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「人見知り」はスキル
「人前に出ると緊張で頭が真っ白になる」「初対面の人とうまく会話がつなげない」「自分は人見知りだ」そんなふうに考えて、つい他人との接触を避けてしまう人は、実は損をしています。というのも人見知りという性質は使いようによっては非常に強力な対人スキルにもなりうるからです。
それを使わずに人と会ったり、人前に立って自分をアピールするチャンスを逃しているのはもったいないと言わざるを得ません。ここでは人見知りが持つスキルと、そのスキルを最大限に活かす方法について解説します。
「人見知り」が持つ優れた能力
人見知りの悩みの定番といえば「他人の顔色をうかがいすぎて疲れてしまう」「他人との衝突を避けすぎて自分の意見が言えない」といったもの。しかしこれらは裏返すと次のようになります。
・他人を観察し、気を回すことができる。
・必要のない対立を避け、物事を穏便に進められる。
これはまさに現代のリーダーに求められているスキルです。シンクタンク「ソフィアバンク」の副代表を務める藤沢久美さんの著書『最高のリーダーは何もしない』では、現代におけるリーダーシップの変化が指摘されています。
それは従来のチームメンバーをぐいぐい引っ張るカリスマ型リーダーシップから、自分のビジョンを根気よくメンバーに伝え、チームに自律的に動いてもらうビジョン型リーダーシップへの変化です。
藤沢さんは著書の中で、この新しいリーダーシップを発揮するためにはリーダーが「嫌われない人」でなくてはならないと書いています。嫌われていては、チームにビジョンが浸透せず、自律的に動いてもらえないからです。この条件はまさに人見知りの持つスキルと一致しています。
そうは言ってもこれは人見知りの性質がプラスに働いたときの話。実際に他人の顔色をうかがいすぎて自分の意見が言えないようでは、ビジョン型リーダーにはなれません。コンスタントに人見知りの性質をプラスに働かせるには、1つの意識改革が必要です。
それは「考え抜く」こと。人見知りの人に多いのが「他人の顔色をうかがいすぎて疲れてしまう、だから考えすぎないようにしよう」といった意識です。
しかしこれは全くの逆で、本当はもっと考える必要があるのです。考えすぎないようすると、本当に他人が何を考えているのかは把握できません。これに対して徹底的に顔色をうかがうと、つまり相手を冷静に観察・分析すると、相手の考えていることがわかってきます。
相手の考えていることがわかれば下手に緊張する必要もないので、人見知り特有の慎ましさは保ちつつも、余裕を持って人と接することができるというわけです。結果、「逃げるという消極的な意味ではなく、他人との関係を円滑にするという積極的な意味で他人との衝突を避けられるようにもなります。
PDCAを回して人間観察を極めるべし
「徹底的に顔色をうかがう」そして「積極的に他人との衝突を避ける」ための具体策として、人間観察にPDCAサイクルを持ち込むという方法があります。
●人見知りにとっての最重要フェーズ「P」
P(Plan)のフェーズでは相手の行動を観察して、傾向を分析します。おいそれと「Do」のフェーズに入れない引っ込み思案の人見知りにとっては、このフェーズが非常に重要です。
このときのポイントは事実だけを見ることです。例えば相手が職場の同僚だとして、書類の入ったファイルを自分の机にたたきつけ、「これよろしく」とだけ言って去って行ったとします。
これを「相手は自分のことを嫌っている」とか「相手に低く見られている」と見るのは、主観の入った観察です。同僚は「お前が嫌いだ」「お前には資料作成がお似合いだ」と言ったわけではありません。もちろんその可能性はありますが、はっきりしないことを想像で補うのは少なくとも客観的な観察ではないでしょう。
この場面で確かに言えるのは同僚がファイルを叩きつけたこと、詳しい説明もなく挨拶だけで去って行ったことだけです。それ以外の情報を付け加えてはいけません。
客観的な情報はたくさんあるほど正確に傾向を分析できます。先ほどの同僚について、仮に以下のような情報が集まったとしましょう。
・毎回前述のようなファイルの渡し方をする。
・仕事が終わると毎日のように「飲みに行かないか?」と誘ってくる。
・体育会系のガサツなノリが多い。
