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会議で負け続ける原因とは?
抜群のアイディアのはずなのに毎回会議で自分の意見が通らない……その原因は何か考えたことはありますか?ひょっとするとそれは「会議での発言の仕方」にあるかもしれません。
実は会議では様々な心理的作用が働いていて、発言の内容(What)ではなく発言の仕方(How)で結果が左右されていることが多いのです。ここではそんな会議の側面に迫りながら、自分の意見を通すための心理学的な理論を紹介します。
「勝つためならなんでもする勇気」はあるか?
そもそも日本人には「会議とは戦場である」と意識が希薄な人がほとんどです。「空気を読む」「年上を立てる」などの日本独特の文化がマイナスに働いて、自分の意見を言うどころか押し込めてしまうケースが多く見られます。
対して欧米人の多くは日本の上下関係を「硬すぎる」「厳しすぎる」と考えており、「年配の人や目上の人と自由に議論できない」と感じているのだとか。
議論とは最善の結論を出すためのもので、上下関係などは別問題なのです。ましてや「自分のやりたい仕事がしたい」「活躍して出世がしたい」と考えている人が、こういった日本的な会議のあり方を守っていてはなかなか思いは遂げられません。
まずは「会議で勝つためならなんだってしてやる」という勇気を持ちましょう。これがなければ今から紹介する心理学的な理論は、到底使いこなせません。
「同調圧力」を画策しろ

心理学者のアッシュが行った実験によると、被験者は自分以外の複数人(2人以上)のサクラが違う意見を言った場合、自分の意見に持っていたはずの確信が揺らいで間違った意思決定をしてしまうことがわかっています。「人がやっているとついつい自分もつられる」という経験は誰にでもあることですが、これは心理学的に証明された行動なのです。
アッシュの実験は線分の長さを判別する簡単なものでしたが、サクラが2人以上になると誤答率は15%程度、3人以上になると30%にもなっています。より自分の意思決定に複雑さと曖昧さが生じる会議では、より同調圧力は強くなるでしょう。これを利用しない手はありません。
勝ちたい会議では参加者の中にあらかじめ自分の同調者を仕込んでおくか、参加者に同調を打診しておくのです。こうすることで自分とは反対の意見で同調圧力が生じるのを防ぐこともできます。つまらない意見で自分の意見が却下されないためにはこうした根回しが効果的なのです。
「モスコビッチの方略」をめぐらせろ

明らかに自分の意見が少数派で、そのままでは勝ち目がないという状況もあり得ます。そこで覚えておくべきが「モスコビッチの方略」です。
これは少数派がどんなに反対されても自分の意見を一貫性を持って主張し続けると、集団の意見が少数派の意見に傾いていくというもの。こちらの意見に傾く人間が増えるほど同調圧力が高まっていくので、状況をひっくり返すことができます。
もし会議前に自分の意見が少数派だということが分かった場合には、多数派が自分の意見に傾くまで持ちこたえられるように主張を固めておきましょう。理想論や抽象論にならないようにデータや資料はしっかりと用意します。
あとはとにかく自分の意見の正しさと「モスコビッチの方略」の効力を信じて粘るだけです。
「共有情報の力」を利用しろ

スタッサーたちが行った「隠れたプロフィール」という実験は、共有された情報が会議においていかに力を持つかを証明しています。
AとBとCがプロジェクトのリーダーに立候補したとしましょう。このうちAには「リーダーシップがある」などのプラス情報が8つ、Bには4つ、Cには2つあるとします。
対して「時間にルーズ」などのマイナス情報がAには2つ、Bには3つ、Cには5つあるとします。リーダーを会議で決定する際に、これらの情報が全て共有されている場合はAが選ばれます。
しかし会議の参加者間でAのプラス情報が2つ、Bは4つ、Cは1つしか共有されていない場合、リーダーに選ばれるのはBとなる傾向が強いのです。実験の参加者は、会議の間中候補者たちについて共有された情報ばかりを繰り返し話し合うこともわかっています。
つまり自分の意見を通すのに有利な情報を共有情報としてできるだけ多く流しておけば、会議の中で取り上げられやすくなり、結果会議で勝つ可能性も高くなるのです。
「デフォルトバイアス」を逆手に取れ

会議におけるデフォルトバイアスとは、議長が暗に賛成・反対を求めることを言います。
議長が地位や社歴、肩書きなど会議の参加者に対して影響力を持っているほど、デフォルトバイアスの効力は強くなります。「ご異論ありませんか」はデフォルトバイアスの典型例で、議長が暗に「全員賛成でいいな?」と圧力をかけているのと同じなのです。
実験でもデフォルトバイアスの影響は証明されていて、場合によっては会議の参加者が反対多数でも、議長次第で賛成多数にすることすら可能とされています。
私たちが自分の意見を通したい時にするべきはデフォルトバイアスの有無を把握し、存在する場合はこれを逆手に取って利用することです。
議長に自分の意見に同意してもらうのはもちろん、あえて影響力のない議長を選んでデフォルトバイアスを無効化するのも選択肢でしょう。会議において議長の影響力が非常に大きいことを、私たちは知っておくべきです。
「選好序列の循環」を嗅ぎ取れ
X・Y・Zの3つの案があった時に会議の参加者3人が「X>Y>Z」「Y>Z>X」「Z>X>Y」の順に各案に優先度をつけているとします。この時XとYとZにはそれぞれ第1候補・第2候補・第3候補として1票ずつ入っています。このような状況が「選好序列の循環」です。典型的な例はじゃんけんのグーとチョキとパーの関係です。
会議で3つの案の選好序列の循環を嗅ぎ取ったら、行うべきことは持論の主張ではありません。
自分が仮にXの意見を持っていたとするなら、「YとZの意見はどちらもコスト面で優れていますね。まずは両者で多数決をとりましょう」とイニシアチブをとって投票させるのです。
するとYを主張するグループと自分のグループがYに投票するので、Yが選ばれます。この後でXとYで決選投票をすれば、自分のグループとZを主張していたグループがXを選ぶので会議に勝つことができるのです。
「選好序列の循環」さえ把握できれば、意見の巧拙は無関係。会議を操作すれば確実に自分の意見を通すことができます。
人生を制するために会議を制す!
会議は議題が重要であるほど、「自分のやりたいことができるかどうか」「出世につながる仕事を任せてもらえるかどうか」が関わってきます。これらは最終的には「人生で成功できるか」に繋がることです。
ここで挙げたテクニックは一見すると卑怯に見えるかもしれません。しかし自分の人生がかかっている会議でそんなことを言っていては、いつまで経っても成功できないでしょう。
「会議で勝つためならなんだってしてやる」という覚悟と共に、「自分の意見が絶対に正しい」と信じられる人だけが、これらのテクニックを駆使して成功を手にすることができるのです。
参考文献『会議を制する心理学』
