コンサルタントは、スキルや経験、ノウハウを活かせる職業のひとつです。ただ、コンサルタントとひと口にいってもさまざまな種類があり、求められるスキルや経歴も異なります。
本記事では、コンサルタント職に興味を抱く方を対象に、主な種類や仕事内容、求められる資格、スキルなどを解説します。
Contents
コンサルタントとは?
コンサルタントとは、クライアントが抱える課題を解決するため、具体的な方法や道筋をアドバイスする職業です。
相談に応じるだけでなく、クライアントの課題解決や目的達成のために力を尽くし、二人三脚で設定したゴールを目指します。
クライアントは、その道の専門家と認識してコンサルティングを依頼するため、期待以上の成果を求められるケースが少なくありません。そのため、その業界に関する高度な知識や問題解決力がコンサルタントには求められます。
高いレベルの能力が求められる仕事であるのはもちろんですが、その分依頼に成功したときは大きな達成感を得られます。
プロジェクトチームのメンバーとともに、クライアントと二人三脚でゴールを目指す過程では、このうえない一体感も得られます。
なお、一般的にコンサルタントは案件ごとにプロジェクトを立ちあげ、チームで行動します。そのため、プロジェクトごとにメンバーが大きく異なることも珍しくありません。
ここが、一般的な企業と働き方が大きく異なる部分です。
主なコンサルティングファーム 6種類
コンサルティングファームとは、コンサルティングサービスを提供する企業です。戦略系や総合系、財務系など、ファームによって専門分野や得意とする領域が異なります。
1. 戦略系コンサルティングファーム
戦略系コンサルティングファームは、企業の経営戦略に関するサポートを行う企業です。
たとえば、マーケティング戦略で生じている課題の解決や新規事業に関するアイデアの提示、今後の成長戦略に関する具体的なアドバイスなどが挙げられます。
上記はあくまで一部であり、実際にはさまざまな業務に携わります。
組織全体が抱える課題を解決するために具体的な戦略を組み立てることもあれば、特定の事業における目的達成を目指してアドバイスを行うこともあります。
2. 総合系コンサルティングファーム
総合系コンサルティングファームは、特定の業界や分野に縛られず、クライアントのあらゆる課題を解決するために活動しているファームです。
企業の経営に関する戦略の立案や財務の課題を解決するためのアドバイス、業務効率化に向けたシステム導入の支援など、さまざまな依頼に対応できることが特長です。
総合系のファームは、業界や分野を問わずさまざまな依頼を受けるケースが多いため、ファームの規模そのものが大きいことがほとんどです。
幅広く依頼を受けるため、対応するには人材の質はもちろん量も求められます。
また、クライアントの業界に応じて対応する業界別専門チームと、課題の分野に応じて対応する機能別チームを設けているファームが多く見受けられます。
たとえば、製造企業からの依頼には製造業チームが、金融企業からの依頼は金融チームが、といった具合に対応します。
3. 財務系コンサルティングファーム/FAS
財務に関する課題を解決するために活動しているコンサルティングファームです。企業再生支援や企業価値評価をはじめ、M&Aに関するコンサルティングにも対応しています。
近年、日本でもM&Aにより組織の規模を拡大する企業が増えました。ただ、M&Aは正しい知識やノウハウのもと進める必要があり、場合によっては失敗する可能性もあります。
財務系コンサルティングファームでは、M&Aのターゲット選定や交渉などに携わり、クライアントをバックアップします。
また、M&A支援以外にも、企業再生支援や企業価値評価、フォレンジックなどもカバーします。
4. 人事系コンサルティングファーム
企業の人事領域に強みをもつコンサルティングファームです。
たとえば、現状における評価制度の課題抽出や改革案の立案、新たな報酬制度の策定、福利厚生、人材の能力開発といった業務が挙げられます。
人事関連の課題解決を包括的に請け負っているファームがある一方で、特定分野における支援を得意としているファームもあります。
たとえば、人材育成に特化したファームであれば、研修プログラムの開発や実行を、採用業務に特化したファームなら選考から面接まで一貫したサービスを提供しています。
5. 医療系コンサルティングファーム
医療系コンサルティングファームは、主に医療機関を対象にコンサルティングサービスを提供しています。対象となるのは、診療所や大学病院、介護施設、クリニックなどです。
医療機関と一般企業とでは、抱える課題も戦略的な目標も異なります。そのため、医療系ファームには医療業界に精通した人材が求められます。
請け負う業務はファームによって異なるものの、多くは経営課題の解決に向けた支援を行っています。
より効率的に医療を提供するアイデアやDX化、資金調達に関するアドバイスなどが挙げられます。
6. 再生系コンサルティングファーム
再生系コンサルティングファームは、企業の再生を実現するための支援を行うファームです。
