落合陽一が指摘する「学び続けなければいけない理由」とは?

ぼーっと生きてるわけにはいかない

医療や科学の発展により、現実味を増している人生100年時代。そんな中、「大企業」「安定」「多数派」といったキーワードの価値がかげりはじめ、一人一人が自分の頭で考えて人生設計を考えなければ、現在の生活水準を守りきれない未来も見え始めています。ぼーっと生きているわけにはいかない時代は、もうすでにやってきているのです。

筑波大学の学長補佐を務めながら、メディアアーティストとして実業家としても活躍する落合陽一さんが書いた『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書』(『ゼロヒャク教科書』)は、そうした時代に生きる人がどのように学び、育てるべきかをわかりやすく解説した本です。ここではこのうち、すでに大人になった人たちが学び続けなければいけない理由を解説します。

私たちが学び続けなければいけない理由

日本人の多くは小中高、大学と教育機関で体系的な勉強をします。しかし大学を卒業して社会人になった途端、体系的な学びの機会を設ける人は大幅に減ってしまいます。ところが人生100年時代においては、社会人になって以降も学び続けなければいけない理由がいくつもあります。以下ではそのうちの3つについて解説しましょう。

高齢者になっても働き続けるため

人生100年時代においては人生全体の時間が長くなります。これまでの時代であれば20代、30代で身につけた知識や経験は、そのまま定年を迎える60〜65歳まで通用するケースも珍しくありませんでした。

しかし長生きする日本人が増えれば現在の年金システムを維持できなくなりますから、必然的に定年が引き上げられることになります。結果、今よりも10年20年と長く働き続けることになります。そうなれば若い頃に得た知識や経験が役に立たなくなる可能性も高くなるでしょう。

また最近定年を迎えたり、もうすぐ定年を迎えるという人たちの時代に比べ、これからの数十年はこれまでよりもさらに急速に価値観や情報が変化していきます。これにより、若い頃に得た知識や経験の陳腐化は、ますます加速していくと考えられます。

こうした状況の変化に対応するために、高齢者や未来の高齢者である現役世代はどうすればいいのか。落合さんは次のように書いています。

高齢者には人生経験があります。あとは新しい価値観を受け入れる柔軟性とやる気さえあれば、健康を維持するだけで有用な人材として社会に貢献できるのです。
引用:前掲書p77

AIやロボットが発達していく現代においては、「年と取ると体力がなくなる」という物理的な問題は大した問題ではなくなります。大切なのは心身の健康という基礎的な部分と、学び続けられる頭と姿勢を持っていることなのです。

働くことのコストを下げるため

「80歳や85歳まで働き続けなければいけない時代が来る」と言われてうんざりする人も多いかもしれません。そうした気持ちが湧いてくるのは、働くために必要な肉体的・精神的なコストが高いからです。もし今の半分や3分の1の肉体的・精神的なコストで同じだけのお金を稼げるとしたら、年齢を重ねても働くことを苦と思わずに済むはずです。

そのために必要なのが学び続けることです。落合さんは何も、やりたくもない勉強をしろと言っているのではありません。例えば『ゼロヒャク教科書』の一章では「趣味を複数持ち、モチベーションを高く保ち続けること」を推奨しており、その趣味を時に学問的に探求していくことがキャリア形成に効果的だとしています。

人間のモチベーションを喚起するきっかけとなるのは「好きなこと」「やっても苦にならないこと」です。そこで、仕事にできるような、そして自然に続けられる趣味を持っておくことをオススメします。
引用:前掲書p83

「好きなこと」「やっても苦にならないこと」でピンとこない人は、コルク代表の編集者佐渡島庸平さんが引用リツイートしていた以下の漫画が参考になるかもしれません。

人生100年時代は1つだけの会社に所属して、新卒入社から定年までを勤め上げるような時代ではありません。そうなれば、モノを言うのは個人の市場価値です。

それを高齢者になっても続けられる肉体的・精神的コストで社会に提供し続けるためにも、「好きなこと」「やっても苦にならないこと」を学び続けるということが必要なのです。

少数派としての価値を高めるため

明治以降の近代日本の教育は、基本的に大多数の人間が同じような考え方をするために作り上げられたものでした。そのような教育が作る社会では、当然多数派の中で勝ち抜いた人にこそ価値が認められます。

しかしインターネットがさらに発達していくこれからの時代においては、多数派が生み出す価値はあっという間に陳腐化してしまいます。インターネットを使えばあっという間にコピーできるからです。

では何に価値が生まれるのかというと、少数派です。オリジナルであるもの(個人)、専門的であるものにこそ価値が見出されるようになっていくのです。

そうしたオリジナリティや専門性を高めるためには、その分野を探求し、学び続けることが必要になります。

何をすべきかは誰も教えてくれません。そして、誰かに教えてもらわなくても自分の頭で考えられることが、21世紀を生きる人たちには求められているのです。
引用:前掲書p94

厳しい言い方かもしれませんが、この落合さんの言葉を素直に受け止め、行動に移せるかどうかが、これからの時代を生きるためには非常に重要なターニングポイントとなるでしょう。

『ゼロヒャク教科書』からスタートしよう

時代の大きな変化により、私たちには人生を通して学び続ける必要があります。しかし何かを学ぶにしても、何からどう学べばいいかがわからないという人も多いでしょう。

落合さんは『ゼロヒャク教科書』の中で、世界的に普及し始めている「MOOC」などのオンライン教育の有効性などに触れながら、今後重要になっていく「STEAM」教育の必要性や具体的な学習方法についても解説してくれています。本書はまさに「教科書」らしい、至れり尽くせりの一冊となっています。

もし落合さんの考えに従って、これからの時代のために学び始めたいと考えるのであれば、『ゼロヒャク教科書』をスタート地点にしてみてはいかがでしょうか。

参考文献
『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書』

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親世代が持っている常識は、いまの子供たちの世代では通用しないので常に知識をアップデートしていく必要がありますね。
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部