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社会人は「ラクして得意を磨く」が大事
ポータブルスキルとは、業種・職種が変わっても応用が利く「持ち運び可能なスキル」のことです。今後転職を考えている人にとっては、専門的な知識・経験と並ぶ必要不可欠なスキルです。
しかし闇雲に「とにかくポータブルスキルを磨かないと!」と頑張るだけでは、非効率です。社会人にとって大事なのは「ムリして苦手を克服すること」より「ラクして得意を磨くこと」だからです。
そこで今回はポータブルスキルの具体的な説明をしたのち、「苦労せずに伸ばせるポータブルスキル」の見つけ方を紹介します。
いまさら聞けないポータブルスキルの全体像
ポータブルスキルという言葉は書籍や雑誌等でも見かけるようになりましたが、実は具体的にはよくわかっていないという人も多いのではないでしょうか。
厚生労働省が公開している『“ポータブルスキル”活用研修 講義者用テキスト』は、ポータブルスキルの全体像を次のように定義しています。
出典:厚生労働省
ポータブルスキルは大きく「仕事のし方」と「人との関わり方」に分けられ、前者は最終的に「現状の把握」「課題の設定方法」「計画の立て方」「実際の課題遂行」「状況への対応」の5つに、後者は「社内対応」「社外対応」「部下マネジメント」の3つに分類されています。
たとえば現状の把握のスキルが高い人は、仕事に関連する世間や競合の動きを把握するための情報収集が得意だったり、そうした情報を適切に評価・分析する能力に長けていたりします。
社外対応のスキルが高い人は、顧客をはじめとする社外関係者に気に入られたり、関係者間の合意を取りつけるのが上手かったりします。
「苦労せずに伸ばせるポータブルスキル」の見つけ方

前述したように社会人にとって大切なのは「ムリして苦手を克服すること」より「ラクして得意を磨くこと」です。
なぜなら、中途半端なオールラウンドプレイヤーよりも、突出した能力を持つ人間同士がチームとして動いた方が、アウトプットは大きくなるからです。
ではどうしたらラクして得意を磨き、転職に役立つようなポータブルスキルを身につけられるのでしょうか。以下ではストレングスファインダーを活用する方法を紹介していきましょう。
※ストレングスファインダーについての解説は自分の強みがわかる「ストレングスファインダー 」の活用方法を専門家に聞いてきました!をご参照ください。
●ステップ1:ストレングスファインダーで自分の資質トップ5を知る
ラクして得意を磨くには、何よりもまず自分の得意を知る必要があります。そこで役にたつのがストレングスファインダーです。
ストレングスファインダーはアメリカの世論調査やコンサルティングを手がけるギャラップ社が開発した自己分析ツールです。
このツールを使ってわかるのは、同社の持つ膨大なデータから抽出された34の資質のうち、自分がどんな資質に長けているのかです。
34の資質一覧

なかでもTOP5に挙がる資質は、わかりやすく言えば「その人の強み」。うまく活用することで、自分のパフォーマンスを最大化することができます。
たとえば現在フリーライターをしている筆者のTOP5は以下の5つです。
1.内省:じっと考える能力
2.学習欲:学びたいという強い欲求
3.親密性:深い人間関係を築こうという姿勢
4.原点思考:過去を踏まえた上で現在について考える能力
5.責任感:自分がやると言ったことをやり遂げたいという強い気持ち
●ステップ2:自分の強みと相性の良いポータブルスキルを見つける
自分の強みがわかったら、次はそれと相性の良いポータブルスキルな何かを考えてみましょう。
ストレングスファインダーとポータブルスキルに直接的な関係はないので、一目瞭然というわけにはいきませんが、見比べていると類似するポータブルスキルが見えてくるはずです。
筆者の場合、過去の経験も踏まえながら見比べていくと、類似するポータブルスキルは、「実際の課題の遂行」と「部下マネジメント」でした。
自分の役割を理解し、前例の有無などを検討したうえで、進行・品質を管理しながら障害を乗り越えて課題をやり遂げる……これはまさに私の「内省」や「原点思考」、「責任感」などの資質が発揮される分野です。
また筆者の強みである「親密性」は、社内外の対応のような関係者の多い仕事よりも、部下マネジメントのような比較的少人数にコミットする仕事の方がパフォーマンスを発揮しやすいスキルです。
●ステップ3:ポータブルスキルが伸びるような状況を整える
ステップ2をクリアしたら、そのスキルを磨く段階に入ります。自分の強みと相性の良いポータブルスキルを伸ばせるような仕事に手をあげるのです。
たとえば実際の課題の遂行に関わるポータブルスキルを磨きたいのなら、自分だけでなくチームの進行管理に手を挙げてみる。部下マネジメントのポータブルスキルを磨きたいのなら、新人の教育係に手を挙げるのもいいでしょう。
実際筆者はこれまでライターとしての仕事しかしてきませんでしたが、最近はクライアントと直接やり取りをしてスケジュール管理をしたり、ライターチームを作って教育・品質管理の仕事もしたりするようになりました。
得意なので、正直そこまで頑張らなくても高く評価してもらえますし、評価されると嬉しいのでやる気も出ます。結果が出るので継続で仕事を依頼してもらえる確率も高くなります。まさにいいことづくしです。
「それはフリーランスだからできるんでしょ?」と思うかもしれません。確かに会社勤めの場合はフリーライターと違って、なかなか思うような仕事をさせてもらえないでしょう。
そのため、自分が伸ばすべきポータブルスキルをしっかりと絞り込んで、それを伸ばせるような仕事へ常にアンテナを張っておく必要があります。そしてチャンスが来たらすかさず飛びつく――会社員が意図的にポータブルスキルを磨くには、こうした姿勢が大切です。
「ポータブルスキル×自分の強み」で成長を加速させよう

今後、転職をしていくのであれば、ほかの組織でも役にたつ能力=ポータブルスキルの強化は必須です。
しかしこれを10年も20年もかけて磨いているようでは、その間に会社がなくなったり、人員整理の憂き目に遭ったりするかもしれません。ポータブルスキルは、自分なりの最大速度で磨く必要があるのです。
だからポータブルスキルを強化するにあたっては、「苦労せずに伸ばせるかどうか」が大事なのです。苦手を克服するのは大変なうえに結果につながりにくいものですが、得意を伸ばすのは比較的ラクなうえに結果につながりやすいからです。
「ポータブルスキル×自分の強み」で成長を加速させ、転職のための土台を作りましょう。
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部