さまざまな事情で業績が低迷し、事業の継続が危ぶまれているような企業に対し、回復するためのアドバイスを行います。
コンサルティング内容は多岐にわたり、経営診断や再生計画の立案、収益改善に向けたオペレーションの実行、M&A立案、運転資金のマネジメントなどが挙げられます。
事業継続すら危ぶまれる企業を立て直すには、特定の業界や業種への高度な知識と、経営の経験を有する人材が求められます。
ただ、多くの再生系ファームは特定分野に強みをもつケースがほとんどです。そのため、1社でクライアント企業の立て直しを一貫して行えるところは多くありません。
税務ノウハウの提供や企業の価値向上など得意領域のサービスを提供し、再生を支援しているファームが多く見受けられます。
人気のコンサルタント 10種類と仕事内容

コンサルタントとひと口にいっても、経営コンサルタントやITコンサルタント、建設コンサルタントなどさまざまな種類があります。
それぞれ、求められるスキルや経験が異なるため注意が必要です。
1.経営コンサルタント
企業が抱えるさまざまな経営課題を解決に導くのが、経営コンサルタントの仕事です。
売り上げが伸び悩んでいる、社員の離職率が高い、市場のシェアを奪われた、といった悩みをヒアリングし、原因の究明や具体的な解決策の提案などを行います。
経営コンサルタントに求められるのは、論理的な思考力です。中長期的な経営戦略を組み立てるには、論理的思考力が欠かせません。
また、クライアントの業界や業種に対する知識も求められます。経営者や現場の社員などからさまざまな情報を得る必要もあるため、インタビューテクニックも不可欠です。
2.ITコンサルタント
IT分野に関する課題を抱く企業に、アドバイスを行う職業です。
たとえば、組織のDX化を進めたい、ITシステムを導入してデジタル化したい、IT技術で業務効率化を実現したい、などの課題を解決するため、知恵を絞ります。
ITコンサルタントが担う領域は広く、IT化の戦略立案やシステムの導入支援、ITに関するリスクマネジメントなど多岐にわたります。
IT技術に強い興味や関心がある、新たな技術への飽くなき探求心がある、といった方に向いています。
基本的に高度なITスキルが求められる職業であるため、未経験からITコンサルタントへ転職するのは難しいかもしれません。
ただ、未経験者向けの育成制度をもつコンサルティングファームもあり、そのようなファームのなかには未経験の方を採用するケースもあります。
3.建設コンサルタント
建設コンサルタントは、インフラ全般に関して、発注者である国や地方自治体などの技術パートナーとして業務をサポートする職業です。
実際のインフラ工事は建設会社などの事業者が担いますが、コンサルタントはその工事がスムーズに進み、失敗しないようアドバイスやモニタリングなどを行います。
担う業務は幅広く、事業計画案の作成や開発コストのシミュレーション、工事前の調査と問題点の抽出、プロジェクト全体の管理などが含まれます。
大変な仕事ではありますが、人々の生活基盤に関わる重要な仕事であるため、大きなやりがいを感じられます。
建設コンサルタントに求められるスキルとしては、プロジェクト全体のマネジメント力や環境調査、保全に関するスキルが挙げられます。
また、土木や工学、エネルギー、地質といった専門知識も求められます。
4.人材コンサルタント
人材コンサルタントは、企業の採用活動や人事制度の設計などを支援する職業です。
現状における課題を抽出したうえで、企業に必要な人材を補充できるようサポートを行います。
たとえば、企業から依頼を受けて人材をスカウトし紹介する、新たな働き方に対応した人事評価制度を提案する、といった業務が考えられます。
また、求人票の作成や面接日程の調整なども人材コンサルタントの業務です。
業務上、さまざまな業界や業種で働く方と出会う機会があるのが特長です。また、人材を求める企業と、職場を求める個人の双方から感謝されるため、やりがいも感じられます。
5.システムコンサルタント
システムコンサルタントは、IT技術やシステムの導入により、クライアントの課題を解決する職業です。
課題解決や目的達成のためにどのようなシステムが必要なのか考え、システムの設計や導入にも携わります。
システムコンサルタントがクライアントとどう関わるかはケースバイケースです。
問題解決のために必要なアドバイスのみを行い、間接的に業務へ関与することもあれば、コンサルタントが直接システムの設計や導入に携わるケースもあります。
システムコンサルタントに求められるのは、ITに関する高度な知識です。
クライアントの悩みに対し、どのようなシステムの構築が解決に役立つのか導き出すには、高度なITの知識が求められます。
また、次々と新たな技術が誕生している世界であるため、高い学習意欲も欠かせません。
6.キャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントは、クライアントが理想的なキャリアを歩めるようサポートを行う専門家です。
国家資格のひとつでもあり、職業能力開発促進法で内容が定義づけられています。
