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「小利口な人間」は何者にもなれない
私たちはついついリスクを考え、自分の行動を制限してしまいます。頭の中に自分の人生を豊かにする素晴らしいアイディアであっても、「本当に実現できるだろうか」「こんなバカげたアイディアは妄想だけにしておくべきだ」と二の足を踏んでしまうのです。
しかし堀江貴文氏はこのような思考を巡らす人間を「小利口」と表現し、「考えすぎてしまう人間は、いつもチャンスを逃す」と忠告しています。ではどうあるべきなのでしょうか。それはすなわち「バカ」であるべきなのです。
みんな大好き「先延ばし人生設計術」
堀江氏の言う「小利口な人間」とは、すなわち大半の人間のことです。そして多くの人々は自分の将来を計画的に進めるために「人生設計」を行います。ここで使われるのが「先延ばし人生設計術」。
これはテレビ番組録画サービス「ティーボ」の創業者の1人であるランディ・コミサーが提案したもので、人生全体を2つのステップで考えるというフレームワークです。
ステップ1は「自分がしなくてはならないことをする」、ステップ2は「自分がしたいことをする」。ステップ1を終えることで、ステップ2を堪能できるというわけです。例えば「老後はお金の心配をせずにゆっくり過ごしたいから、そのために我慢して今の仕事を定年まで続けよう」というのも、先延ばし人生設計術の1つ。
多くの人がこのような考えに基づいて、「転職」「起業」といった人生をダイナミックに変えることを諦めています。なぜなら「転職」「起業」などの「やりたいこと」は、先延ばし人生設計術においてはステップ2でやることだからです。
しかし老後になってから転職や起業をしても仕方がありません。「世界一周旅行」なども体力・気力あってこそ。体力も気力も衰えた老後では、得られるものは「景色が綺麗だなあ」という感想くらいのものです。
「有害なバカ」と「スマートなバカ」

自分のやりたいことやアイディアを最大限に生かし、チャンスをつかむ人生にするためには「バカ」になる必要があります。しかし知識も常識もなく、根拠のないアイディアを盲信するような「バカ」をリッチー・ノートン(※)は「有害なバカ」と呼びます。これは「自分は老後にお金の心配がなくなるだけのお金持ちになれる」と信じて愚直に小利口であり続ける人間にも当てはまるでしょう。
しかし小利口な自分を捨てる決心をした私たちが目指すべきは有害なバカではありません。私たちは一見バカバカしくとも実際は素晴らしいアイディアを情熱的に追及する「スマートなバカ」を目指すべきなのです。ノートンはこの「スマートなバカ」の特徴として次のようなものを挙げています。
・批判の声に惑わされない。
・とてもクリエイティブ。
・直感に頼らない。
・自分の安全地帯の外にある。 など
世の中の大多数を占める小利口な人間からすれば「バカなこと」でも、真実を見極められる「スマートなバカ」からすれば世界を変える革新的なアイディアであることは少なくありません。以下ではAmazonの創業者ジェフ・ベゾスやアップルの創業者故スティーブ・ジョブズなどを例に挙げて、「スマートなバカ」のロールモデルを見ておきましょう。
※ハワイ在住40歳以下の「最優秀ビジネスマン40人」の1人であり、国内外で活躍するビジネス開発コンサルタント。
Amazon創業者ジェフ・ベゾスも「バカ」だった!
ベゾスは1986年に大学を卒業後、ウォールストリートの金融機関のIT部門でトレーディング・システムの構築に従事し、1990年にはヘッジファンドの要職に就くなどビジネスパーソンとしての「成功」を手にしていました。
しかし彼は同時に、利用者の増加するインターネットを利用したeコマース事業への野心を抱いていたのです。しかしこの話を自分の上司に話したところ、「確かに面白いが、君みたいないい仕事に就いている人間のやることじゃないだろう」と言われたのだとか。
今の私たちからすればベゾスの立ち上げたAmazonは素晴らしいアイディアです。ところが彼がこの時話した上司や、他の数多くの人にとってみれば、当時のベゾスが職を辞してまでやる価値のあるものには思えなかった。そんな「小利口な意見」を無視し、自分のアイディアを信じた「スマートなバカ」だったからこそ、今のベゾスがあるのです。
アップル創業者スティーブ・ジョブズも「バカ」だった!
(貪欲であれ。バカであれ。)
2005年にスタンフォード大学卒業式のスピーチで、卒業生にこのメッセージを送ったのはアップル創業者スティーブ・ジョブズです。ジョブズは「他人の意見というノイズによって、あなた自身の内なる声、心、直感をかき消されないようにしなさい」とも言いました。
これはまさに「スマートなバカ」の作法です。ジョブズは1975年、友人のスティーブ・ウォズニアックが開発した「個人用のコンピューター」に目をつけ、アップルを創業しています。
しかしアップル設立前に販売した「Apple Computer I」は、ウォズニアックが勤め先のヒューレット・パッカードに商品化を持ちかけたにもかかわらず、一笑に付された製品だったのです。
ウォズニアックの上司は「個人用のコンピューター?そんなもの誰が欲しがるんだ。バカバカしい」とでも言ったのかもしれません。これこそが世界を変える発明だと信じたジョブズが「スマートなバカ」であり続けたからこそ、アップルは世界のトップ企業にまで上り詰めたのです。
80歳になった自分を想像してみよう

ベゾスはウォールストリートを離れる前、こんな風に自問自答したのだそうです。
「80歳になったとき、ウォールストリートを離れることに未練を感じるだろうか?」
「このインターネット黎明期に自分が何かできるというチャンスを逃したたら、後で悔やむだろうか?」
ノートンはこのベゾスの自問自答を簡単なフレームワークに再構築しています。まず時間を決めて「前からやりたいと思いながら、いつか時間ができたらやろうと思っていること」を書き出せるだけ書き出します。
次に80歳になった自分を想像しながら、その中から自分がその時後悔するであろう項目を抜き出します。さらにそのうち最も後悔すると思う項目を第1位から第4位まで抜き出すのです。
たとえそのアイディアがどれだけバカげていたとしても、それらこそが自分が人生において重要だと思うアイディアなのです。そこから先は自分次第。さてあなたは「有害なバカ」か「スマートなバカ」、どちらでしょうか。
自分の人生を無駄にするな!

(あなたたちの時間は限られている。だから誰かの人生を生きて無駄にしてはいけない)
ジョブズはスタンフォード大学卒業式のスピーチでこうも言っています。「バカバカしい!」という他人の評価に耳を傾けて自分自身の素晴らしいアイディアを諦めることは、まさに「誰かの人生を生きて無駄にする」ことです。自分の人生を堪能するためにも小利口な考え方を捨てて、「スマートなバカ」になりましょう。
参考文献『本音で生きる』著:堀江貴文『「バカ?」と言われて大正解』著:リッチー・ノートンほか
