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メディアで話題の急成長企業
年商150億円(2016年度)を誇るメガネ販売の全国チェーン「OWNDAYS(オンデーズ)」をご存知でしょうか。日本のみならず、シンガポール・台湾・タイほか11カ国に220店舗以上を展開する急成長をとげています。
部長職にあたる営業担当マネージャーを社員による選挙で決めるユニークな人事制度は、ワールド・ビジネス・サテライトで特集されるなど注目を集めています。
またSNSの活用にも積極的で、インスタなどのフォロワー数が1500人以上なら採用を優遇し、月5万円の手当を支給する「インフルエンサー採用」を実施しています。
いまの時代にあった柔軟な施策を次から次へと打ち出す発想はどこからきているのでしょうか。代表の田中修治社長にお話をうかがいました。新しいパラダイムに乗り遅れたくない人は必見です。
うつり変わる資本

−御社の新人研修ではこれから「価値主義」の時代になると伝えているそうですね。「価値主義」とはどういうことなのでしょうか?
田中社長:そうですね、どこからお話すればいいかな。いま新卒の若い子たちに、20年後どうなってもらいたいか考えるとき、過去の歴史の流れを調べていくと、なんとなくこれからの未来の流れが見えてくるような気がしています。
時代によって資本(事業活動などの元手)はうつり変わっています。肉体の労働力が資本だった時代があり、産業革命を経て知識や技術、機械などの資財が資本だった時代がありました。
それがつぎにお金にうつり、お金からお金を生みだすような方法が出てきて、経済を回すようになりました。このように資本というのは、時代によってうつり変わってきているわけですよ。永遠じゃないんです。
ビットコインやTポイントカードなどがすでに使われているように、特定の国家が発行した貨幣でいろんなものを交換する、資本主義が崩れ始めている傾向がでてきています。
この流れを踏まえると、おそらく20年後には、お金がなくなっているだろうという前提にたっていまの世の中をみています。
じゃあ、いま仮にお金がなくなったとき、人々は何を資本にするだろうと考えると、自分の周りにいる人たち、もしくは社会に、「自分の価値」を認めてもらえるか、信用、信頼、関心、興味をもってもらえるかが資本になるでしょう。
それをたくさん持っている人が、これからの社会をうまく生きていくことができるんじゃないかなと思います。だからこれからは「価値主義」の時代だと教えています。
必要とされる人に必要とされる組織

−「価値主義」の時代と、企業はあまり相性がよくないような気がします。これから企業はどうなっていくのでしょうか?
田中社長:将来的にあと20年ぐらいしたら会社はなくなると思っています。僕たちが売っているメガネもなくなると思います。
そう考えたときに、いまのわたしたちは、20年後なくなっている可能性が高いことを一生懸命やっているんですよ。でも20年後に突然、今日でおしまいってなくなるわけじゃないから、だんだん自然に淘汰されていくと思うんですよね。
そうなっていくときに若い子たちに教えていきたいのは、一生懸命に利益を出してお金を稼ぎましょうってことよりも、周りにいる人たちを楽しませて、周りにいる人たちに必要とされていきましょうということ。
どうやって周りの人に必要とされるかは社員一人ひとりが考えればいいことです。
“必要とされる人たちに必要とされる組織”にオンデーズがなっていれば、もしテクノロジーが進化してメガネが売れなくなっても、他のビジネスが成りたちますよね。
会社という形態ではなくなっても、オンデーズがという集合体であって、それが好きなひとたちがいればなにかしらの形で続いていくのかなと思いますけどね。
お金を払って労働をする

