抜擢人事が組織を救う!抜擢すべき人材と育成のポイント【カオナビイベントレポ】

組織をより発展させるためには、抜擢が必要不可欠

マネジメントの大きな課題である、人事。人をどう活かすかで、会社の命運が変わってくるといっても過言ではありません。

そして時に組織にとって必要なのが、抜擢人事です。まだ十分な経験を持たない若い社員に大きな力を持たせてプロジェクトを任せることで、新たな風が吹くことがあります。

しかし抜擢する側としては、どのようにして人材を抜擢すればいいのか、抜擢した人材をどのように活躍させればいいのか、頭を抱えた経験があるのではないでしょうか。

そこで今回は、クラウド人材管理ツール『カオナビ』を提供する株式会社カオナビ主催のイベント『Management Camp2016~抜擢人事が組織を変える』へ参加してまいりました。

どのような工夫がされ、どのように育成しているのかを、第一線で活躍されている3名の登壇者の知恵をレポートします。

◎登壇者
・株式会社サイバーエージェント取締役 曽山哲人さん

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有期雇用を含めると、社員数が15年で20名から7000名まで拡大。若手が多数在籍するサイバーエージェントで取締役を務めるのが曽山さんです。人事担当役員として多くの社員を見てきた経験から、どのような抜擢人事が有効かを語っていただきました。

◎登壇者
・株式会社TEAMBOX 代表取締役/(公財)日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター 中竹竜二さん

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TEAM BOXの代表取締役を務めるだけでなく、日本ラグビーフットボール協会のコーチングディレクターを務める中竹さん。ビジネスという観点だけでなく、スポーツ界で行われている取り組みについて語っていただきました。

◎登壇者
・日清食品ホールディングス株式会社 人事部 人材開発室 課長 橋本晃さん(写真向かって右)

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大手食品メーカー、日清食品ホールディングスの人事部に所属するのが橋本さん。海外展開強化中ということもあり、グローバル人材と絡めながら抜擢人事を語っていただきました。

◎モデレーター
元リンクアンドモチベーション取締役/現株式会社JAM代表取締役社長 水谷健彦さん

採用や人材育成を手掛けるリンクアンドモチベーションにて取締役を務めたのち、日本人の「労働観」の変革をミッションとした株式会社JAMの代表取締役として独立した水谷さん。
3人の登壇者と水谷さんによるパネルディスカッション行われます。

スキルよりも「人格・人望」。抜擢すべき人材像って?

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水谷健彦さん(以下、水谷):人材を抜擢する際、何に目を付け、どのように評価することで抜擢したのか。まずこのあたりのお話から聞きたいのですが、みなさんが部下の方を抜擢をするときは、どのようなところを重視していますか?

曽山哲人さん(以下、曽山):私たちは管理職を登用する際に決議をとるんですけれども、その時に登用基準に入れているのが1つだけあります。それは「人間性」です。

人間性に魅力がない人には人望がない、人望がない人は管理職にしないほうがいいということです。

スキルがなくても人望があるとみんなフォローします。ですが、仮に仕事ができても、人望がないと本当にみんなついてこないんです。なので、人望がある人、もしくは磨こうとしている人を積極的に抜擢しています。

水谷:なるほど。仕事のパフォーマンス(On the Job)ではなく、広い視界で見た中で、つまり仕事以外での人間性(Off the Job)で評価していくということですね。
日清食品さんではどうでしょうか?

橋本晃さん(以下、橋本):弊社では基本的にハンズアップで抜擢をしています。つまり、やりたければやれる環境にあるということです。現在グローバル人材の育成に力を入れているのですが、今では入社2年目から手を挙げることができる体制となっています。若手でもどんどんやりたいことをやれるようになっていますね。

さらに、管理職は年に1回CEOと面談をしており、そこでOff the Job、つまり仕事の評価だけでなく人間性の部分を見ていますね。

水谷:その面談の中でCEOが管理職のOff the Jobを見ると。橋本さんから見て、CEOが抜擢するとしたら、こういうところ見ていそうだなというのはありますか?