・「他人に自分の考えを説明するのが苦手」とよく話している。
この情報を分析すると、この同僚が前述のようなファイルの渡し方をするのには、次のような裏があると考えられます。「自分のことを慕っているが、自分の考えを説明するのが苦手なせいで、ファイルの中の書類をどうして欲しいかが説明できない。
叩きつけるように渡すのは、単に性格がガサツなだけ」こうして分析できれば、この同僚に対しての接し方をこちらが変えることができるはずです。また、客観的に相手を分析するにはノートなどにメモをとってアウトプットするようにしましょう。
頭の中だけで考えていると主観が入り込みやすいからです。紙やスマホにアウトプットすれば、後から見直して主観を取り除きやすくなります。
●勇気を振り絞る仮説検証フェーズ「D」
いよいよD(Do)のフェーズです。Pで立てた相手についての仮説を検証するために、勇気を振り絞って接し方を変えてみましょう。先ほどの同僚ならば、書類を渡してきたときに「おーい、○○。このファイル、来週のプレゼンに関するデータが入っているけど、パワーポイントに落とし込んでおけばいいのか?どのデータを優先したいとかあるなら、今のうちに言っておいてくれよ」といった具合です。
相手は説明下手なので「これなに?」と漠然と聞いてしまうと答えに困ってしまいます。そこで具体性を持たせて質問を投げかけ、相手が答えやすくしています。最後に「急にファイルを置くとびっくりするから、次からはもう少しお手柔らかに頼むよ」などと付け足せば完璧でしょう。
●仮説の正否を確認するフェーズ「C」
次にC(Check)のフェーズに入ります。Dで行った仮説検証に対する相手のリアクションを冷静に観察して、Pでの仮説が正しかったのかを確認します。
この同僚の場合、仮説が正しければにこやかに去って行くでしょうし、不機嫌になるようなら仮説を修正する必要があるでしょう。ここでも相手への苦手意識などに左右されて、観察が主観的にならないように注意します。
●相手の傾向をより明確にするフェーズ「A」
PDCAのAは一般的にActionとされますが、ここでは『鬼速PDCA』の著者で株式会社ZUUの代表取締役社長兼CEO・冨田和成さんにならって、Adjust(調整する)としましょう。
このフェーズではCで得られた新たな情報を相手の分析結果に加えて、より相手の傾向を明確にしていきます。そのためたとえ仮説が正しくても、一定の修正は必要になります。
例えばこちらの指摘に対して「ありがとう。お前がそうやって聞いてくれると、こっちも説明しやすい」と言ってきたら、この同僚に対して「自分の非を素直に認め、他人の気遣いに気づける人物」という分析も可能になります。次のPのフェーズでは、これを踏まえてこの同僚に仕事を頼んだり、指摘をしたりもできるかもしれません。
このPDCAをより多くの人に、より詳しく実践していけば、自ずと相手を必要以上に恐れなくなっていきます。相手の求める対応がわかるので、これまで以上に無用な衝突も減ります。人見知りのスキルを最大限プラスに活用すると、人見知りは人見知りでなくなるのです。
「人見知り」を武器にしよう!
人見知りの本来持っている性質を、プラスの方向にフル活用すると、それはこれからの時代のリーダーシップにつながる武器になります。使いこなせれば、職場や家族の中での評価も上がるでしょう。もう人見知りを自分の弱点として抱えるのは止めて、これからは武器として活用していきましょう。
日常生活の中で人見知りを武器にする方法をご紹介した後は、人見知りの人にとって最大の難関であるパーティーについての対策についてもご紹介しましょう。知り合いのいない場所で、なかなか他の人に話しかけられず、居心地の悪い思いをしたことのある人は多いと思います。
実は、いつもパーティーの中心にいるような明るい人も、決して全ての人と友達というわけではありません。誰に対しても当たり障りがなく、会話の弾む「世間話のタネ」を何種も持っているのです。世間話はお互いを理解し合うために直接作用するわけではありませんが、持て余している時間を埋め、あなたの印象を悪くない形で相手に残してくれます。知らない人と喋ることなんてない!とお困りのあなたに、とりあえずパーティーを2時間しのぐための世間話のタネを8つご紹介しましょう。
1人で参加したパーティーで2時間しのぐ!人見知りの世間話のタネ8選
世間話のタネ1. 子供時代は誰にでもある「過去」

