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マーケティングを活用しよう
商品の弱みは情報の伝え方次第で強みに転化する。ここにマーケティングの面白みがあります。
このマーケティングの妙を知ることはビジネス活動のみならずキャリア形成からプライベートまで人間が関わるすべての場面において有用だと確信しています。
そこで本記事ではマーケティングの古典ともいえる「売れるもマーケ、当たるもマーケ」を参考に弱みを強みに転化して成功した事例を紹介していきます。
ケチャップが出にくいことを逆手に取り、濃厚さをアピール
まずはケチャップメーカーHeinz(ハインツ)の事例。
ハインツは「ドロリとしたケチャップ」というコンセプトで米国のケチャップ市場を席巻しました。
1960年代、ハインツのケチャップに対してソースが出にくいと消費者からクレームが出ていた。ハインツのケチャップソースはかつては瓶に詰められており、現在のように押し出すことはできず不便だったのです。
ハインツはそのクレームすら利用してしまう奇策に出る。なんと瓶から出にくいほどドロリと濃厚なケチャップのハインツであることを示すTV広告を打ちました。
<当時のTVコマーシャル>
他社のケチャップとハインツのケチャップを逆さにしてみる。他社のケチャップソースは水のように流れ出てくる。一方、ハインツのケチャップは少しずつ流れ出てきます。
このTV広告によって、ハインツの売上はグッと増加したという。ハインツはケチャップが出にくいという不便さを隠さなかったです。しかし、不便自体がハインツの濃厚で「ドロリとしたケチャップ」であることの説得力を支持することになりました。
商品の弱みが伝え方次第で強みに転化することを示す事例です。
いいとこ取りするな!顧客に商品を印象付けるには犠牲を払え

ハインツの事例は「売れるもマーケ、当たるもマーケ」における2つの法則が発動しています。
1つ目が「集中の法則」だ。1つのコンセプトに焦点を絞り、顧客の頭にそのコンセプトを焼き付けるというものです。
2つ目が「犠牲の法則」です。コンセプトを顧客に印象付けるためには別の要素を犠牲にしなければならないというものです。
ハインツはどろりとしたケチャップというコンセプトに焦点を絞っており、そのコンセプトは「ケチャップが出にくく不便である」と認知される、ある意味で犠牲を払うことでより強化されました。
考えてほしいのだが、ケチャップが出やすくかつ濃厚であると言っても説得力を担保できないのは明らかでしょう。(※瓶詰ケチャップの場合)
「売れるもマーケ、当たるもマーケ」では集中の法則、犠牲の法則以外にも様々な法則が取り上げられています。中でも面白いのが「正直の法則」です。
ネガティブを告白して顧客の心を開く「正直の法則」

「正直の法則」は自社商品・サービスのネガティブな面を告白することで顧客を納得させる法則です。
自分の自慢ばかりする人よりも問題を抱えている人を助けてやりたくなるのが人間の本質です。
顧客はポジティブな言葉で売り込んでくる企業よりもネガティブなことを開示する企業に対して心を開きやすいのです。
正直の法則はその人間の本質を突いたものです。正直の法則を活用した事例としては洗口液のリステリンが面白いです。
リステリンの独壇場ともいえた洗口液のジャンルに競合他社が「いい味のする洗口液」という切り口で乗り込んできました。リステリンは不味い味で知られていたのでその弱みを叩き、差別化する作戦でした。
ただリステリンの対応は見事でした。不味い味を変更したり誤魔化すことはなかった。むしろ「1日に2回嫌なお味を」とのキャッチコピーでリステリンを売り出すことにしたのです。その上でリステリンが「多くの細菌を殺す」ことも忘れずに訴求しました。
<当時のTVコマーシャル>
不味い味はリステリンの弱みと言えるが、消毒液のような不味い味だからこそ、リステリンの殺菌効果が高いと認知されることにつながりました。競合他社の「いい味のする洗口液」を跳ねのけ、洗口液の本物はリステリンであると顧客の頭に焼き付けたのです。
ネガティブを開示する伝え方で弱みを強みにした最高のお手本のような例です。
人間の本質を突いたマーケティングはキャリアに活きる

「集中の法則」、「犠牲の法則」、「正直の法則」は人間の本質を突いているとも言えます。そうであるがゆえにキャリア構築からプライベートまで人間と関わるどんな場面でも有用。
たとえば、ライティングスキルを売り出す際に「集中の法則」、「犠牲の法則」、「正直の法則」を発動させてみましょう。どちらがより魅力的なのか比較して欲しいです。
①まとめ記事執筆からWebサイトのコピーライティングまで何でもやります。
②まとめ記事執筆は不得意ですが、Webサイトのコピーライティングを得意としています。
極端な書き方をしたものの、もしWebサイトのコピーライティングを発注する顧客がいたとすると、その顧客はどちらのライターを信頼するでしょうか。
明らかに②でしょう。そうであるからこそ、②のように「なんでもやる」スタイルではなく、強みを伸ばすことに注力するキャリア形成の方略が良いと言えます。
仕事の現場においても「何でもできる」よりも、「これはできない、けどこれはできます」の方が人々の信頼を獲得できるでしょう。
何によって憶えられたいか
かの経営学者ドラッカーはこんな言葉を残しています。
「私が十三歳のとき、宗教の先生が、何によって憶えられたいかねと聞いた。誰も答えられなかった。すると、今答えられると思って聞いたわけではない。でも五〇になっても答えられなければ、人生を無駄に過ごしたことになるよといった」P.F.ドラッカー『非営利組織の経営』ダイヤモンド社
他の人からどのような人物だと認知されたいのか。
キャリア形成において私たちが常に問い続けるべきことです。前述のように何でも屋は人々の印象に残りません。
「できること」「できないこと」を明確にさせている人の方が印象に残りやすいということは知っておいて損はないはずです。
