糸井重里、松岡修造、DAIGO・・・気になる3人の〝仕事の流儀〟を、どう見る?

66歳の糸井氏、47歳の松岡氏、そしてDAIGO37歳の心模様

全く異ジャンルの3人が時を同じくして、自身の生き方について下した決断や、パフォーマンスが話題になっている。

メディアは「人生を大きく変える決断」と興奮気味に伝え、彼らの心模様に言及している。それぞれ3人の思考回路路は異なるが、「時代に背を向ける」のか「時代に寄り添う」か。それとも「時代と寝る」のか・・・興味深い。

■糸井氏は突然の「引退宣言」。「こんな作品が売れるはずはない」と、マーケッティングの発想で作業が進められるクリエィト現場や作り方への抵抗なのか。
■松岡氏は「元気」のパフォーマーとして歌手デビュー。
■DAIGOは24時間TVのマラソンランナーを決断。恋人・北川景子とのサプライズ結婚まで囁かれている。

スターコピーライター糸井氏の「引退」は必然だったのか

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「おいしい生活」  「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです」
「本当の主役はあなたです」 「奇妙でおもしろい。そして、せつない。」

矢沢永吉写真集のポスター「よろしく」はいまも人気コピーで、糸井氏のコピーは言葉の組み合わせ方、ニュアンスづけのセンスが抜群。一見スマートに見えるが、ウィットと茶目っ気のあるスタイルには、糸井氏独特の感性が伺える。

1980年代は糸井氏をはじめ仲畑貴志氏、林真理子氏、中島らも氏らスターライターを輩出。活動はコピーに限らず、「文化の担い手」と評価された。

そして糸井氏は「朝日新聞デジタル」版のインタビュー(5/25付)で突然「引退」宣言。コピーライターという職業は「死んだのか」とさえ言われた。

限界を感じたのです。自分が薦めたい商品ならいい。でも、もっと改善できるはず、なんて思ってしまうと、納得して商品を語れない。だからコピーライターはやめました。よくないものをコピーで売るなんて、やめたほうがいい(抜粋)。

当然、糸井氏の突然の「引退」宣言に賛否や惜しむ声が聞かれる。ただ、糸井氏が「引退」と引き換えに、業界や周囲に投げ掛けた「言葉」の意味は大きい。

糸井氏の〝憂い〟はなぜか、なかにし氏の歌謡曲衰退論と重なる

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ジャンルは違うが作家・作詞家のなかにし礼氏が「歌謡曲衰退の理由」を日経文化面で語っている。

その中で糸井氏が引退を決意した「憂い」と重なる部分がある。なかにし氏の言葉は極めて示唆的でさえある。

それは数々のヒット作品を手掛けている作家同志の〝共通項〟かも知れない。

今はこんな歌が売れるはずというマーケッティングの発想で作られていて、歌が世にへつらい、世になびくから、世につれない。歌が個体として確立していないと、世にのみ込まれて、時代の中に溶けてしまう。音楽界が複雑化し、できあがった作品は平凡になる。その無限の繰り返しの結果が今ですよ(抜粋)

今回の「引退」宣言は東京糸井重里事務所の社長として自社の商品について、「あなたは売る名人ですか?」のインタビューの中で、飛び出したもの。

これまで時代と二重写しになったり、一歩リードしたり・・時代や人々とのヒューマンな関係性を大事にしてきた秀逸なコピーライターは、あえて自身の手法を貫き、立ち位置にこだわることを止めたのだろうか。

ウエブサイト「ほぼ日刊サイト」での糸井氏の発信力は、多ジャンルに及ぶ。

歌手デビューして「元気」と「出来る」を連呼する松岡氏の熱量

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画像出典:twitter

松岡修造氏は「時代」をいまジャンプしている。しかもテンションが高い。

松岡氏が海外に行くと日本の気温が〇度変わる、と都市伝説にもなっている。

松岡氏の発信の源は「元気」「出来る」などの直截な言葉に集約され、全身を駆使してパフォーマンスを展開。日めくりカレンダーは人気商品になり、近著「解くだけで人生が変わる!修造4 ドリル」では、「毎日が楽しく充実した人生に変わる!」がコンセプト。