相手が同い年くらいに見えたら、過去の話をしてみれば話が広がるでしょう。子供のころに見ていた特撮、学生の頃に流行った音楽などは懐かしさを共有できる良い話題です。世代が違うようなら、どんな子供だったのか?と聞けば、いつの時代も子供のすることは大して変わりませんから、何か共有できるものが見つかるはずです。
現状の話は時と場合によってはデリケートな話題となってしまうこともありますが、過去の話であれば話したいことだけを話すことができるので、地雷を踏む確率は格段に減ります。自分のわんぱくだったエピソードを1つか2つ、親に聞いておけばどこでも話せるタネになりますよ。また子供時代の話は、もの凄く偉い人にも有効で、その人が偉くなかった頃の失敗話などが聞けると、一気に関係が深まります。
世間話のタネ2. 出身地から生活圏まで「地域」

里心・地元愛は誰もが持ち合わせているものでしょう。自分の故郷の話が出来て嬉しくない人はあまりいません。相手の出身地についてどんなところなのか?と訊ねてみたら嬉しそうに答えてくれるでしょう。しかし、もっと良いのは47都道府県についてある程度の土着した知識を仕入れておくことです。
相手が北海道出身ならば、北海道でしか発売されていない飲み物「ソフトカツゲン」の話や北海道でしか放映されていないCM「木の城たいせつ」についてなど、出身の本人も忘れているかもしれない「地域限定」の話をしてみると相手のノスタルジーを刺激することが出来て、話が弾み出すかもしれません。各都道府県のあるあるネタをおさえておいて、あれって本当ですか?と聞けは確実に盛り上がります。
世間話のタネ3. 定番中の定番「季節・天気」

仕事中や移動中に生まれた時間のはざまに、天気の話をしたことのない人はいないですよね。天気は誰にとっても平等だからこそ、もっとも無難な話題だといえるかもしれません。天気の話をする時にはただ単に晴れているから汗ばむ、雨が降っているから肌寒い、などで終止させてはいけません。天気はそこから様々な話題に広げることのできるタネです。
晴れた春の日なら花粉症、夏ならクーラーによる冷え、雨なら靴の話題など多くの人にひっかかるものに繋げやすいのが天気の話の良いところです。少し風流ぶりたいなら、季節に咲く草花の話なんかも良いでしょう。日本人は四季と共に生きてきました。現代版百人一首を作るくらいの気合いで、季節や天気から繋がる話題を用意してみてもいいかもしれません。天気の雑学は『最強のアイスブレイク!営業で使いたい天気の雑学10選』を参考にしてください。
世間話のタネ4. どんな人なのかが分かる「休みに何してる?」

仕事の話をしたくない雰囲気の時もあります。そんな時にはプライベートな時間をどう過ごしているのか聞いてみましょう。その人がアクティブな過ごし方をしているのであれば、詳細について聞いてみれば良いでしょう。あなた自身も明るい分野ならばその話題で盛り上がれますし、知らない分野であれば教えてもらえば良いのです。
もしかしたら、休みに特になにもしていない、文字通り「休んでいた」だけの人もいるかもしれません。そんな時には平日の疲れや、休みに寝て過ごすことの贅沢さに共感してあげれば相手を安心させることができます。もしあなた自身がそういった過ごし方をしているなら、聞かれた時に備えて「休日なにしてるの?」ビシッと答えられない人のための7つの上手い返し方を読んでみると良いかもしれません。最近読んだ漫画の話なども有効です。面白い漫画については『出版社の営業がガチで選んだ、本当は自分が売りたい最高の漫画26選!』を参考にしてください。
世間話のタネ5.適当に喋ってしまおう「妄想」

