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新しいクラウドファンディングサービスが登場!
8月10日、日本のクラウドファンディングの先駆けともいえるCAMPFIRE社が「polca(ポルカ)」という新サービスをリリースしました。リリースから間もないにもかかわらず、すでに多くのユーザーを獲得しており、人気ブログ「隠居系男子」の鳥井弘文さんや同じく人気ブログ「まだ東京で消耗してるの?」のイケダハヤトさんなど、著名人にも注目している人は少なくありません。
ここではこのpolcaのサービスについて紹介するとともに、このサービスがもたらすクラウドファンディング、そしてお金の使い方への影響について論じます。
CAMPFIRE社新サービス「polca」

●「polca」ってどんなサービス?
身近な友人や会社の同僚、サークルの仲間、地域のつながりなど、緩やかに閉じられたコミュニティ、個人と個人が繋がり合う小さな経済圏の中で、気軽にお金を集めたり誰かを支援したりする仕組みは出来ないか?というアイデアから、ポルカは生まれました。
— 家入 一真 @polca出来たよー! (@hbkr) 2017年8月10日
polcaは友達(friend)と資金調達(funding)を合わせた造語「フレンドファンディング」を行うためのアプリとそのサービスです。
利用方法は極めて簡単。まず最初にやりたいことをもとに企画を作成します。例えば「海外に旅行したいからカンパして欲しい」「ノマドワークをするためのMacBook Proを買うための資金が欲しい」「週末のバーベキューの資金を集めたい」など、内容はなんでもOK。
次に目標金額を設定します。しかしpolcaは「小さな経済圏」を前提としたサービスなので、300円という極めて少額から募ることができる反面、上限は10万円となっています。
目標金額が設定できたら、次はクラウドファンディングでの「リターン」に該当する「おかえし」を設定します。中身は企画同様なんでもOKです。お礼の手紙やお土産話、イベント参加者の集合写真でも問題ありません。
ここまでできればあとは友達にシェアするだけ。支援されたお金はアプリ内にたまり、指定した銀行口座に任意で引き出せるようになっています。
●「polca」はお金の使い方を変える
このサービスの新しさは「気軽にクラウドファンディングの企画を立てられる」という点よりも、「気軽にお金を支援できる」という点の方にあります。
クラウドファンディングは著名人が活用するなどして、少しずつ社会的な認知を得てきました。しかし実際に支援するとなると「見ず知らずの人にお金をあげる」という行為をためらってしまう人も、まだまだ多いのが現状でしょう。
polcaはこの心理的な障壁を「フレンドファンディング」というコンセプトで打ち破ろうとしています。
クラウドからフレンドファンディングへ。「お金”で”もっとなめらかに、お金”を”もっとなめらかに。」をビジョンに、お金がコミュニケーションと共に流通する、個人を中心とした、小さく、そしてやさしい経済圏をつくっていきます。 https://t.co/47Wck2X0qw #polca
— 家入 一真 @polca出来たよー! (@hbkr) 2017年8月10日
それまでは見ず知らずの人だったクラウドファンディングの起案者が、顔も性格も知っている友達になるだけで、「お金を使って応援する」という行為の心理的な障壁は格段に小さくなります。
そしてその行為に慣れていけば、おのずともっと広い視野で同じことができるようになっていくでしょう。polcaは「お金がなくてやりたくてもやれないことに、誰もが挑戦できる世界」を、さらに一歩進めるサービスなのです。
「polca」はお金の概念も変えていく

●「お金の価値」が低くなる?
