社会人7年目、先端技術に携わる若き研究者の転職を、 「ビジョンマッチング」はどう成功に導いたのか

先端の技術や研究に携わる求職者に、開かれた転職の門戸は意外にも広くはないと言う。それが30歳前後、社会に出て7~10年の人財であれば、転職先でどれほど自身の能力やキャリアを生かせるかが、その後の人生に大きく影響する。

「『人財躍動化』を通じて、社会を変える。」をビジョンに掲げるThe Adecco Group Japanは、誰もがいきがいを持って働ける社会づくりを使命とする。そして、同社で人財紹介に特化したサービスを展開する「Spring転職エージェント」は、「ビジョンマッチング」という同社共通の独自手法で、求職者と求人企業のベストマッチを図る。

先端分野での活躍を標ぼうする若き技術者・研究者は、このビジョンマッチングによる転職で、どのように想いを実現したのだろう。今回は、ケミカル&エネルギー紹介部アドバンステクノロジー課の小山慎介氏に、成約事例の詳細を伺った。

求職者と求人企業を一人の担当者がつなぐ360度の双方向コンサルティング

小山氏は、転職を望むF氏の話を聞き、その理由がよく理解できた。

今回、転職を考えていたF氏の経歴は、大学院を卒業後、大手の化学部材メーカーの研究員として就職。そこでの勤続年数は約7年。その間にナノ技術の基礎研究から製品開発、そのスケールアップも経験した。その後、DXの部署に移り、データサイエンスを担当することに。ところが「データ活用に関する方向性が定まっておらず、その分野に詳しい人財も少ない。そこに強い違和感を抱いたようです。しかも、F氏はこのポジションに就いてから、社会人学生として大学に入り直し、データサイエンスを学んでいたので、なおさら先行きに不安を覚え、転職を考えたそうです」と小山氏はふり返る。

小山氏が所属するケミカル&エネルギー紹介部アドバンステクノロジー課は、化学とエネルギー関連の企業への転職を扱う部署。アドバンステクノロジー課は、そのなかでも先進技術に関わる分野を扱い、小山氏は主に化学、電気、機械などの技術系の職種における転職を担当している。F氏が手がけてきたナノ粒子化学やデータサイエンスもこの領域に当たる。

転職の経験は小山氏にもある。前職は電子部品の商社勤務。転職の直接的な理由は、会社の業績の急激な悪化もあったが、本意は旧態依然とした企業体質に辟易していたことだった。

「動かない、動けない。何か新しい取り組みをしたいと思っても、社内に通じない。そんない態勢に発展性を感じられませんでした」

そんな小山氏が、転職先に人財紹介業を選んだのは、アデコグループが掲げる「人財躍動化」というコンセプトと、コンサルティングにおける「ビジョンマッチング」という独自の手法に共感したからだと言う。

アデコグループの人財紹介ブランドであるSpring転職エージェントは、360度コンサルティングを基本としている。これは、業種ごとに専門性を持つコンサルタント一人が、求職者と求人企業を双方向に取り持つというもの。そしてビジョンマッチングは単純に転職条件をすり合わせるのではなく、求職者のキャリア・ビジョン、ライフ・ビジョンにまで配慮し、企業の人財・業務ビジョンと合致させていく、ベストマッチングを実現するための手法だ。

「自分にも似たような経験がありましたから、新しいポジションで『さあ、これから』というときに、足元がおぼつかない状態のFさんの落ち着かない気持ちはよくわかりました」

Spring転職エージェントのコンサルタントは、小山氏がそうであるように、求職者の気持ちに寄り添いながら、Fさんの想いをこと細かく丁寧に聞き、掘り下げていく。

こうしてFさんと小山さんの二人三脚さながらの転職活動がスタートした。

面接の苦手意識を払拭した「自らの言葉で語る」アピール法の助言

小山氏はFさんに見合う求人はかなり限られるだろうと考えていた。

「そもそも先端技術に関わる求人は、一般的にそう多くはないのが現状です。そのうえFさんには結婚の予定があって収入は現職と同等、勤務地も関西を希望していました。その時点で対象となりそうな企業はかなり絞られます。そして、その企業がそのポジションの求人をタイミングよく出しているかどうかという問題もありますし」

ただ、小山氏には1社、Fさんの希望に合いそうな企業の当てがあった。関西の大手エネルギー関連のE社。E社は、ナノ技術の研究開発に力を入れており、同社の研究所は同社にはいないタイプの研究者を求める傾向があった。また、E社はデジタル分野においても先進的な取り組みをしている企業としても知られている。