現実の話ではなく、「○○だったらどうする?」と妄想の話を広げるのも当たり障りが無く、楽しめる話題です。「100億円手に入ったらどうする?」でも「透明人間になったらどうする?」でも、現実とかけ離れていればいるほど、立場や現状と関係なしにお互い話すことができます。
「考える必要のないこと」であればあるほど、それを話す人の人格は見えてくるものです。妄想の話を2人で広げて、その人が一体どんな人か?が分かれば次にするべき話も自ずと見えて来るはずです。あまり本腰を入れて妄想の話をしすぎても、相手を引かせてしまいますが、気楽に話している限りは与太話で片付けてもらえる楽な話題です。
世間話のタネ6.それぞれにコダワリがあるはず「食べ物」

話相手が断食している僧侶でもない限り、食べ物の話題はハズしません。昨日食べた美味しかったものの話でもしてみるといいでしょう。普段たいして良いものを口にしていないなら、今の季節においしい旬の食材の話や食べてみたいものの話をしておけば大丈夫です。
もしあなたが料理をしない人でも、レシピ本を一冊買って読んでおけば食材の話ひとつとってもどんな調理法が美味しいか、や変わり種の食べ方など食べ物の話に広がりを持たせられます。誰もがものを食べずには生きていけないのですから、食べ物に関する雑学はいくら知っていても無駄にはなりません。雑学に関しては『知らない人は損しているなと思う料理の豆知識30選【保存版】 』を参考にしてください。
世間話のタネ7. シンプルに喜ばせよう「褒め」

相手の姿を見て、ネクタイが変わっているとか、綺麗な靴を履いているとか、肌がツヤツヤしているなどの特徴を発見したら、そこを褒めて会話の切り口にしましょう。無理やり発見して褒めるとワザとらしく、いやらしい印象になってしまうため、あくまでも自然と目に留まった場合です。
相手の良いところを見つけるには、普段から観察眼を養っておかなければなりませんが、どんな小さなことでも良いと思ったことを素直に口にすれば、相手の気分を害することはないはずです。褒めた部分について相手が嬉しそうに話し出してくれたなら、この世間話は大成功といえるでしょう。
世間話のタネ8. 小さなラッキーを報告「プチ自慢」

自分の身に起こった小さな幸せを相手と共有するのも良いタネとなります。幸せのおすそ分けという感覚で、「今日の朝食べた卵かけごはんの黄身が双子だった」や「自販機で当たりが出た」ことなど、偶然が生み出した「ラッキー」はちょうど良くどうでもいい話題になります。
どうでもいい話題ながらも、ラッキーのハードルを自分から下げておくことで、相手に「何か良いことはありましたか?」と聞いた際に話を聞き出しやすくなります。良いことを自慢するのは気持ちの良いことなので、お互い小さなラッキーを自慢しあうことは良い雰囲気を作ってくれます。
8つのタネの育て方
これら8つのタネは、肥料となるあなたの知識や感性次第でどんな話題にも広がるタネです。どのタネにも共通して大事なことは、相手の気分を害さない、相手から話を聞き出す、相手を喜ばせるの3つだけです。
この3つさえ守れていれば、これらの話題のタネは知らぬ間に育っていき、あなたを人見知りから話し上手な人へと変えてくれるでしょう。
どんな時、どんな人が相手でもこれらのタネが使えるよう、様々な分野に興味を持ってタネを育てるための肥料を蓄えておきたいですね。
参考文献『最高のリーダーは何もしない』 『鬼速PDCA』


