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万年筆の魅力にとりつかれる人が続出
手紙やメモ取りなど、文書作成の手段がデジタル中心になっても、いまだに毎年数え切れないほどの新商品が発売され、ヒット商品が生まれている文房具界。
何気ない日用品である筆記用具もハイテク化が進んでいますが、近年「万年筆」が注目を集めています。
これまで扱いづらい、高級、文豪が使っているもの、というイメージのあった万年筆が注目されるようになった原因には、安価で使いやすい万年筆であるパイロットの「カクノ」のヒットが背景にあるようです。
間口が広がったことで、暖かい筆跡や弱い筆圧でなめらかに書ける使い心地が多くの人に親しまれるようになった万年筆。しかし、万年筆はただの実用品ではなく、嗜好品や装飾品としての一面も持ち合わせています。
スーツの胸ポケットでそっと主張する万年筆は大人の証です。これから万年筆を持ちたいと思った時には、どうやって選び、どうやって使えば良いのでしょうか?
万年筆の取り扱いと、老舗ブランドの高級万年筆から日常使いできるお手頃な万年筆まで、12種の万年筆をご紹介します。
万年筆ってどうやって使うの?

万年筆はノックすれば芯の出る、ボールペンやシャープペンシルと違って、使い始めるのにも少し手間がかかります。
万年筆にはインクが入っていないため、インクは別に選び購入する必要があります。しかし、手間がかかるだけではなく、このインクの粘度により万年筆の書き味は大きく変わり、色味や質によって万年筆特有のインクの濃淡に影響が出るなど、万年筆を持つならこだわるべきポイントなのです。
また、ペン先も用途やあなた自身の筆圧によって選ぶことができます。同じメーカーでも何種も出していますし、海外メーカーと国内メーカーでの差も顕著です。また、材質もステンレス製のものから18金製のものまであり、美しいデザインの施されたペン先は万年筆の顔です。
万年筆はこだわろうと思えばどこまでも追求することが出来、ある程度の値が張るものであれば、手入れをしながら何十年も、世代を超えて使い続けることのできるものです。
万年筆を選ぶ際にはデザインやインクはもちろんのこと、実際に試し書きしてから選ぶのが良いでしょう。
一本持っていたい、入門にオススメな万年筆
いきなり高い万年筆を買うのは勇気がいりますよね。そもそも万年筆を握ったことのない人も多いかもしれません。
まずは万年筆になれ親しみたいという人は国産メーカーを中心としたお手頃な万年筆から使ってみましょう。
パイロット 「カクノ」

画像出典:http://www.pilot.co.jp/
万年筆に触れたことのない人が万年筆の書き味を知りたいと思ったら、わずか1000円で本格的な書き味が楽しめるこの一本を買ってみることをおすすめします。見た目も万年筆のイメージを覆すポップなラインナップで、気軽に万年筆に親しむことができます。実際に、カクノで万年筆の書き味の虜となり、次の万年筆が欲しくなる人は多いようです。
セーラー 「プロフェッショナルギアスリム細美研ぎ」

画像出典:http://sailorshop.jp
万年筆は海外で発明されたものであるため、細字のペン先とはいっても、漢字を書く上では太すぎることもあるのです。セーラーは創業100年以上もの間、日本語を書くための万年筆を作ってきたからこそ作れる繊細なペン先の万年筆を作っています。手帳にメモをとるのに使うなど、細かい字を書くためには最適な一本といえるでしょう。
パイロット 「ナミキエラボー」

画像出典:http://www.pilot.co.jp/
パイロットは国内の万年筆シェアのトップを誇っているだけあり、日本人の手の形に合う万年筆が多いようです。このナミキエラボーは、ひたすらにアルファベットを書いていく動画が美しいと話題になったことで注目を集めた一本です。当時は国内で売り切れになり、逆輸入をしなければ手に入らないほどの人気となりました。
プラチナ 「セルロイド」

画像出典:http://www.platinum-pen.co.jp/
プラチナも日本の万年筆メーカーで、カートリッジ式の万年筆の日本での先駆けです。かつてはプラスチックのかわりに使用されたセルロイドという材質を、カットするのではなく巻きつけて作ったのが、この一本です。着色が美しく、味わいのある見た目で、女性が持つのにもオススメです。
ラミー 「サファリ」