自分にどのような仕事が適しているのかわからない、自分の能力を活かせる仕事を知りたい、といった方は少なくありません。
このような方の相談にのり、キャリア形成のサポートを行うのがキャリアコンサルタントの仕事です。
なお、キャリアコンサルタントと名乗るには、国家試験に合格しなければなりません。試験は学科と実技で構成されます。
また、キャリアコンサルティング技能士と呼ばれる資格もありますが、こちらは実務経験が求められます。
7.Webコンサルタント
Webコンサルタントは、企業のWebに関する課題の抽出や改善策を提案する職業です。
たとえば、Webサイトの問題点を指摘する、SEOを強化して集客力を高める、Web広告をより効果的に運用できるようサポートを行う、といった業務が挙げられます。
インターネットやモバイル端末が普及した現代において、Web戦略は企業の行く末を決めるといっても過言ではありません。
Webコンサルタントが求められているのは、このような背景のためと考えられます。
Webコンサルタントには、Webに関する幅広い知識が求められるのはもちろん、SEOやWeb広告の知識も必要です。
8.労務コンサルタント
労務コンサルタントは、企業の労務に関するコンサルティングを行う職業です。
社会保険や雇用保険、年金などの労務トラブルを回避するために専門的なアドバイスを行うほか、労働環境の問題点を指摘し改善をサポートする、人事評価を見直すなどの業務も担います。
企業の労務管理がずさんでは、イメージや信頼の失墜を招くおそれがあります。
社員のモチベーションが低下した結果離職を招き、新たな人材もなかなか採用できない、といったことにもなりかねません。
このような事態を回避するため、労務コンサルタントが重宝されています。
労務コンサルタントとして活躍するには、保険や年金に関する知識をはじめ、法知識も求められます。
9.不動産コンサルタント
不動産に関する専門知識を活かし、クライアントにアドバイスを行う職業です。
不動産コンサルタントと名乗るには、準公的資格である「公認不動産コンサルティングマスター」の資格を取得しなくてはなりません。
不動産に関する悩みは、さまざまな法律や権利が絡むことも多く、何の知識ももたない方では解決が困難です。このようなシーンにおいて、不動産コンサルタントが活躍します。
たとえば、土地所有権の争いが生じているもののどうすればよいのかわからない、相続手続きをどう進めればよいのかわからない、といった相談にのり、適切に対処するケースが考えられます。
10.営業コンサルタント
営業コンサルタントは、企業の営業活動に関する課題の抽出や改善策の立案、成果につながる営業手法のアドバイスなどを行う職業です。
また、営業人材の育成やリード獲得、育成の仕組み構築まで手掛けてくれるところもあります。
SFAのような、営業支援ツールの導入に関するサポートも営業コンサルタントが担う業務のひとつです。
具体的にどう見込み客を獲得すればよいのか、リピーターがどうすれば増えるのか、といった相談にも応じ、適切なアドバイスを行います。
コンサルタントに必要な資質

ときにハードな要求をされることが多いため、体力や精神力に自信がある方に向いています。
また、発生している課題を正確に抽出し、具体的な改善策を立案するには、論理的な思考力が欠かせません。クライアントにわかりやすく解説するにも、論理的な思考力が求められます。
また、知的好奇心が旺盛な方は、日ごろからさまざまな情報を収集、吸収できるためコンサルタントに適しています。
とくに、移り変わりが激しい分野や業界に携わるのなら、日々の勉強や情報収集が欠かせません。
コミュニケーション能力も必要です。コンサルタントは、クライアントだけでなくチームメンバーともコミュニケーションをとりつつプロジェクトを進めなくてはなりません。
コミュニケーション能力が乏しいと、情報共有が円滑にいかず、プロジェクトを失敗に招くおそれもあります。
コンサルタントになるためには? スキルや資格は必須なのか
コンサルタントになるには、コンサルティングファームへの就職が一般的です。
一部の職種を除いて必須資格はありませんが、論理的な思考力やコミュニケーション能力、協調性などが求められます。
ファームによっては、業界に関する高度な知識や専門性が求められることもあるため注意が必要です。
絶対に必要な資格はないものの、取得しておくと就職に有利なものはあります。
たとえば、ITコンサルタントであればITコーディネータやITストラテジスト、経営コンサルタントや財務系コンサルタントなら中小企業診断士、公認会計士などが挙げられます。
まとめ
コンサルタントにもさまざまな種類があり、仕事内容や求められるスキルがそれぞれ異なります。
必要な資格はないものの、求められる資質はあるため、向き不向きも考慮したうえで転職を検討してみましょう。
また、コンサルタントへの転職に役立つ資格もあるため、気になる方は資格の取得も視野に入れてみるとよいかもしれません。
[文]CareerSupli編集部 [編集]CareerSupli編集部