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人生を豊かにする人間観
みなさんは「世の中にはいい人が多い」と思いますか?それとも「世の中には悪い人が多い」と思いますか?
このうち人生を豊かにするのは「世の中にはいい人が多い」と考えている人です。なぜならそう考えた方がプライベートと仕事、どちらの人間関係もうまくいくからです。
ここでは日本人が実はあまり「他人」を信頼していないことを明らかにするとともに、他人を信頼することのメリットを紹介。人生を変えるために「世の中の9割はみんないい人」という人間観をもつことを提案します。
日本人は「他人」を信頼していない
2011年3月11日に起きた東日本大震災は、「日本人のモラルの高さ」に世界中から注目が集まるきっかけのひとつになりました。
屋根に挟まれた人を助ける人々や、自分の不便もいとわずに不必要な電気を使わないよう節電に取り組む人々、生活必需品を買うために律儀に行列に並ぶ人々。こうした評価を聞くと、日本人は互いを信頼しあえる国民のように思えてきます。
しかしどうやら、一概にそうとは言えないようです。というのも1999年刊『信頼の構造』の著者・社会心理学者の山岸俊男氏が行った研究によれば、日本人はアメリカ人に比べて他人を信頼していないということがわかっているからです。
山岸氏の研究チームが212人の日本人学生と852人のアメリカ人学生に対して、人間一般に対する信頼についての質問を実施した結果、日本人学生の平均値よりも、アメリカ人学生の平均値の方が目に見えて高いという結果が出たのです。
山岸氏の共同研究者である山岸みどり氏が「信頼に関する日米比較研究」北海道大学の学生165人とワシントン大学の学生167人に対して行った研究(1993年 – 1997年)でも、同様の結果が得られています。
確かに日本人はいわゆる「馴染みの人」に対しての信頼は、非常に高いと言えます。しかし逆に、「馴染みの人以外」に対する警戒心も高い傾向にあるのです。
身に覚えがある人も多いのではないでしょうか。「初対面の人」に対して極端に緊張したり、目新しいことをやったり、耳慣れない話をしている人を過度に警戒したり……これらはどこかで相手を信頼できていないからなのかもしれません。
他人を信頼しない人は、成長できない

他人を信頼しないことの問題点はたくさんありますが、ビジネスパーソンにとっての最大の問題は成長できないことです。
たとえば部下を信じられず、仕事を任せられない上司。彼は上司としての仕事に集中できないので、いつまでたっても部下と同じ目線で仕事をすることになります。
あるいは異業種交流会やセミナーに参加するものの、人を疑ってばかりで誰の話にも耳を貸さない人。周りからは成長志向に見られるかもしれませんが、彼の考え方や行動はいくらセミナーに参加しても変わりません。
成長とは変化ですから、変化がなければ成長することはありません。
成長するには他人を信頼し、受け入れ、自分を変えていくことが必要不可欠なのです。そこで提案したいのが「世の中の9割はみんないい人」という人間観をもつことなのです。
「おいおい、そんなお人好しな……」と思うでしょうか。しかしこの人間観をもつことによるメリットは、それによって生じるリスクなんて気にならないほど大きいんです。
「世の中の9割はみんないい人」と思うと起きる5つのいいこと
●ハッピーな人間関係が広がる・深まる
信頼している人と一緒にいる時間は、心身ともに穏やかです。「悪意を向けられるのではないか」という不安がないだけで、人といる時間は格段に心地よく、かつ深くなります。これは「相手が自分のことを信頼してくれている」と思える場合も同じです。
「世の中の9割はみんないい人」という人間観をもつということは、世の中の大半の人とこうした関係を築きやすくなるということです。もちろん他人同士ですから合う・合わないはありますが、そこに信頼がある限りは基本的にハッピーな人間関係になります。
心理学者アドラーは「人間の悩みの9割は人間関係」と言いました。であれば「世の中の9割はみんないい人」という人間観は、悩みの大半を解決してくれると言えるのです。
●人生観・人間観が柔軟になる
信頼する上司の言うことは素直に聞くことができるが、信頼できない上司の言うことはたとえ正しくても受け入れられない。こんな経験をした人はたくさんいるはずです。
つまり世の中の9割の人間を信頼するようになると、それだけたくさんの話に耳を傾けるようになるということです。そうしていろいろな考え方を受け入れていくと、次第に自分のなかの人生観・人間観が柔軟になっていき、もっと多様な考え方を取り込めるようになっていきます。
「そんな考え方があるんだ」
「その考え方もありだね」
そういった言葉を自然体で言えるようになれば、きっと人生はより豊かになっていくのではないでしょうか。
●楽観主義者になれる
「世の中の9割はみんないい人」という人間観は、これそのものが楽観的な考え方であり、同時に人間関係の悩みが解消されたり、「困ったらほかの人に助けてもらえる」と考えられたりすることで、さらに楽観性が高まっていきます。
ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ教授ターリ・シャーロット氏の著書、2013年刊の『脳は楽観的に考える』によれば、社会性や楽観性は人生の展開に大きな影響を与え、このふたつの性質が強いほどより満足のいく人生を送るとされています。
●ビジネスパーソンとしての成長が加速する
他人を信頼しない人は成長できない一方で、他人を信頼する人は成長を加速させることができます。
これはここまで読み進めた人にとっては言わずもがなの話でしょう。人間関係がハッピーになり、人生観や人間観が多様化し、「なんとかなるさ」という楽観主義を手に入れれば、仕事でいろんな人に助けてもらえますし、だからこそさまざまなチャレンジもできます。
人を信じることは、ビジネスパーソンとして成功するためにも必要不可欠なのです。
●「信じるとマズい人」への嗅覚が鋭くなる
「世の中の9割はみんないい人」ですから、他人を信頼することが習慣化してくると人間関係における「成功体験」が増えていきます。人間関係が良好になったり、思わぬところで広がったり、助けられたり……。
そうした体験が積み重なっていくと、仮に1割の「悪い人」に出くわしたときに「あれ?なんだかおかしいな」という直感が働くようになります。「信じるとマズい人」への嗅覚が鋭くなるのです。
こうなればさらに成功する確率が高くなっていくので、「信頼力」とも言うべき能力がますますアップしていき、人生もより充実していきます。
騙されたと思って「世の中の9割はみんないい人」と信じてみよう
「返報性の原理」と言って、人間は他人から信頼されていると感じると、相手に信頼を返したくなるものです。そうして信頼し合えることができれば、人生はきっとハッピーな方向に変わっていくはずです。
だから騙されたと思って「世の中の9割はみんないい人」という人間観をもち、まず自分から相手を信頼してみましょう。