画像出典:http://www.lamy.jp/
ドイツのメーカーのラミーは若者向けの万年筆を作っています。カジュアルなデザインで、安価ながらも安定した書き心地で、入門用・普段使い用にぴったりな一本です。ペン先はスチール製ですが、この硬い書き心地により、これまでボールペンに親しんでいた人も違和感なく使うことができます。
いつか持ちたい、憧れの高級万年筆
万年筆の持つ装飾品や工芸品としての役割も楽しめる、高級万年筆。コレクターズアイテムとして愛されているものもありますが、筆記用具としての実力もお墨付きです。
いつか持ってみたい、もしくは自分へのご褒美として持ちたい高級万年筆を見てみましょう。
モンブラン 「マイスターシュテック」

画像出典:http://www.montblanc.com/ja-jp/home.html
ドイツ語で「傑作」という意味のマイスターシュテック。万年筆といえばモンブランといわれ、三島由紀夫や松本清張などの著名な作家が愛用したことでもよく知られています。1924年に販売が開始されてからその構造はほとんど変わっておらず、傑作の名に恥じぬ、万年筆のスタンダードともいえる一本です。
アウロラ 「マーレ・アドリア」

画像出典:http://www.aurorapen.jp/
イタリアのトリノのメーカーで、イタリアの美しい自然や、所縁のある人物をモチーフにした華やかなデザインの万年筆を多く作っています。
デザインだけではなく、今では当たり前になったインクカートリッジを収納できる万年筆を作ったのはアウロラが最初です。他のメーカーにはない、少しクセのある書き心地は一度くせになればやめられないといわれています。
ペリカン 「スーベレーン」

画像出典:http://www.pelikan.com/
前項のモンブランと双璧をなす、代表的な万年筆メーカーがペリカンです。サイズやペン先の硬さの種類がとにかく豊富で、どんな手の大きさの人も、どんな筆圧の人にもきっと合う万年筆が取り揃えられています。クラシックなデザインは、使い続けても飽きがくることがなく、いつしか手放せない一品になるでしょう。
パーカー 「デュオフィールド」

画像出典:http://www.parkerpen.com/ja-JP
マッカーサーが太平洋戦争終結文書に署名するときに使用したのがパーカーの万年筆だったといいます。万年筆であることよりも「書くためのもの」としてのこだわりが見える商品が多く、他のメーカーでは見られない構造を持った万年筆も作っています。かつてはボディの色は黒が主流だったなか、オレンジ色の万年筆を作るなど、カラーバリエーションの豊富さも魅力です。
ウォーターマン 「エドソン」

画像出典:http://www.waterman.com/ja/
ウォーターマンは世界で初めて万年筆を作ったメーカーだといわれています。ウォーターマンを代表する万年筆、エドソンは美しい流線型となめらかな書き心地で「作家にとってのフェラーリ」と称されています。元は保険会社のセールスマンだった創業者が、契約書にサインをする時にインクを落とし、「インクのたれないペン」を作ろうと思い立ったことで誕生した万年筆です。失敗を克服し作られたウォーターマンの万年筆は営業職の方が持てば縁起担ぎになるかもしれません。
Namiki 「エンペラーコレクション」

画像出典:http://pilot-namiki.com/jp/
日本の文具メーカー、パイロットの原型であり、今もブランドラインとして残るナミキ。漆と蒔絵細工で世界と勝負しようとしたのがメーカーの始まりです。万年筆に施された美しい細工は人間国宝である松田権六を中心に作られた蒔絵集団「國光會」が作成しており、一本一本に伝統工芸の技が息づいています。
万年筆は愛着を持ってつかうもの
人に長時間貸すのは書き癖が変わるため良くないとされているほど、万年筆は書き癖のつく筆記用具です。使い込めば使い込むほど、ペン先が自分に書きやすい形に変わるのです。
愛着を持って使えば、手放せない一品になるところも万年筆の魅力のひとつ。これまで万年筆を使ったことのない人も、ぜひ自分の一本を手に入れて使い込んでみてはいかがでしょうか?
[文・編集] サムライト編集部