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歴史に影響を与えていたメンタリスト
ヒトラーは稀代の演説家として知られていますが、その演説を指導したのはエリック・ヤン・ハヌッセンというメンタリストでした。メンタリストの歴史は古代エジプトにまで遡ることができるほど長いものですが、引き継がれてきたノウハウはこれまであまり表立って伝えられてきませんでした。
しかしメンタリストであるサイモン・ウィンスロップさんが著し、Daigoさんが監修・翻訳を担当した『[新装版]心を操る超プロ メンタリストになる! 』には、そのノウハウがわかりやすく説明されています。ここではこの中からメンタリストの基本スキルとテクニックについて、考え方と鍛え方を紹介します。
メンタリストの基本は「集中」「観察」「記憶」
●「集中」し、「観察」し、「記憶」する
Daigoさんのテレビでのパフォーマンスを見たことがある人は、メンタリストが何か超能力的なものを使って人の心を見透かしているようだと感じたかもしれません。
しかしメンタリストにはそうした超常的な能力は一切なく、ただひたすら「集中」「観察」「記憶」によって情報を集め、そこから結論を導いているにすぎません。ただそこで発揮される集中力や観察力、記憶力が超人的なので、私たちは魔法を使ったかのように感じたり、人によっては「まあ、テレビだからね」とわけ知り顔をしたりするのです。
ところがDaigoさんは現在企業コンサルタントとして、人の心を読んだりコントロールしたりするテクニックをビジネスパーソンに指導しています。もしこれが魔法だったり、インチキだったりすれば、誰かに教えることはできないでしょう。このことからもメンタリストのテクニックが、確かな「技術」であることがわかります。
●メンタリストの全ての土台は「心身の健康」にある
メンタリストとしてトリックを使うためには、精神的にも肉体的にも健康でなければならない。
引用:前掲書p43
『[新装版]心を操る超プロ メンタリストになる! 』が第1章の4ページ目で、メンタリストの土台としてレクチャーしているのはなんと「心身の健康」です。ストレスは目の前にある事実にフィルターをかけて、得てしてネガティブな方向に認識を歪めます。
そればかりか身体的な健康を損なう原因にもなり、健康への不安はさらなるストレスや無用の緊張を招くでしょう。それらはメンタリストのテクニックに必要な集中力、観察力、記憶力を低下させます。これを食い止めるためにウィンスロップさんが提示している方法は以下の通りです。
・脳の働きを活発にする食べ物を摂る(ビタミンAとβカロチン、ビタミンC、ビタミンE、DHA、オメガ3脂肪酸など)
・喫煙とカフェインの習慣を止める
・心を落ち着かせる音楽を聴く
・目標を明確にし、成功イメージを視覚化する
・ポジティブな態度をとりつづける
・適度に運動する など
「メンタリストでいるためには心身ともに健康でなければならない」とは意外な話かもしれません。しかしDaigoさんの書籍を読めばわかるように、彼もまた心身両面の健康を妨げないよう細心の注意を払っています。
メンタリスト流「集中」「記憶」「観察」を磨く方法

ではどうすればメンタリストクラスの集中力、観察力、記憶力を発揮できるのでしょうか。以下ではウィンスロップさんの著書の中で紹介されている3つの方法を取り上げます。
●集中力を上げる「呼吸法」
ウィンスロップさんは集中力を上げる呼吸法として、世界的な人道的指導者シュリ・シュリ・ラビ・シャンカールから教わった「火の呼吸を解き放つ」というエクササイズを紹介しています。これは10分程度で意識をクリアにし、集中力を上げる効果があります。やり方は以下の通りです。
1.あぐらをかいて、両手を手のひらを上にして膝の上に置く。
2.ゆったりと呼吸をする。
3.横隔膜をコントロールする意識で、深く長い呼吸を行う。横隔膜の動きに意識を傾ける。
4.より力強く、より深く呼吸できていると感じてきたら、徐々に呼吸の速度を上げていく。*