その松岡氏は先ほど、某炭酸飲料の応援団長に起用され、自ら「歌っていいですか」と志願し、「元気応援SONG」の作詞までやってのけた。

頭に鉢巻、スポーツウェアで跳ね回り、飛び回りながら
「あつくなければ人生じゃない」「出来る、出来る!君なら出来る!!」を連呼。
太陽神・修造をいかんなく発揮しているのだ。

編集者によれば、松岡氏はポジティブで熱い男のようなイメ―ジだが、本当は心優しく消極的。そんな彼が後悔しないで生きるために、自分を鼓舞しようと発してきた言葉を集めたという。

■「崖っぷちありがとう! 最高だ!」
■「よーし、絶対に勝つ。勝ったらケーキだ」
■「悩みん坊、万歳!」
■今日からおまえは富士山だ!」

富士山まで飛び出すとシュールな世界だが、CM起用社数ランキングでは常に上位。大手生命会社の「理想の上司」アンケートでもトップクラスに位置し、好感度抜群だ。東京オリンピックを前に各テレビ局からは熱視線を送られている。

なぜ、いま修造なのか?
メディア評論家はこう分析する。

最初は熱血だけどトンチンカンというイメージだったが、彼の吐く言葉はブレない。しかも真剣に「元気」を訴えている。熱血漢でしかも人柄の良さが加わり、いまのエンタメ界で元気キャラと、パフォーマンスが出来る人は修造氏しかいない。若者たちが彼に惹かれるのはボスではなくリーダーだから。ありきたりのHow to本より、松岡修造自身が生きた教材というメリットは大きい。

24時間TVマラソンの出場を決めたDAIGOと周囲の思惑

「24時間官マラソンランナーとして走ります」「ロックに駆け抜けます!」

DAIGOが日テレ「24時間テレビ」のチャリティーマラソンランナーに決定した。19日に番組中に公開オファオファーを受け、家族や事務所関係、ロック仲間などと相談した。

27日、熟慮を重ねた結果、生放送で「HMで。走り、ます」と宣言。その顔は青ざめ、目はかすかに充血。DAIGOの決断までの心の揺らぎが伺えた。

芸能記者からは、恋人の北川景子に相談したのだろうか・・とのささやき。

放送は8月22日・23日。スタートの22日は奇しくも北川の29歳の誕生日。サプライズ発表があるのか、「日テレも視聴率アップと話題作りに絶妙な人選をしたもの・・」との声。局内もハプニングに満ちていると興奮気味。

「芸能ニュースって、こうやって仕掛けられたり、組み立てられたり・・なかなか関係者はしたたか。懸念材料はDAIGOが長距離を走れるか。いままでの資料を見てもスポーツとは縁がなさそう。修造なんかに生応援して欲しいもの」

芸能記者に限らずエンタメ関係者やファンの、祭り状態の興奮が高まっていく。

この間、様々なドラマやエピソードの取材や組み立てが行われ、24時間TVを軸に企画立案やプランニングが実践され、
局の総力を挙げて今年のテーマ「つなぐ~時を超えて決めました」が真夏を彩ることになる。

DAIGOの決断と挑戦。37歳のロックンローラーは何を訴えるか・・・

3人のメッセ―ジと決断が喚起するもの

糸井氏、松岡氏、DAIGO。活躍のステージが異なる3人の決断やメッセージが交わることはないだろう。

しかし、表現者としてのナイーブさと表現力。彼らはそれぞれに熱いファンや支持者がおり、絶えず「何を発信するか」「どんなパフォーマンスを見せてくれるか」と、期待値は高い。

3人に接点はないが、偶然にも同じ時間軸で決意をしたことは、興味深い。それぞれ決断するまでに迷いもあっただろう。その思いに触れることは何かを作り出そうと頑張っている人にとっては、新な刺激になるかも」(メディア評論家)

彼らを取り巻く人たちは、今回の3人の決して軽くない言葉に、自らの生き様や仕事の流儀を重ね合わせることだろう。

[文]メディアコンテンツ神戸企画室 神戸陽三 [編集]サムライト編集部