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あなたの目は大丈夫?
「日本のメガネ人口は約7,500万人」「コンタクトの利用者は1,500万人〜1,800万人」とも言われるメガネ大国日本。しかし実は、目の健康に関する知識や技術は、世界的に見ても遅れているのをご存知でしょうか。
ここでは「眼の手術ランキング」で何度も全国1位に輝いた深作眼科の院長であり、米国白内障屈折矯正手術学会の最高賞を20回も受賞してきた日本一の眼科医・深作秀春さんの著書『やってはいけない目の治療』から、私たちが目の健康について持っている先入観や迷信について解説します。筆者もこの本を読むまで、目が疲れた時は眼球の上のツボをグイグイ押してましたがおもいっきり間違ってました。
「目に優しいコンタクト」など存在しない
多くの日本人が利用しているコンタクトですが、実は目の病気の様々な原因になっています。例えばコンタクトの保存液は、寝る前に外してコンタクトを浸しているだけで、タンパク除去などができて清潔が保てるというのが売り文句です。
仮に本当にタンパクを除去できて、コンタクトについている細菌まで殺せるのだとしましょう。しかしもしそんな強い洗浄力を持った液に浸したコンタクトを目に入れれば、繊細な目の細胞まで死滅してしまいます。ということは「保存液に浸している=清潔」ではないのです。
だからといって水道水で洗うのは最悪です。水道水には少なからず細菌が存在し、地域によっては角膜炎の原因になるアメーバー原虫がいるところもあります。最悪の場合角膜の移植手術が必要になりますが、これも今の日本では移植用の角膜が手に入りにくいため、下手をすればそのまま失明せざるを得ません。
また「酸素透過率70%で目に優しいから、つけっぱなしでも大丈夫」と謳うコンタクト製品もあります。しかし売り文句に掲げる数値は、あくまで工場出荷段階のもの。
使用していればその数値はどんどん低下していき、結果黒目の角膜が酸欠になり、表面に細かい傷ができていきます。ソフトコンタクトの場合、この傷の痛みが和らいでしまうため気づかない間に症状が悪化するのです。
「目に優しいコンタクト」など存在しません。眼球に細菌をくっつけていることを前提として、異常を感じたらすぐにメガネに変える、水道水では絶対に洗わないなど、コンタクトとの正しい付き合い方を考える必要があるでしょう。
さっさと忘れたい「間違った目の迷信」
メガネ大国だけあって、日本には様々な「目の健康法」が溢れかえっています。しかし深作さんいわく、こうした健康法のほとんどは眼科医ではないド素人が考案した迷信でしかありません。しかもこうした迷信は薬にならないだけでなく、深刻な目の病気を引き起こす毒にすらなっているのです。以下の3つはその代表的なものです。
間違った目の迷信1. 眼球体操は目に良い
→「目を左右上下に動かして目の健康を取り戻しましょう」そんなテレビ番組や書籍を見たことがあるはずです。これは全国的に流行し、中年女性を中心に多くの人が実践してきました。しかし眼球を激しく動かすと、目の中の硝子体繊維が強く揺れます。
硝子体繊維の端には網膜がくっついており、揺れによって引っ張られ続けると最後には破けてしまいます。結果「網膜剥離」になるのです。網膜剥離は放っておけば失明の危険もある重大な病気です。深作さんは実際に眼球体操が原因で網膜剥離になった患者さんを、手術によって救ってきたのだとか。
間違った目の迷信2. 目の疲れにはマッサージが効く
→ネットには「目の疲れをとるためのマッサージ法」といった類の記事が溢れかえっています。しかし目やその周りを叩いたり、マッサージしたり、こすったり、温めたりする方法は、目にとって毒にはなっても薬になることはありません。
目は非常に繊細な「むき出しの臓器」です。他の臓器は骨に守られていますが、目は外部からの光を取り込むために何の保護も受けていません。そんな目に対して衝撃を与えると、白内障や網膜剥離の危険をいたずらに高めるだけです。
間違った目の迷信3. 眼球の洗浄は目に良い
→花粉の季節になるとテレビなどで目を洗浄するホウ酸などの洗浄液が宣伝されます。しかしこうした洗浄液で目を洗うと、角膜の保護成分である脂層やムチンなども一緒に洗い流してしまいます。その結果無防備な眼球に汚れを含んだ洗浄液が行き渡り、目の病気を進行させたり、発症させたりするのです。