橋本:そうですね、こんな一例があります。あまり言語が堪能ではなかった社員が海外の現地法人行きました。言語の壁もあったのか、正直そんなに大きな成果は上げられなかったのですが、彼は今、日本に戻ってきて事業部の部長をやっていて、第一線で活躍しています。

CEOはよく、「迷ったらゴー、失敗したらすぐ戻れ」と言っていますが、つまりその人が「どれだけチャレンジしたか」というところをよく見て評価しているのではないかと思います。苦難を乗り越えてきた人は、やはり人間性も豊かですからね。

水谷:中竹さんはラグビーの選手を見る中で、Off the Jobを重視していますか?

中竹:これは、見方の問題ですね。Off the Jobがよくない人間のことを、ダメと捉えるか、ポテンシャルがあると捉えるか、だと思います。私の育てた選手の中でこんな選手がいました。

その選手は体格に恵まれ突破力もあったのですが、ワンマンプレーが目立っており仲間から少し浮いていました。そのせいで仲間にパスも出せず、結果的にボールをとられることが多かったのです。

しかし、コートの外での行い、つまり、挨拶や片付け、コミュニケーションに注力することによりチームでの信頼を勝ち取り、ツアーの最後にはパスが出せるようになりました。

つまり、ボールを持っているときのパフォーマンスよりも、ボールを持っていない時の行動を変えることにより、より活躍できるようになりました。Off the Jobが悪くても、それを改善していけば人望を集める余地はあると思います。

水谷:Off the Jobが弱くても、とりあえず発掘して育成しようということですね。で、かかわるうちにそれが伸びていく、つまり中竹さんの意見では、「人望」は磨いていけばよいということですね。

抜擢人材を育成するために必要なのは、「活躍する場」を提供すること

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水谷:今、発掘から育成へと話が移っていますので、このまま育成について伺いたいと思います。日清食品さんの人材育成制度でいうと、「経験からの学び」が重要というように考えているかと思うのですが、ここにどんな工夫、取り組みをしているのでしょうか?

橋本:例えば、弊社ではブランドマネージャーというポジションを公募する制度があります。この役職は重役なのですが、30半ばくらいから手を挙げることができます。

つまり、ジョブアサインメントの機会を増やす取り組みは積極的に行っていますね。

水谷:新しくブランドマネージャーになる人がいるということは、外れる方がいるということだと思うんですけれども、そういった方は、どういったポジションについているんですか。

橋本:もちろん左遷になるわけではありません。社内の別の重要なポジションにつくといったことになります。

具体的には、国内のセールスの重役をになうこともありますし、海外事業を強化しているので、海外の拠点のマーケティングやディレクターを担当してもらうケースがあります。

一旦ブランドマネージャーから離れた人でも、しばらく経ってから再びブランドマネージャーに戻る人もいます。

ブランドマネージャーに限らず、重役を外れる人間をいかに活躍させるかということをしっかり考えなければなりませんので、それも人事の仕事の一つです。

水谷:中竹さんはいかがですか?

中竹:ラグビーでは「こいつ、このチームではここだけど、代表に選ばれたら絶対にここのポジションがいいよね」みたいなことがあります。つまり、ポジション変更させるということです。

とはいえこれも難しいんですよ。なぜなら、選手たちから見ても自分が代表に選ばれたいから、自分が慣れ親しんだポジションでエントリーしたいと思うわけですよ。

水谷:それは誰でも、自分が1番自信のあるポジションで勝負したいですよね。そんなときってどうするんですか?

