「ファッション情報」から「家電の取扱説明」まで、今は動画で見るのが当たり前になりました。誰もが体感しているように今は「動画の時代」です。
しかし、これだけ動画が支持され求められているのは何故でしょうか?
2018年11月に発売されたばかりの明石ガクト著『動画2.0 VISUAL STORYTELLING』から読み解いてみましょう。
新たな技術、「ヴィジュアルストーリーテリング」

動画がこれだけ浸透している背景にスマホの普及があるのは誰もが察していることでしょう。しかし、本当に理由はそれだけでしょうか?
「スマホ時代の動画集団」として各SNSプラットフォームに動画を配信し、圧倒的な存在感を示しているONE MEDIAの代表である明石ガクトさん。間違いなく2018年の動画界を代表する存在である彼は、スマホが浸透し情報取得が変化したことを”ヴィジュアル化した”と表現しています。
この「ヴィジュアル化」は、ただ単にコンテンツが画像化・動画化したという意味ではありません。サービスや体験の本質が変化しているということです。
明石さんは具体例として、
・人々が食べログで見るのは長文のレビューではなく、店への評価をヴィジュアル化した星の数
・Instagramの本質は写真共有SNSではなく、誰かの人生をヴィジュアルで覗き見る場所
などを挙げ、情報を「ヴィジュアル化」させて伝える技術を「ヴィジュアルストーリーテリング」と呼んでいるのです。
IPT=情報÷時間という考え方を身につけよう
ヴィジュアルストーリーテリングをしていく上で、いま求められ、受け入れられやすい情報とはどんなものでしょう。
明石さんは本書の中で”Information Per Time=IPT”という言葉を使っています。Information(情報)per(%)Time(時間)、つまり「時間に対する情報の濃度」を示すための尺度です。
若年層にはこのIPTが薄いコンテンツを忌避する傾向があり、スマホやデジタルサイネージでは特にIPTの濃い動画が好まれるとされています。明石さんはこの理由のひとつに「時間の価値」があるとしています。
TV番組や映画を楽しむ時には「30分や2時間、決まった時間をそのコンテンツに使おう」という心構えがあるのに対し、スマホやデジタルサイネージの動画は「スキマ時間に偶然出会うもの」。つまり、映画を観ている最中の1分間と動画を観る1分間は等価ではないのです。
その上、動画の1分間は映画の1分間とは違い、動画のために意図的に割かれた時間ではないため、日常生活のあらゆる事象が時間を奪い合うライバルとなります。この貴重な1分間を奪うために、スマホや街角で出会うコンテンツはIPTを高めていく必要があるのです。
若年層のテレビ視聴時間が減少しているのも、TikTokのような短時間のコンテンツが支持されているのもIPT濃度で裏付けることができます。これから情報を発信していくなら、IPTという考え方は感覚として身につけていくべきものでしょう。
本書では概念の図解や具体例となる動画のURLが掲載されていたり(電子版ではリンク掲載)と、まさにヴィジュアルストーリーテリングを体感できるつくりになっています。
前述の「ヴィジュアルストーリーテリング」や「IPT」などの時代を捉える概念的な話の他にも、実際に動画を使ってどうやって人々に情報を伝えていくか、というONEMEDIA直伝の文法や手法、クライアントワークの考え方など、自分の価値を高めていくための情報が詰まっているため、時代を捉えるためにはぜひ読んでほしい一冊です。
コミュニケーションをIPTで考えよう

「人々の時間が貴重」というのは、動画に限った話ではありません。私たちも仕事のプレゼンや日常会話でIPTを高め、人々の興味を喚起し時間を割いてもらう必要があります。
伝えたい情報をどれだけ濃縮して伝えるか?というのはコピーライティングやテレビCMなど、これまでもずっと命題とされてきたもの。IPTは決して新しい概念ではなく、コミュニケーションの要なのです。
様々なコンテンツがあらゆる手法で時間を取り合う中、どうすれば自分に興味を持ってもらえるのか?どうすれば自分の価値は高まるのか?を考えるために、戦略にIPTを組み込んでいきましょう。