5.初心者の場合5分程度で熱っぽくなってきて、続けられなくなる。
6.呼吸の速度を落とし、再び深く長い呼吸を5分ほど行う。
※このエクササイズでめまいを起こす場合もあるので、事前に医師や専門家に相談する。
実際やってみると頭が軽くなり、目がぱっちりと開くのがわかります。初めてやっても効果があるので、練習を積めばもっと効果が実感できるのかもしれません。
●「観察の積み重ね」が観察力を鍛え上げる
観察力を向上させる方法は、日常の中に溢れかえっています。すなわち目の前にある物、例えば腕時計や財布、靴などから持ち主の性格や出自、身体的特徴や癖などを観察によって推理する練習ができます。
傷はあるか、あるならばどんな傷か。汚れはどんなところについていて、手入れされた様子はあるか。サイズはどれくらいか、ニオイはどうか、年代はいつ頃のものか、メーカーはどこか。練習を重ねているうちに、一つの物にどれほどの見るべきところがあるかがわかるようになります。
ここで重要なのは、目だけでなく耳や鼻、肌、場合によっては舌と、五感すべてを使って観察することです。一流のメンタリストはそうしてあらゆる情報を一度に集めるので、スピーディに正確な結論を導けるのです。
あるいは一枚の写真からも観察力を鍛えることができます。まずできるだけ画面のごちゃごちゃした写真を雑誌やネットなどから用意します。次に他の人に協力してもらい、各自が順番に写真の要素をできるだけ多く書き出していきます。
最後に答え合わせをします。他の人が見つけていたことを自分が見つけられていなかったら、なぜ見落としたのか、どうすれば見落とさなくなるかを考えましょう。この練習を積み重ねれば、見えるものが増えていくはずです。
●記憶力は「自発的関心」で発達させる

私たちの記憶力は基本的に自分が関心を向けたことにしか働きません。これは「無意識の関心」といって、特に努力しなくても記憶が可能です。ただこれだけに頼っていると、メンタリストのような記憶力を身につけることは不可能です。
記憶力を飛躍的に発達させるには、関心のないことにも発揮できる「自発的関心」の練習が必要です。語学や資格の勉強をするときに「興味さえ持てればいいんだけどなあ」と頭を抱えた経験がある人は少なくないはず。しかし自発的関心を身につければ、そうした関心のないことでも記憶力を発揮できます。
ウィンスロップさんが著書の中で紹介している自発的関心を身につける方法は次の通り。
・興味が持てない人や物に意識を集中させ、細かい点を特徴が言えるレベルまで五感を使って観察する。この練習を日常的に積み重ねる。
・マルチタスクを止める。一つのことに集中し、気が散る要素をできるだけ排除する。
・自分で自分に注意を喚起する癖をつける。心ここに在らずの自分に気づいたら、自分で自分に喝を入れて目の前のことに意識を引き戻す。
・興味を持つ努力をする。好きなことについての記憶力は、そうでないこと対するものと比べて圧倒的に高くなる。
・目の前の情報を、覚えようとする。どんな細かいことでも覚える時間を作り、自分に対して「これを覚えろ!」と言う癖をつける。
こうして自発的関心を身につけているからこそ、メンタリストはより高度な記憶術を実践できるのです。
メンタリストは一日にしてならず
Daigoさんをはじめとするメンタリストのように、魔法か何かのように相手の心を読んだり、操作したりするためには、それ相応の訓練が必要です。『[新装版]心を操る超プロ メンタリストになる! 』の中でも練習と失敗の必要性は何度も説かれており、メンタリストのような能力がそう簡単には身につかないものだということがわかります。
しかしもしあなたがメンタリストのテクニックを自分のものにしたあかつきには、目の前に広がる世界は今と全く違って見えることでしょう。同書には基本を身につけた後の応用編(嘘を見破る、人心を操る、催眠術をかけるなど)についても書かれています。興味がある人はぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
参考文献『[新装版]心を操る超プロ メンタリストになる! 』

