「希望に満ちた未来」は自分で切りひらけ
「この会社に入れば一生安泰」「独立すれば自由が手にはいる」そんなものは全て幻想です。どんな大企業でも倒産の危機があり、独立しても見通しが甘ければ不自由な生活を強いられるでしょう。
棚から落ちてくる牡丹餅を待つように、「希望に満ちた未来」を待っていてもダメなのです。ここでは同じ会社で一生を過ごすにしても、別の会社に転職したり、独立したりするにしても、自分の身1つで生きて行くための3つの仕事術を紹介します。
世間の逆を行く「キャリア術」
「今の会社で上り詰めたいんだ」
自分自身が転職を考え始めると、周囲の人たちのこういった考えを聞く機会も増えると思います。「キャリアはアップするもの」や「会社では出世を目指すもの」は今や常識と言ってもいいかもしれません。しかしどこでも生きていけるビジネスパーソンになるためには、このような常識は捨て去り、その逆を行く「複業」という戦略が必要です。
例えば堀江貴文氏は「1つの仕事じゃなくて複数の仕事を掛け持ちして時間分割してという働き方が当たり前になる」と言います。
株式会社スプリーの代表を務めながらも、様々な肩書きを持つ安藤美冬氏は、フリーランスになる時に「2つ以上の仕事、2つ以上の肩書きを持とう」と心に決めて会社を辞めたのだとか。時代の先端を行く人たちはすでに1つの仕事や会社で「上り詰める」という発想を捨てているのです。
「副業すら禁止の今の会社で複業なんてできない」と言う人もいるでしょう。それならば思い切って転職するのもアリです。イケダハヤト氏も取り上げた「エンファクトリー」というIT企業のように、「専業禁止」という人材理念を掲げる企業も出てきています。
ここまで思い切った施策ではなくとも、複業を認める企業は徐々に増えつつあります。1つの仕事、1つの企業では食っていけない時代が来た時に途方にくれないよう、今から複業ができる人材になっておくことが重要です。
用意周到な「人脈術」を駆使する

「人脈力」はビジネスパーソンの重要なスキルの1つです。しかしただ闇雲に「人脈を作らなきゃ」とセミナーなどに参加していても、身になる人脈は手に入りません。
「世界一おいしい朝食」の店として知られる「ビルズ(bills)」を紹介して日本に「朝食ブーム」を作り出した中村貞裕氏。彼はカリスマバイヤーである故・藤巻幸大氏を始め、各方面に万単位の人脈を持っているそうです。
その人脈を作るために中村氏が心がけているのが「圧倒的なインプット」。あらゆる情報を自分の中に広く浅く持っているだけで、様々な人たちと会話ができるようになり、そこから人脈ができていくのです。
これをしないままに異業種交流会やセミナーに参加しても、一向に話が広がらず、人脈にはならないというわけ。具体的な方法として中村氏が挙げているのが「週に1〜4回、本屋で1時間ほど雑誌を片っ端から読む」というもの。これなら実践は難しくありません。
中村氏はそうして作った人脈を育てる際には「友達以上恋人未満」の状態を保ち続けることが重要だと言います。マメに連絡を取り、自分の近況報告をしたり、相手の近況を気にかける。これによって「仕事をしたい」と思った時にすぐに連絡が取れる「生きた人脈」になるのです。
戦略的「お金術」

「希望に満ちた未来」を語る上で切っても切れない話題が「お金」。しかしただ漠然と不安感を抱いていても一向に悩みは解決しません。冷静に判断し、戦略的にお金の問題を考えるには、まず「希望に満ちた未来」を具体的な数値にしてみることが先決です。ここでは働けなくなって所得が大幅に減少する老後について、数値的に考えてみましょう。
公益財団法人・生命保険文化センターによれば、2014年のデータに基づいて計算した「60歳以上の無職世帯(2人以上)」の1ヶ月間の平均支出は約24.7万円、「60歳以上の単身無職世帯」は約14.3万円です。これを踏まえて以下の条件で老後にどれくらいお金が必要なのかをシミュレーションしてみましょう。
・国民年金6万円、厚生年金9万円。
・配偶者はなし。
配偶者がいないため、月の生活費は14.3万円です。25年間を年金と自分の蓄えだけで生きるとして、仮に厚生年金のないフリーランスだった場合に必要なお金は次の計算の通り。
(14.3万円−6万円)×12ヶ月×25年=2490万円
対してずっと会社員を続けた場合に必要なお金は次の金額です。
(14.3万円−6万円−9万円)×12ヶ月×25年=−210万円
この計算に基づけば、むしろお金が余ることがわかります。
当然これらは仮定に過ぎません。しかしある程度必要なお金が把握できていれば「自分がどれだけ貯めればいいのか」、「自己投資のためにいくらまでなら使っていいのか」という考え方ができるようになります。
「お金はあればあるほどいいから」などと短絡的に考えずに数値化して戦略的に考えれば、必要もないのに会社にしがみついて時間を無駄にすることもありません。
常識を疑い、戦略を立てよ

ここで紹介した3つの仕事術からわかるのは、どこでも生きていけるビジネスパーソンになるには「常識を疑う」という視点と「戦略を立てる」という視点が必要だということです。
私たちはついつい自分の頭で考えることを止め、常識を鵜呑みにしてしまいます。しかしそれでは時代の流れに乗るどころか、飲み込まれてしまうでしょう。そうならないためには「キャリアアップこそが正義」「人脈を作るならセミナーに行くべき」という常識を疑う必要があります。
ただ漠然と将来に不安を抱えているのもナンセンスです。それならば「生きた人脈」を作るために緻密に人脈を育て、自分の将来に必要なお金の計算をするべきです。くれぐれも棚からの牡丹餅を待つことに時間を浪費しないようにしましょう。
(合わせて読みたい!)「会社員を辞めてみる」という選択
参考『会社を辞めても辞めなくてもどこでも生きていける仕事術』
