不透明な時代に転職先・働き方をどう選ぶ? 企業の変化から探る令和のキャリア戦略

長引くコロナ禍により、先行き不透明になった日本経済。帝国データバンクの「新型コロナウイルス関連倒産」によれば、全国で1330件の法人、および個人事業主が倒産しているといいます(2021年4月現在)。

そんな厳しい経済状況や3密回避を前提とした新たな生活様式が推奨されるなかでも、業績を上げている企業、柔軟な体制が評価されている企業は多くあり、今後のキャリアを考えるうえで一つの指標になりそうです。

本記事では、コロナ禍での経済の動きや各社の対応例を参考にしながら、令和時代の今、どのような視点で業界、企業、働き方を選ぶべきかを考察します。

【視点①】暮らしの変化に左右されづらい

移動や人との交流が制限されるコロナ禍では、需要が急増した業界と急落した業界の明暗が分かれる状況が生まれています。飲食、観光、アパレル小売、建設・工事業などが大きな打撃を受けている一方、場所を選ばずに利用しやすいIT系サービス、EC全般、物流等は急激に業績を伸ばす企業が目立っています。

たとえば、ネットフリックスはコロナ禍で驚異的な伸びを見せ、会員数は2億人を突破。オンラインミーティングツールのZoomは、第4四半期決算で369%増と予想を超える数字を記録しました。物流業界では、ヤマト運輸の2020年の宅配便数が20億個を超え過去最高となり、これは急激に高まるEC需要のあらわれともいえます。

IT専門調査会社 IDC Japan 株式会社によれば、2020年の国内ITサービス市場は前年比2.8%減となるとのこと。商談の停滞やプロジェクトの延期・中止などコロナ禍の影響により、全体的にはやや減少気味となったものの、2020年後半からは活発な動きが戻り始め、2021年はプラス成長に回帰すると予想されています。

また、自宅時間を充実させるアイテム類も売上好調な様子が伺えます。たとえば、オーダーメイド枕や高機能マットレスなどの寝具、ルームウェアやナイトアップブラ、オンラインミーティングに便利なカジュアルな機能性シャツやポロシャツ、自宅に作業環境を作るためのデスクやイス、アロマなど香りを楽しむアイテム、自宅で本格的な料理が作れる調理器具などは、昨対比で伸びているそう。

実例として、熊本のドレスシャツメーカー「HITOYOSHI」とMXPのコラボレーションにより誕生したMXPメンズオックスシャツ(16,500円)は、前年比809%アップ(西武池袋本店での売上)の数字を記録し、通信販売でも全サイズ完売しています。

このように生活スタイルが変わっても場所を問わずに利用できる、あるいは生活の基盤となる自宅での暮らしを豊かにする普遍的な価値を持つサービス、アイテムは変化の影響に強いといえそうです。

【視点②】時代の変化に対して柔軟

事業形態を問わず時代の変化に対して柔軟に体制を変更し、安全や働きやすさを確保したり、社員満足度を高めていたりする企業も多く見られます。

Twitter社、ドワンゴ、富士通、NTT、日清食品などの企業では、テレワークが推奨されはじめたことを機に、在宅勤務の活用を標準とした新たな運用方針を発表。また、Webメディア企業CINRAはオフィスを解約し、社員全員がフルリモートでの勤務体制となりました。

そのほかの大きな方向転換では、大手芸能事務所のアミューズが4月に本社を山梨県富士河口湖町に移転すると発表して、話題を呼びました。

ユニークな事例では、コミュニティ戦略設計・SNS運用等を提供するNAVICUSが「ワーケーション手当」を導入。これは、ワーケーションを実施する際に正社員1名あたり1か月3万円(税抜)円まで手当が支給される制度で、交通費・宿泊費が支給対象です。土日祝日(休暇日)を除き日帰りでも連泊でもOKで、一定の条件を満たせば家族の同伴も許可されるそうです。

同社のTwitterでは、自然に囲まれた環境で社員がワーケーションを楽しむ様子が投稿されています。同社の代表取締役 武内一矢さんは、ワーケーションのメリットについて、「リフレッシュ効果」「社内のコミュニケーション促進効果」「社員の家族の好反応」の3つを挙げています。

こもりがちでストレスが溜まりやすいともいわれるテレワークですが、こういった柔軟な制度の運用は社員のモチベーションアップや満足度向上につながるのではないでしょうか。

これらの事例が示すように、社員の安全や快適さ、社会的に求められている動きをすばやく取り入れられる企業は、不透明な時代において価値を発揮できる可能性が高いといえそうです。

【視点③】退職者とも良いつながりを維持

近年、「アルムナイ」と呼ばれる企業の退職者と企業との関係性が注目されています。退職後も良い関係性を継続することで、会社を離れても古巣との仕事を継続できる、あるいは数年後に再入社するケースも聞かれます。これらの事例は、退職した会社との関係性がのちのキャリアに好影響をもたらす可能性があることを意味します。

コロナ禍の企業の実例では、民泊ビジネスを営むAirbnbの解雇した元社員へのアフターケアが話題となっていました。同社では、情勢が厳しくなった2020年5月に約1900人の大規模な解雇を実施していますが、元社員を手厚くサポート。全員に一定金額の退職手当、株式、1年分の健康保険、ノートパソコン等を提供したほか、在職する社員によるジョブサポートも実施しました。

これは、2020年の年末まで同社の採用担当者が元従業員のキャリアをサポートしたもので、会社を離れる元社員ができるだけ困難に直面しないようにとのCEOの配慮です。このように退職する元社員とのつながりを重要視する企業は、やむを得ない解雇に限らず社員自ら会社を離れる決断をしても、次のキャリアを応援してくれるのではないでしょうか。

そのほか、クラレでは2019年に退職した元社員に対する「カムバック採用制度」を新設。退職した元総合職社員とクラレが情報交換できるSNSシステムも導入され、ここでは元社員に対して、求人情報や社内トピックス等が提供されているそうです。“出戻り”というとネガティブなイメージを持つ人もいるかもしれませんが、元社員を貴重な即戦力であると考える企業も増えています。

時代の流れと自身の価値観を照らし合わせてみよう

コロナ禍での動きを中心にさまざまな企業の実例をご紹介しましたが、これらはあくまでも一例に過ぎず、キャリアに絶対的な正解はありません。時代の流れと自身の価値観を照らし合わせながら、将来について考えてみるとよいでしょう。理想とするライフスタイルやなりたい自分像を念頭に置きつつ、ご紹介した企業の実例も参考にしながら、じっくりと検討してみてください。

Career Supli
本記事で触れたように業界・企業ごとに業績や働き方が著しく変化しており、企業の将来性など見極めが難しくなっている現状があります。ぜひ、お気軽にLHH転職エージェントのコンサルタントにご相談ください。
[文]小林 香織 [編集]サムライト編集部