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「自分のキャラ」を把握できているか?
「自分はどんなキャラか?」と聞かれて、他人にも理解できるように説明できるでしょうか。自分のキャラを自分で把握して、それを効果的にアピールしたり、使いこなせたりできないと、チームや組織の中でのポジションが曖昧になるため、言ってしまえば「使いにくい人材」になってしまいます。結果、活躍できる場や与えられるチャンスが限られてしまいます。
このような状況を打破するには、自分のキャラを見つけて、それを使いこなす必要があります。以下では物語の脚本(シナリオ)を作る際のキャラクターの作り方を下敷きとして、自分自身のキャラの見つけ方を解説するとともに、キャラを確立する方法についても紹介します。
脚本術に学ぶ「自分のキャラ」の見つけ方

小説のキャラクターはこうして作る
筆者はブックライティングの仕事も毎年何冊か担当しています。その中には物語形式の書籍執筆の仕事もあり、そこでは読者を惹きつけるキャラクターを作り出す必要があります。
その際には、そのキャラクターの名前や年齢、性別以外にも、家族構成や家族との関係性、好きな食べ物や好きな服の系統、風貌や生活レベル、食生活や配偶者の有無、出身地、出身大学、大学での専攻や交友関係、好きな本や座右の銘など、実に様々な要素について一つ一つ検討していきます。
なぜなら、こうした要素全てがキャラクターの言葉や行動に表れるからです。例えばトレーニングによって肉体を鍛えており、ヒゲは綺麗に剃られ、髪の毛や服にも気を遣っていることがわかるキャラクターは、一読して「几帳面」「神経質」「ストイック」といったキャラづけがなされます。すると必然的にセリフや行動にも、そうしたキャラが表れてくるのです。
大学時代に文学を専攻していれば、カバンの中には小説が入っているかもしれませんし、セリフの中にも文学からの引用などが入るかもしれません。逆に数学を専攻していれば、論理的で抽象的な言葉を使うキャラクターになるでしょう。
小説のキャラクターはこのように、キャラクターの持つ様々な要素を決めていくことで作られるのです。
「自分のキャラ」を見つける4ステップ
小説でのキャラクターの作り方は、実はそのまま自分のキャラを見つける方法としても流用できます。以下では4つのステップに分けて自分のキャラを浮き彫りにしていく方法を解説します。
1.まずは履歴書を作る
まずは最も基本的な要素を書き出すために、履歴書を作りましょう。ここで得られるのは、氏名や生年月日、住んでいる場所や出身地、出身校、職歴などの自分についての情報です。
2.その時々に考えていたこと、感じていたことを書き出す
次に履歴書の各項目について、以下のように掘り下げていきます。
・名前についてのコンプレックスはある?
・あるとしたらそれはなぜか?
・生まれてから世の中ではどんなできごとが起きてきたのか?
・それについてどう思うか?あるいはどう思ったか?
・なぜこの場所に住んでいるのか?
・(部活をやっていたなら)なぜその部活にしたのか?
・そこでどんな経験をし、何を思っていたのか?
・前職の会社を選んだ理由は?
・辞めた理由は?
・その会社ではどんな仕事を任され、どんな仕事を楽しいと感じたか? など
こうして自己分析を進めていくだけでも、「自分ってこういうキャラなのでは?」というものがおぼろげに見えてくるはずです。
3.「親」「友人」「恋人」との関係を分析する
さらにキャラを見つけるための情報を得るために、キャラ形成のうえで重要な役割を果たす人間関係について掘り下げていきます。物語が物語になるためには、キャラクターに悩みや葛藤がなければなりません。
なんの悩みも葛藤もないキャラクターは、読者から見れば影の薄い、いてもいなくてもいい存在になってしまうからです。アドラーは「人の悩みは全て対人関係の悩みである」と言っています。これはつまり、悩みや葛藤の根源は対人関係にあるということです。
ここでKWとなるのが、多くの人が濃い対人関係を持つ「親」「友人」「恋人」との関係性です。親と仲が良いならどういう風に良いのか、それはなぜなのか。恋人と長続きしたことがないのなら、その原因はどこにあるのか……そうしたことの分析によっても、自分のキャラが浮かび上がってきます。
4.2〜3で挙げられた内容の共通点を探していく
最後にぼんやりと形になってきた自分のキャラを明確にするために、ここまでに挙がった内容の共通点を探していきます。
例えば「自分の言いたいことを我慢せずに上司に伝えたところ、不興を買って会社に居づらくなった」「恋人との喧嘩の時に、理詰めで解決を図ろうとして相手を怒らせてしまい、別れることになった」といった過去があるのであれば、そこには「空気を読まずに言動を起こしてしまう」「無駄な忖度をせずに、迅速に物事を進められる」といった共通点を見いだすことができます。
自分の言動に共通する点を、ワンフレーズにしてどんどん書き出していくと、自分のキャラがかなり明確に見えてくるはずです。
キャラは「キャラに沿った言動」で確立できる