−え!20年後ですか?会社がなくなりますか?そんなに早く変化がきますかね?
田中社長:くると思いますよ。キングコングの西野くんと8月1日にサーカスというイベントをやるんですよ。いまその準備をしているのですが、2,000人規模の会場なのでスタッフが100人ぐらい必要なんですね。
それではじめに、そのスタッフをやれる権利を5,000円で販売したんですね。そうすると一瞬で100人分が売り切れるんですよ。そういうことなんじゃないですか。
つまり、魅力的な労働は、人がお金を払ってもやりたくなるのでそうやって成りたっていくようになるし、昔ながらのやりかたを20年後もやらなければいけない会社はしだいに淘汰されてなくなっていくと思います。
−なるほど、お金を払って働いてくれるスタッフが100人ですか!たしかにホリエモンが運営するHIU(堀江貴文イノベーション大学校)も同じような形でプロジェクトが成りたっていますね。
とはいえ、、、昔ながらのやりかたのままの企業もやっぱり残りますよね?
田中社長:どうでしょうかね。イケてない企業はイケてないまま残り続けて「苦しい、苦しい。人が集まらない」となるでしょう。
またそこで、「残業がきつい、労働環境がキツイ」とか文句を言いながら働くみたいな人は、10年後もいるんじゃないですかね。
カルチャーが重要

−それは切ないです。イケてない企業で働き続けなければいけない人に、なりたくありません。そうならないためには、考え方をどうやってアップデート(更新)していけばいいですか?
田中社長:いやー、どうですかね。それはわからないですね。偉そうなことを言っていますが、うちをつまらなそうにして辞めていく人もいますからね。
経営者の目線でいうと、ある程度もともと素養がある人を雇うのが的確で、価値観に合っていない人を新しい価値観に変えるというのは生産性が悪いですね。
オンデーズでいえば、文化祭を全力で頑張るタイプの熱い集団にしたいので、文化祭の楽しさがわからない人に教えるよりも、最初から文化祭を楽しめる連中を集められるようなカルチャーをつくることを意識しています。
−文化祭的なノリが苦手な人はどうすればいいですか?
田中社長:業種にもよると思いますよ。僕らは小売やサービス業と言われる業種にカテゴライズされる会社をやっていて、ここの商売というのは特許や技術的な何かで差別化がはかりづらいんですよね。
属人的なもので勝敗が決まるっていうか、労働集約型の商売をやったときにはこっちが絶対に強いんですよ。
けどそうではない企業もあって、特別な技術や再現性が難しいものをもっているなど、そういうもので成功している企業もあります。
強みがどこにあるかだと思うんで、自分にあうところを見つければいいんじゃないですかね。
年収2,000~3,000万円はだれでも稼げる

−これからビジネスパーソンとして成功するためにはどんなスキルが必要になりますか?
田中社長:世界的に見れば、日本に生まれた時点で、自分はかなりいい宝くじを引いたようなものだと思います。
スキルがどうとか言う前に、できることをちゃんとやれば、おそらくほとんどの人は、自分が思い描いているぐらいの人生は手に入るような恵まれた環境だと思っています。
俺たちの親の世代(70~80歳)の頃はまだ金利がついていたけど、いまは金利がマイナスっていうことは、社会の富が一巡したってことです。
金利が高かったっていうことは、社会にまだ足りないものがたくさんあったということなんですよ。
だから自分たちの親の世代までは一生懸命働いても、お金を持っている人もいれば、持っていない人もいるっていうのはわかるんですよね。
けど、いまの時代はできることをちゃんとやりさせすれば、年収2,000~3,000万円ぐらいには絶対なるし、人からも必要とされるし、そんなに生活は困らないんですよ。
だけどやらないんです。うちの社員を見ていてもやらないんですよね。
知っていると、できると、やっている、というのは大違いなんですよね。知っていて、できることはたくさんあるけど、ほとんどの人がやってないんです。
すごい簡単な話で、例えば毎朝、定時の10分前に出社すれば、みんなから信頼されることなんて小学生でもわかるじゃないですか。
やろうとおもえば絶対できるんだけど、それを365日必ず10分前にくる人っていないんですよ。たまにいるんですけど、そういう人が社長とかになっているんですよ。
「社長すごいですね、才能がありますね」って言われることがあるけど、自分の場合は、バカで知識がないから、とりあえずできることだけを、20年間やった結果でしかないんですよ。秘訣を教えてくれって言われても秘訣なんかないんです。
−やってないだけ。本当にその通りだと思います。本質的すぎるご指摘に、思い当たることがありすぎて、グウの音もでないです。
世界の振れ幅を広げる