また同じように水道水で洗うのも基本的には目に毒です。前述のように水道水にも多くの細菌がいるため、目に悪影響を及ぼします。もちろんゴミやホコリが目に入った時など、洗い流さなくてはならない時もあります。ただ、メガネをかけるなどしてそのような機会を極力減らす努力は必要です。
一刻も早く止めるべき「目の生活習慣」
「むき出しの臓器」である目には日常生活の中にも危険がたくさんあります。以下では特に犯しがちな間違った習慣を5つ紹介します。
1.不恰好だから炎天下でもサングラスはかけない
→強い紫外線を受け続けると白内障や翼状片、瞼裂斑形成(けんれつはんけいせい)など深刻な目の病気につながります。実際、深作さんの実体験によると紫外線の強い沖縄ではこうした紫外線が原因の目の病気が多かったのだそうです。これを防ぐには習慣的にサングラスをかけるのが一番です。中でもできるだけ上や横の隙間から光が入り込まないものがベストです。
2.面倒だからプールではゴーグルはつけない
→水道水の細菌が原因で目の病気になるのと同じように、プールの水でも病気になります。プールの水には殺菌消毒用の塩素が入れられていますが、この濃度は水道水よりも低いため、プールの水には想像を絶する細菌がいます。ゴーグルをつけないままプールに入れば、無防備な眼球にこれらの細菌が飛び込んできます。面倒でも、不格好でも、プールでのゴーグルは必携品なのです。
3.花粉の季節は盛大に目をこする
→かゆくて目をこするときの力は、目のマッサージなどに比べれば微弱なものかもしれません。しかし微弱な力でも人生を通じて何千回何万回と積み重ねていれば、徐々に目にダメージが蓄積し、最終的には網膜剥離などにつながる危険があります。
4.スマホやPCの画面を長時間見ている
→「ブルーライトは健康に悪い」というのはすでに常識になりつつありますが、この光は目の表面だけでなく目の多くの網膜にまで悪影響をもたらすことがわかっています。ブルーライトカットメガネやシートのほか、目の中でブルーライトをカットしてくれる機能を持つ「ルテイン」「ゼアキサンチン」をサプリメントで摂るなどして、早めに対処しましょう。
5.室内で生活している時も水をがぶ飲みする
→水を一気に摂取すると眼圧が急激に下がり、視神経の障害が原因で起きる緑内障の誘発要因になってしまいます。炎天下にいる時は別として、室内で生活しているときの水の大量摂取は控えましょう。
知っておきたい「日本の眼科の真実」
眼科外科は現在大変進歩のスピードがはやく、1年前の最新知見がすでに古くなることもある分野です。しかし残念ながら日本の眼科は世界の最先端から10年も20年も遅れた情報や手法を、あたかも最先端医療のように取り入れているというのが現状です。
加齢により網膜の中心部の黄斑に障害が生じて見ようとするものが見えにくくなる病気「加齢黄斑変性」という病気があります。その治療法に「PDTレーザー療法」という手法がありました。ドイツで15年以上前に開発された方法ですが、その後すぐに危険性が発覚し、世界的には廃れてしまいました。
しかし世界で行われなくなってから、日本はこの方法を輸入し、広めたのです。そのきっかけは某大学教授のテレビでの発言だったそうです。結果何万人もの患者さんがこの手術を受け、視力を失ったのだと深作さんは言います。
このように日本の眼科の後進性は、「お医者さんの言うことは正しい」と思っている一般人の想像をはるかに超えています。セカンドオピニオンの活用や、広告性の低い書籍(深作さんは『患者が決めた!いい病院』をおすすめしています)を活用して、自分の目をきちんとした眼科医に診てもらう必要があるのです。
自分の目は、自分で守れ
コンタクトが目に及ぼす影響や間違った「目の健康」増進法、目に危険な生活習慣に挙句は信頼できるはずの眼科まで……私たちの目はあらゆるところで危険にさらされています。残念ながらこれらの危険から守ってくれるのは、私たち自身しかいません。
もちろん深作さんが院長を務める深作眼科のような眼科もありますが、それよりもまず自分が自分の目に対してもっと注意深くなる必要があるのです。今日からはこれまでよりも少しだけ、目について考える時間を増やしていきたいですね。
参考文献『やってはいけない目の治療』

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[文・編集]サムライト編集部