悩んだり、間違った選択をしてしまったりするのです。
冒頭で挙げた、起きるかどうかもわからないことでウジウジと悩んでしまうなどの悩みを持っている人なら、心当たりがあるのではないでしょうか。
このような状況から脱出するためには、「瞑想力=ありのままを見る力」を高めて、冷静な頭で物事を観察できるようになる必要があります。
では具体的にどうすればそんなスキルが身につくのでしょうか。実は瞑想力も筋肉と同じで、少しずつ負荷(=瞑想する時間)を高めていくことで鍛えることができます。
瞑想の方法は転職するなら「瞑想」から!一流が実践する1日1分の頭のエクササイズで紹介しているので、まずは「寝る前の10分」から始めてみましょう。
はじめの習慣③:毎晩10分〜の瞑想を行う。
3つの「はじめの習慣」で観察力を高めよう

観察力が不足していると、仕事においてもプライベートにおいてもさまざまなことを見誤るおそれがあります。
心当たりがある人は、ここで紹介した3つの「はじめの習慣」で、観察力を高める努力をしてみてはどうでしょうか。
・月2〜3回、鑑賞ノートをつけながら絵画・映画を観る
・「見る力の筋トレ」を毎朝行う。
・毎晩10分〜の瞑想を行う
まずはこれらからスタートして、苦もなくできるようになったら、少しずつ回数や時間などを増やしていきましょう。
ゆっくりと、しかし確実に観察力が高まっていくはずです。すると、今までは見えていなかったあれこれが、驚くほど目につくようになり、仕事でもプライベートでもプラスの効果が実感できるでしょう。