−さきほどのお話のなかで、人の価値観を変えるのは難しいというお話がありましたが、なにか変わるためのヒントをいただけるとありがたいのですが。
田中社長:変われないのは見ている世界の振れ幅がせまいからなんだと思います。
だから、いままで自分が育ってきた中で教えられてきた常識や、学校の先生や会社で言われてきた考え方にとらわれているんじゃないかと。
振れ幅を大きくするといろいろと見えてくるものがあります。例えば、ぼくたちはいま11カ国でビジネスを展開していて、一番所得が低いのはカンボジア、一番高いのはオーストラリアです。
おなじオンデーズでおなじ制服を着て、おなじメガネを売っているのですが、カンボジアは年収が20万円なのに対して、オーストラリアはバイトで月収が40万円です。
おなじ商品を同じように売っても、お金って場所がかわるだけで得られる価値が変わってしまうので、お金というのは、あまり実体がないものなんだなということに気がつきます。
このように、自分が見ているものの振り幅が大きい人ほど、ものごとの本質に到達しやすくなって、変化に対応していけるんじゃないかと思います。
−たしかに何気なく暮らしていると同じようなカテゴリーの人ばかりと接して、新しい価値観にふれることが少ないですね。積極的に海外に行くなど見聞を広める必要がありますね。
ルーチンを壊す

−最後の質問になります。人間は新しいことをやるとき、どうしても心理的なハードルを感じてしまうものですが、どうしたらそのハードルを超えていけるような人間になれるでしょうか。
田中社長:よく社員にも言うんですけど、ほとんどの人がやらない、これをやれば人生が変わるという方法があります。
それは、毎日違うことをやることです。
人間というのはルーチンの生活をしています。同じ道で通勤して、同じ電車に乗って、毎日同じコンビニに立ち寄って、同じモノを買っています。
毎日違うものを飲み続けても飲みきれないぐらい、たくさんの種類があるんだから、ぜんぶ変えていけばいいんですよ。食べ物も全部変えてみるんです。
−なるほど!そうすると入ってくる情報量が増えて、意識が変わるということですしょうか?
田中社長:いや、これを実践すると、新しいことをやるときに抵抗がなくなるんですよね。
人間は必ずルーチンをつくってすでに経験したことをトレースしていくのが生存本能的に安全な行動のとり方だから、年取れば年を取るほどルーチンが凝り固まっていくんです。
子供がなんで新しいことやるのに抵抗がないかというと、ルーチンが育っていないから。
大人になってくると毎日新しいことをやらなくなるから、新しいことを急にやろうと思っても心のどっかにブレーキがかかるんです。
だから、自分の中で意識して、昨日と同じ行動をとらないようにするといいと思います。そもそも、いまの日本でリスクなんかないんですよ。
別に殺されるわけでもないし、もし起業して会社が倒産したって、せいぜい破産してカードが7年作れないとかそのレベルだから、それはリスクとは言わないですよね。
過剰に考え過ぎですよ。みんな自意識過剰です。だからやりたいことを気にせずにやったほうが得なんじゃないかなって思いますよ。
−毎日ちがうことをやる!今日から意識して生活してみます。本日はありがとうございました。
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株式会社オンデーズ代表取締役社長 田中修治(たなか しゅうじ)
10代の頃から起業家として、企業再生案件を中心に事業を拡大。2008年に巨額の債務超過に陥り破綻していたメガネの製造販売を手がける小売チェーンの株式会社オンデーズに対して個人で52%の第三者割当増資引き受け、同社の筆頭株主となり、同時に代表取締役社長に就任。2013年には同社初となる海外進出を手がけてオンデーズシンガポール法人(OWNDAYS SINGAPORE PTE LTD.)を設立。翌年、オンデーズ台湾法人(恩戴適股份有限公司)を設立。2018年6月末現在、アイウェアブランド「OWNDAYS」を10か国240店舗展開し、独自の経営手法により、事業拡大と成長を続け実業家として活躍している。【従業員数2000名/売上高160億(2018年6月)】
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