Fさんはその提案を歓迎した。小山氏の打診に、E社もFさんに関心を示した。双方の関心度の高さからマッチングはスムーズにいきそうだったが、懸念材料がまったくないわけではなかった。

まず、Fさんとの面談を通じて感じたことのひとつに、面接に苦手意識を持っていること。

その理由が「転職理由や自身の仕事に対するビジョンを尋ねても、スラスラと言葉が出てこないんです。これは面接では不利に働きます。Fさんも、それは自覚していたようです。実は5年ほど前にも一度、転職活動をしていて、書類選考は通ったけれど面接で落ちたという話をしていました」

ただ、そこは無理もない小山氏は思った。Fさんのような30歳そこそこの年齢で、特に自身のキャリアビジョンを明快に語れる人は少ない。そこで小山氏は面接対策として「自らの言葉で自らを語る」ようにとアドバイスした。

「面接対策と言っても、ビジョンマッチングでは『この質問にはこう答えてください』という、話し方教室のような指導をするわけではありません」

Fさんはナノ技術においては専門性もキャリアも備えている。データサイエンスを改めて学んでいることから、向上心が高いことがわかるうえに、人柄も明るい。

「そういう将来有望な人財が、型にはまった受け答えをしたのでは主体性を疑われます。私はFさんのキャリアも想いを聞いていますし、E社の面接や採用の傾向も知っていますから、自らの言葉で語るための考え方の整理や、話す道筋を示すだけです」

面接は、自身のプレゼンテーションの場。自分をどう語れば相手にとって魅力的な志願者に映るのか。その点からも、求職者が「自らの言葉で自らを語る」ことができるかどうかは、ビジョンマッチングにおける大きな要素だ。高い専門性を求められる分野の転職では、採用側はこれをかなり重視するのだと言う。

小山氏の助言が功を奏し、Fさんの面接は順調に進んだ。しかし、まだFさんには迷いがあった。化学を取るか、データサイエンスを取るかである。

求職者への共感と俯瞰的な視点両方を駆使して見守る転職サポート


Fさんは、ナノ技術の研究もさることながら、データサイエンスにも強い関心を持っていた。そのため、同時期に他社の転職サービスを利用し、DXのデータサイエンティストを求めるIT系企業への転職活動もしていた。そこでは、通信系2社の選考が進んでいた。

一方、E社研究所はナノ技術には携われるが、ポジションにデータサイエンスの研究や活用は含まれない。データサイエンスは、新しく自分が踏み出した学術分野でもあるので、E社に入社して大学での受講が続けられるのかということもあり、どちらを取るか決めかねていたのである。

現在、20代後半から30代前半の男性技術者や研究者を担当することが多いという小山氏。「並行して複数の企業の話を聞いていくと、Fさんのように迷う人も少なくない」と言う。年齢的に、自分の新たな可能性を試してみたい時期でもある。

「もちろん『こちらにしなさい、あちらがいい』という指示的な助言はしません。Fさんの人生にかかわることですから、決めるのはあくまでもFさんです」

とはいえ、転職は一生に何度もあることではない。よりよい選択をしてほしいと思う小山氏は、Fさんにもう一度、自身の足跡をふり返ってみることを勧めた。少し立ち止まって、何をしてきたか、そして何をしたいのかを改めて考えてもらったのだ。

「結果的にFさんはE社を選択されました。それからは、もう迷いは見られませんでした。E社で自分の力を発揮したいというアピールも、面接官によく伝わったのだと思います。3次にわたる面接のフィードバックはどの回も、高い評価を維持していましたから」

E社の内定に、Fさんは快諾。そして「最善の選択ができたと思う」と自身の転職をふり返った。

転職のコンサルティングは一期一会の仕事だが、そこには求職者の人生を左右しかねない重責がある。だからこそ、Spring転職エージェントのコンサルタントは、求職者の想いに寄り添いながら、一方では助言者として少し距離を置き、俯瞰的な視点を持って彼らを見守ることにも必要になる。

ビジョンマッチングを基軸とした、その手厚いサポートがFさんの転職意向を支え、採用にいたる求人側の高評価の維持にもつながったのである。

Spring転職エージェント
コンサルタント:小山 慎介

大卒で電子部品商社に入社。法人営業を経験。さまざま業種の企業と接点をもったことで多種多様な業種に対して深い知見を持ち合わす。その後、前職で得た知見を生かし、Spring転職エージェントにコンサルタントとして入社。一人ひとりのキャリアビジョン、ライフビジョンを軸にしたコンサルタントには定評があり丁寧なサポートは求職者からも高評価を得ている。