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「二兎を追って二兎が得られる」副業OKの時代へ
やる気のあるビジネスパーソンにとって「好機到来!」。がんばれば自身の市場価値が認められるチャンスが訪れました。それは「副業」OKの時代になったからです。
共同通信が大手メーカー24社に行ったアンケート調査では、日産や富士通など10社が社員の副業を認めています。さらに人材系やITベンチャーなどを軸に、社員のスキルアップや会社のブランディングのために「副業OK」の企業が増えています。中には「専業禁止!」を企業理念に掲げている大胆なところもあるそうです。
企業の経営環境や社員の職場環境、会社と社員の関係もドラスティックに変化しています。副業OKは様々な現場のイノベーションの起爆剤になりそうな予感です。
副業は会社も社員も「Win・Win」の相乗効果!
もう死語に近いかも知れませんが、人材業界では副業をしている従業員は「ムーンライター」と呼ばれていました。夜に副業を行うイメージから生まれた言葉です。
「本業が終わった後、月明かりの下で働く姿を表した言葉ですが、会社に内緒でこそこそ副業に励んでいるといった、後ろ向きのニュアンスが込められています。そこには副業に対する揶揄や禁止の理由が、陰湿に集約されています」(助っ人編集部)
副業されては会社の本業に支障をきたす、場合によっては情報漏えいにもつながる。これらは企業が副業を禁止する一番の理由で、会社への忠誠心やチームワークを乱す等も禁止の条項に挙げられています。服務規程に明記されている場合もあります。
そんな中、自社従業員の働き方について「社外チャレンジワ―ク」「社内ダブルジョブ」の画期的な2つの制度を設けたロート製薬などは、まだ少数派かも知れません。
「それでも社員の副業(兼業)を認めることで話題になり、会社は潤い社員はこそこそする必要がなくなった。これこそ会社と社員が〝ウイン・ウイン〟の関係になり、お互いのメリットを確認し、風通しの良い職場環境になっています」(助っ人編集部)
確かに企業の業態や大手か中小か、会社の規模によっても「終身雇用制」や「会社への忠誠心」を盾に、副業への対応が異なるのも事実です。しかし副業は会社をブランディングし、社員のクリエイティビティを高めることは、まぎれもない事実です。会社と従業員の雇用関係は多様化し、頭でっかちの経営者も考えざるを得なくなりました。
副業はビジネスパーソンが新しい人的ネットワークを構築する機会です。同時に自分が会社で求められる人材か、Win・Winの関係を勝ち取るチャンスでもあるのです。
AI(人工知能)の進化が副業にも影響!
「AI(人工知能)の驚異的な進化は、軍事から情報、教育、医療など様々な分野の生産現場を大きく変えています。会社では総務・人事などの管理部門にAIが導入され、結果、新しいタイプのリストラが起こると予測されます。
企業の形態が大きく変わる中、時代の変化に対応できない会社は社員から見放され、極論すれば副業でスキルアップした社員が現場の中枢で重宝され、発言権も増していきます」
「欧米型の転職や就活とも関係しますが、社員の副業を認める会社が選ばれる時代になりました。企業と社員は共創関係にあり、新たな形の雇用関係が登場している、と分析しています。AIの進化で副業のクオリティや市場価値にも影響し始めています」(いずれもシンクタンク研究員)
まさか副業の論考を進めている過程で、AIの進化が企業の形態や会社と社員の関係に影響しているとは、びっくり仰天です。副業は単なるアルバイト気分のお金稼ぎから、いまや社員のスキルアップやブランディング、会社のパブリシティUPにも深く関わっているようです。後述しますが、SNSの発信力が背景にあるのも見逃せません。
なぜか数字が示す「副業後進国」という実態
ここに副業についてショッキングな数字があります。経済通産省がまとめた「平成26年度兼業・副業に係る取り組み実態調査事業報告書」によれば、①副業を認めていない企業が96.2%、②容認している企業は3.8%と、信じがたい調査内容です。
