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「2枚目の名刺」という考え方
会社と自宅を往復して、淡々と過ごす日々。それが「大人だ」なんて言いながら、どこかでそんな毎日に疲れていませんか?確かに仕事は大切ですが、私たちの人生はそれだけで終わっていいようなものでもありません。
会社以外でも自分の「らしさ」を発揮できる場所を作り、自分の人生を自分で切り拓いていくほうがきっと毎日に張りがでるはず。ここではそんな日々の生活に少しでも疑問のある人のために「2枚目の名刺」という考え方を紹介します。
「2枚目の名刺」は「もう一人の自分」

2枚目の名刺とは簡単に言えば会社で用意されている名刺以外に、もう1枚名刺を持つことです。こうすることで自分を日常とは違う組織や場所に置き、新しい価値観や世界に触れるのです。
私たちが普段会社でしている仕事は、ひょっとすると自分にとっては「できて当たり前」のことかもしれません。でもそうやって磨いたスキルは一歩会社のお外に出て会社以外のために使うと、驚くほど社会の役に立つことがあるのです。
身近な例をあげれば、住んでいるアパートが老朽化であちこち雨漏りしているとします。普段建材メーカーに勤めているあなたが、「安くで手っ取り早く穴を塞げるこんな素材がありますよ。扱っている業者も知っています」と言えば、アパートの問題は一挙に解決できるでしょう。大げさに考えなくても小さい規模ならこの程度のことなのです。
「2枚目の名刺」はすでに日本にも広がっている

画像出典:Wikipedia
2枚目の名刺の考え方は、すでに経営学の創始者ピーター・ドラッカーによって示されていました。彼はこの考え方を「パラレルキャリア」と呼んでいます。目的を「利益」や「報酬」に限らず、自己実現のために会社とは別のキャリアを持つわけです。
日本ではその名もずばり「二枚目の名刺」という名前のNPO団体が存在します。2枚目の名刺が個人にもたらす自己成長と、社会への還元を目指す団体です。
また鎌倉には「カマコンバレー」というプロジェクトチームがあります。このチームでにはIT関連企業が多く参加し、別々の企業人たちが結託して鎌倉を盛り上げていくという目的で活動をしています。以下ではこの2つの団体について少し具体的に見ていきましょう。
社会をデザインしよう!NPO「二枚目の名刺」

画像出典:http://nimaime.com
「二枚目の名刺」は廣優樹氏ら英国オックスフォード大学留学時代の同級生ら3人で2009年に立ち上げられた団体です。
その主要な活動が「SPOサポートプロジェクト」。SPOとはNPOやNGOといった社会の課題解決を第一に運営される団体を指します。このプロジェクトではSPOが抱えがちなビジネス上の問題解決を、「二枚目の名刺」が集めた各分野のプロフェッショナルたちの力を借りてサポートしていきます。
集まるメンバーはコンサルタントや会計士、大手銀行員やメーカー社員、官公庁職員まで実に多様です。しかもサポートされるSPOのみならず、サポートする参加者たちも「会社にいて見過ごしていた社会の変化に気づけた」とコメントしており、相乗的な成長の場となっていることがわかります。異なる分野の人たちが会社とは違うフィールドで出会い、次のステップに進むためのきっかけをつかむ場所、それがNPO「二枚目の名刺」なのです。
街が大好きだから。 鎌倉「カマコンバレー」

画像出典:http://kamacon.com
カマコンバレーでは「ぜんぶジブンゴト化」という言葉を大切にしているそうです。鎌倉のことをジブンゴトとしてみることで、覚悟と熱意、責任を持って各プロジェクトに関わろうよ、そうして鎌倉をよくしていこうよ、というわけです。
いくつか主要なプロジェクトはありますが、そのうちのクラウドファンディングサービス「iikuni(イイクニ)」では「鎌倉をよくしよう」という人とそれを応援する人をつなげるというビジネスを展開しています。『「鎌倉のど自慢大会」-うたでつながる鎌倉-プロジェクト』などのプロジェクトが次々とこのサービスからスタートしています。
カマコンバレーの参加企業は現在はIT企業が中心ですが、レンタサイクルを営む企業なども参加しており、「企業」「ビジネス」といった垣根を超え、「カマコンバレーの一員」という2枚目の名刺で活動をしています。「自分たちの大好きな鎌倉をよくする」をジブンゴトにして、行動しているのです。
利益や数字を超えた「自分の人生」を切り拓け
「2枚目の名刺」は「副業」や「週末起業」とは少し意味が違います。パラレルキャリアのところでも書いたように目的が報酬や利益といった数字で測れるものだけではないからです。そこには「社会貢献」や「自己実現」という目的も含まれています。
一橋大学イノベーション研究センター教授で、今般『2枚目の名刺 未来を変える働き方』を出版した米倉誠一郎氏は、自身が塾長を務める「日本元気塾」のモットーを「自分の人生は自分でつくるべきだ」としています。同氏はこのための一歩目として2枚目の名刺を持とうと言います。
米倉氏の著書でも紹介されている日本元気塾元塾生であり、現白星製靴代表・星野俊二氏も自分の人生を自分で作り直そうとした一人。親の勧めに応じて大手監査法人に勤めていたにも関わらず、「何か違う」と感じて脱サラし、今はミャンマーを拠点によりよい靴作りのために汗しています。
これは自分で選んだ企業で働いている人とて同じです。「最初は志を持っていたけれど、結局求められるのは利益や数字。会社の意向には逆らえない」と思いながら働いているのであれば、それは会社によって作られた人生であり、自前の人生ではありません。カマコンバレーの言葉を借りて言えば、自分の人生なのに「ジブンゴト化」できていないのです。
まずは「2枚目の名刺」を作るところから
「そんなこと急に言われてもどうしたらいいんだ」と思うでしょう。まずは米倉氏の言うように2枚目の名刺をつくるところから始めませんか。2枚目の名刺は単なる紙切れではありません。
もちろん肩書きで自分を縛って背負いたくもないプレッシャーを背負うものでもない。それはすなわち「自分の可能性」なのです。会社での自分とは違う自分、自分が磨いてきたスキルを活かして楽しそうにしている自分を投影するスクリーン、それが2枚目の名刺です。
自分の可能性を諦めないで、ジブンゴトの人生を「2枚目の名刺」からはじめましょう。
さあ2枚目の名刺をつくろう
もちろん今の生き方がたまらなく楽しいのであればそのままでも十分です。でももし日々の生活に閉塞感を感じているのなら、ブレークスルーの手段の一つとして2枚目の名刺は有力な選択となります。
ここで紹介したNPO「二枚目の名刺」に参加して見るもよし、カマコンバレーのiikuniを使って何かプロジェクトを立ち上げるもよし、あるいは2枚目の名刺を作って眺めるところから始めてもいいのです。停滞した自分の人生を2枚目の名刺で加速させましょう。
[文・編集] サムライト編集部