自分のキャラを見つけられたら、次はそれを固めていく作業です。物語などでは魅力的なキャラクターを「キャラが立っている」などと表現しますが、これはキャラがしっかりと固まっているという意味でもあります。
物語においてキャラを固めるための方法は一つ。それは「キャラに沿った言動をさせること」です。これは現実におけるキャラでも同じで、キャラに沿った言動をするだけで、自分のキャラを固めていくことができます。
もしかすると「でも会社(家)ではそんなキャラじゃないし……」と思う人もいるかもしれません。しかし今がどうかは大した問題ではありません。最初は確かに勇気がいるかもしれませんが、一度キャラを打ち出し、その後も同じキャラを続けていけば、自ずとキャラは定着していくからです。
ではどのような場面でキャラに沿った言動をすればいいでしょうか。以下では自分のキャラの3つの使いどころを紹介します。
見た目からキャラを出す
本来は几帳面な人でも、身だしなみに全く気を遣っていないと一見しただけでは几帳面に見えません。そのため几帳面なキャラを前面に打ち出したいのであれば、見た目にもキャラを反映させるべきでしょう。
シャツはきちんとアイロンをかけたものを着て、ネクタイもきっちり締め、靴も丁寧に磨いたものを履く。こうするだけで几帳面なキャラは強化され、固まっていきます。「見た目の変え方がよくわからない」という人は、自分のキャラと一致する人の見た目を真似するだけでもOKです。
仕事のやり方でキャラを出す
真面目で不器用なキャラの人が、要領の良い器用なキャラの人の真似をして変に手を抜いたり、小器用な仕事をしたりすると、たいていの場合失敗したり、上司にバレたりします。
もちろん効率的に仕事をしようとするのも大切ですが、効率的に仕事をすることと、手を抜いたり小手先で仕事をしたりすることは全くの別。キャラのブレを起こして「使いづらい人材」になるのを防ぐためには、真面目で不器用というキャラに沿ったやり方で効率を上げていくようにしましょう。
例えばヤマカンを使って「無駄そうな作業」を省くのではなく、仕事の工程を一から洗い出し、そのうち全体に最も影響のない作業を省くといった具合です。要領の良い器用なキャラの人からすれば「真面目だねえ」と言われるようなやり方こそ、真面目で不器用なキャラの人が目指すべきものなのです。
SNSでキャラを出す
SNSを通じてキャラを打ち出すのも効果的な方法です。例えば「毎週3回、必ず同じ曜日同じ時間にカレーの写真を投稿している」とか、「毎日必ず筋トレの動画を投稿している」とか、もしくは「ガジェットの新製品が出ると、必ずレビューをしている」など、同じ方向性の言動を繰り返していることをアピールする場として、SNSほど適した場所はないからです。
ただし注意したいのは、ここでキャラを固めるために好きでもないことを無理にやろうとしないことです。好きでもないことは続きませんし、なおかつ自分のキャラを捻じ曲げる行為でもあるからです。
キャラは変化させ続けるもの

「あの人は○○が好き/嫌い」
「あの人は△△な仕事が得意/苦手」
キャラを繰り返し使うことで固めていけば、周囲からも自分のキャラを認識してもらえます。すると自ずと好きなものやこと、得意で成果の出しやすい仕事などが自分のところに回ってくるようになります。そうすれば毎日も楽しく、かつラクになっていくことでしょう。
しかしキャラは、一度確立した後も状況に応じて変化させる必要があるのも事実です。例えば小説のキャラクターが最初から最後まで全く変化のないキャラだったら、物語は退屈になってしまいます。私たちも同じように、同じキャラを続けていると「自分はこういうキャラだから」と殻に閉じこもり、成長できなくなってしまいます。そうなれば毎日のハリが失われ、楽しくなくなってくるでしょう。
これを防ぎ、人生を充実させるためには、キャラを確立してから余裕が生まれてきたら「どんなキャラになりたいか」「どんな属性が欲しいか」などを考え直し、次のステップに進む準備をしていきましょう。そうして生まれる変化がドラマを作り出し、毎日のハリへとつながるのです。