polcaの一部の企画に対して「他人からもらうより、自分で稼いで買えば?」という議論もあります。しかしこれに対してはイケダハヤトさんが「「#polca で集めず自分で買えよ」と批判する人が見落としていること。」(http://www.ikedahayato.com/20170814/71778295.html)の中で、そういう人たちはこれからお金がどうなっていくかが全然見えてないと指摘しています。
polca登録できてないから支援できてないけど、多分お金って本来もっと流動的なんですよ。300円とかなら友だちにポンポン渡し合っても不思議ではない。お金の流動性が高まれば「自分で買うよりさっさと友だちから集めた方が早い」という判断が合理的になる。
— イケダハヤト (@IHayato) 2017年8月12日
ネットワークの発達により、お金の持つ物理的な制約はほとんどなくなりつつあります。しかしお金が自由になるにはまだ使う人間の側の精神的な制約が残っています。
これを自由にして、それまでもったいぶっていた「お金を使う」という行為の価値、さらにはお金そのものの価値を引き下げたシステムのひとつがpolcaなのです。
価値が低くなれば循環はより活発になります。その変化が「自分で買うよりさっさと友だちから集めた方が早い」という判断を合理的にしていくのです。
これは働く、すなわちお金の稼ぎ方に起きている変化とも似通っています。クラウドソーシングのランサーズ社が6月にベータ版をリリースしたスキルシェアリングサービス「pook(プック)」は、同社がクラウドソーシングで曖昧にした「プロ」と「アマ」の壁を、さらに押し下げるものです。
pookを使えば家事代行や買い物の荷物持ちなど、これまではアマチュアだったためにお金にならなかったスキルを、お金にかえることができます。ここでは以前はプロの専売特許だった「お金を稼ぐ」という行為の価値、そしてそこで稼がれるお金の価値を引き下げられています。
使う面でも、稼ぐ面でも、お金の価値は低くなる流れが生まれているのです。
●「polca」や「pook」が見逃せない理由
こうした流れを無視していても、生活ができなくなるわけではありません。しかし人生を充実させるうえで重要な損をする可能性はあります。
第一に広い意味でのビジネスチャンスを見逃します。第二に「やりたいことをやるためにお金を集める」という選択肢と、「自分のやりたいことをお金に変える」という選択肢を1つずつ失います。
もちろんこれまで通りのやり方で出資者や顧客を探す方法もありますが、それはつまり様々な障壁もこれまで通りということです。polcaやpookが生み出す流れの恩恵はうけられません。
第三にこうした選択肢を失うということは、それだけ「やりたいことができない」「やりたいことで食べていけない」という結果を生みます。お金を稼がなければ生きていけない以上、そのための手段がやりたいことではないというのは、そのまま人生を楽しめないということにもつながります。
クリエイターや起業家、アーティストなどの個人が小さな経済圏をつくって、小さく稼ぎながら生きる。無名なまま小さな幸せを大事にしながら生きる人も、その中から有名になる人も出るだろう。大事なのは個人が経済を選択できる世の中であるということ。
— 家入 一真 @polca出来たよー! (@hbkr) 2017年8月8日
これまで通りの世界で十分楽しく生きていける人は、そのままでも全く問題ありません。しかしこれまで通りの世界でうまくいかない人たちにとって、家入さんやランサーズ社長の秋吉さんが作り出した新しいサービスは、自分の人生を豊かにするための非常に重要な選択肢となり得るのです。
お金の価値も自分の価値も変わっていく
こうしたお金を巡る変化は、お金の価値だけでなく、お金を稼ぐ主体となる私たち自身の価値をも流動的にします。
polcaのユーザーが企画を立ち上げる際に「ドキドキする」「緊張する」などとこぼしているのは、新しいプラットフォームで自分の価値がどのように評価されるのかという、不安と期待がないまぜになった感覚の表れでしょう。
もちろんpolcaやpookの登場で、これまでの価値観や世界がそっくりそのままひっくり返ってしまうわけではありません。しかし家入さんがいうように、個人が経済を選択できる世の中への第一歩が踏み出されつつあるのは確かです。
今の世界観が絶対ではなく、ほかの世界観もあっていいのだという優しいメッセージが、polcaやpookには込められています。
少しでも興味が湧いた人は、これらのサービスを一度利用してみてはいかがでしょうか。