中竹:そういうときは彼らに「君はこっちのポジションのほうがいいと思っているかもしれないけど、俺は君がどのポジションが1番輝けるかっていうのを何時間もかけて考えて、提案しているんだ」と、伝えます。

でも、それだけだと彼らは私にポジションを押し付けられたと思うかもしれない。そこでさらに「俺はこう思って提案するけど、あとは自分で決めてね」とも伝えます。

つまり、最後の意思決定は選手にさせるのです。選手の可能性を広げてあげることも重要ですし、ポジションの移動もある意味で抜擢人事ですよね。

曽山:期待をかけてあげるってすごい大事なことですよね。中竹さんの話はスポーツですけど、ビジネスにも共通して大事なことだと思います。
別のの部署に異動したほうが活躍できるというケースは実際あるんですよ。本人は本意じゃないかもしれないけれど、こっちの部署のほうがいいということを、考え抜いてしっかり伝えてあげるっていうのは重要ですね。

水谷:可能性を広げるポジションや経験を用意するということですよね。

橋本:弊社ではハンズアップで任せると先ほど言いましたが、新卒2年目の若手が海外へ行って働きたいと名乗り出ました。

若いうちから海外の拠点を任せて大丈夫かな、という不安を感じることがあったんですけど、実際に送り込んでみると顔つきが変わって、「3年ほどでこんな仕事をさせてもらえるなんてこんな幸せなことはない」ということを言われることもあります。

やはり、若いうちからいろんなことを経験させて、のばしていくというのは大切だと思います。

人事的な視点で言えば、彼らが日本に帰ってきたときに、どれだけモチベーションを維持できるポジションを用意できるかというのが、腕の見せ所ですね。

抜擢人材は経験不足。フィードバックするうえで大切なことは?

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水谷:人材を抜擢したはいいものの、いきなり上のポジションに引き上げられたため経験が浅いことが多いと思います。そんな彼らへのフィードバックのクオリティを高く行うことによって、抜擢人材の育成ができるのではないかと思います。

スライドにあるように、日清食品さんでは人材育成制度にフィードバックを組み込んでいます。そこで、抜擢した人材に対してのフィードバックをどのようにすべきか、というのを最後のテーマにしたいと思います。曽山さんいかがですか?

曽山:一番いいフィードバックは、良いことも悪いことも率直に言うことです。これをやっていない人が多いんですよね。

弊社では、マンツーマンでフィードバックの時間をとるというのは月イチで推奨しているのですが、ポイントとして、率直に、的を絞って伝えるということを訴えています。

当たり前ですけど、経験がない人を抜擢しているので、最初から何でもかんでもできるわけない。違うときは違うと言ってあげないと間違えた方向に行ってしまうので、責任をもってしっかりとフィードバックします。

水谷:橋本さんはいかがですか。

橋本:私は人事として各部署の管理職にフィードバックの仕方を指示しているのですが、その際、人格の問題を切り分けてフィードバックをするようにお願いしています。時には厳しく言わなければならないんですけど、それができない理由はやっぱり嫌われたくないという感情があるからだと思うんです。

「部下の人格を否定するということにはなりませんので、問題を的確に指摘してください。そこはきっちり分けてください」というようにお願いしています。

水谷:人格とは別問題ということですね。では最後に中竹さんにこの話題でクロージングしてもらいたいと思います。

中竹:私がフィードバックをする際に意識していることが2つあります。一つ目は、相手を知ることです。どんなプレーが好きで、どんな仕事が好きで、どんなことにやりがいがあるのか。これをちゃんと聞きます。すると、フィードバックの際に意思疎通が円滑になるのです。

もう一つは気軽さです。あらかじめ予定を組んで行うフォーマルな面談もしますが、通りかかった選手にランダムに声をかけるなど、インフォーマルな面談もします。

逆に何か話があれば、いつでも話しかけることができる状態を作ることも重要です。そうすることによって、自然と距離が縮まり、本音を聞き出すことができます。形式にこだわることも大切ですが、ざっくばらんなフィードバックも時には必要なのです。

[文・編集] サムライト編集部

Career Supli
何を重視して抜擢し、そしてその人材をどのように育成するかという意見を伺うことができました。人材を最大限引き立たせるのは人事の腕の見せ所。人材を抜擢する際に役立ててみてください。