副業OKの流れに逆行する数字ですが、副業に詳しいエコノミストはこう見ています。
「この2、3年で副業を認めている企業が加速度的に増えています。確かに高度成長期には副業禁止規定は、それなりに有効に機能していました。しかしAIの進化に加え、SNS時代に突入し、企業や社員が発信するツールが大きく変わりました。様々な情報は企業や個人の枠を超えてグロ―バルに、しかもリアルタイムに発信されます」
「副業の内容にもよりますが、共創関係にある会社と社員は強力なタッグを組んで、有益な情報やコンテンツをどう発信するか。求められるのは副業のコンテンツが会社にとっても有益な情報発信かどうか、です。やる気のあるビジネスパーソンにとっては、Wワークをこなしながら、‶二兎を追う〟スキルをいかに磨くかということになります」
前述した経産省の報告書の数字は、確かにショッキングです。そのためか「会社はなぜ副業を禁止しているのか」「企業が副業を禁止にする理由」「副業がバレてクビになった事例」などの特集記事が目立つのも事実です。一方では「副業のヒント満載 お勧め書籍4選」など、まとめサイトも賑やかです。「たかが副業、されど・・」の趣です。
副業を最適化するという見方
経済ジャーナリストは、いまがビジネスパーソンにとって‶二兎を追う〟絶好の機会としながらも、「会社は無原則に副業を許すはずがなく、とくに情報漏えいや流出には敏感になっています。一定の歯止めをかけるべく、副業を申請制にしたり、本業にリスクがないかチェックしたり。副業OKにも慎重な姿勢は崩していない」と指摘しています。
一方シンクタンク研究員は、副業を認めるかどうかの議論よりは「会社と社員にとって副業のコンテンツや発信力が、お互いにとって最適化の状況にあるかを議論した方がクリエィティブで有効な手法」と、提案しています。副業の論考に「最適化」の言葉が飛び出すとは意外でしたが、経営者も‶やわらか頭〟で最適化に向けて取り組まなければならない時代なのかも。「発想の転換」が求められるということなのでしょう。
なんだか会社と知恵比べみたいですが、やる気のあるビジネスパーソンは多様なバックグランドを社外に持っており、会社のマ―ケット戦略にとっては必要な人材です。副業解禁がいまほど叫ばれる時代に、ビジネスパーソンにとって何がメリットかデメリットかの状況判断が求められます。それは将来の人生設計に大きく関わるからです。
副業の先に複業、さらに起業の人生設計!

「副業は不安定な経済動向や企業環境を背景に、ビジネスパーソンが自立を喚起する決意表明の証」と言い切るのは一般紙経済部の記者です。ビジネスパーソンの「個人的な決意!」。この言葉には副業の先に複業、そして起業の意味合いが色濃く込められています。極めて意志的で「プロとしての独立」と言い換えても良いでしょうか。
社外で構築した人的ネットワークをフル稼働させ、スキルを磨き、市場価値を高め、個人が発信した専門性がマーケットで認知される。もちろん副業を始めたきっかけには「お金を稼ぎたい」と、ごく当たり前の理由もあるでしょう。
そこで収益を得ることの大切さも学習するはずです、そのあたりからビジネスパーソンは「プロとしての自覚」にめざめ、副業が複業に広がり、やがて複数の会社の仕事をしながら、起業が視野に入ることになります。問題はW・W(ワークワーク)バランスをどう取るかということです。
私の周囲にもメディアやIT関連、ファッション関係などSNSのツールを最大限生かして、仕事のバリエーションを豊かにし、早くから副業の流通を広げて複業→起業(独立)するライターやククリエイターがいます。もともと勤務していた会社とも新たな業務提携や雇用システムを交わしており、双方、創造的で良好な関係を築いています。
彼らは「会社での専業時代から、自分の仕事の最終到達点を模索し、仕事の出来る人と出会い、刺激を受けながら、人生設計を考えていました。いろいろスキルUPしていく中で副業は自分を高めるための、表現行為のひとつだった」と、断言しています。
副業の内容や取り組み、さらにアプローチ、目的は様々でしょう。しかし、究極的にはビジネスパーソンにとって「副業は人生を切り拓く表現行為!」なのかも知れません。
