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人生を変える読書術を手にいれよう
「今まで色々な本は読んだけれど、一向にタメになっている気がしない」そんなモヤモヤを抱えている人は、本の読み方を間違えているのかもしれません。
「アマゾンのカリスマバイヤー」と呼ばれ、日刊書評メールマガジン「ビジネスブックマラソン」の編集長を務める土井英司さんは著書『一流の人は、本のどこに線を引いているのか』の中で、「1冊の本にたった1本の線が引ければ、本の価格を十分回収して余りある成果になる」と書いています。
「数千行の文章の中にある1行の価値ある文章に出会うために本を読む」これが土井さん流の究極の読書術です。ここではこの読書術を身につけるための、基本的な考え方について解説します。
読書に「面白さ」は要らない
読書で本当に人生を変えたいのであれば、「面白いか、面白くないか」で本を選ぶのをやめるべきです。土井さんは読書を「投資」と「消費」に分類し、ビジネス書を前車に小説などを後者に位置付けています。
私たちはショッピングや美味しいディナーなどで「消費」をする時、自分が心地よくなるか、楽しい気持ちになるかを基準にアパレル・ショップやレストランを選びます。一方、どこに投資をするかを決める時に最も優先される判断基準は「リターンがあるか、ないか」のはずです。
したがって「消費」の読書、つまりエンターテイメントを求めてする読書は、自分の好みでして構いません。しかし自分の仕事やライフスタイルを変えるという「投資」の目的で読書をする場合は、内容が面白いかどうかは関係なくなります。
自分の価値観や世界観が変わり、次のアクションのヒントになるかどうか。それがビジネス書を読む時、そして選ぶ時の唯一の基準となります。
「自分の価値観や世界観が変わり、次のアクションのヒントになるかどうか」という意味では、本を読むのではなく一流の人にたくさんあって直接話を聞くのが一番です。しかし普通、そのような機械に恵まれる人は稀です。
ところがビジネス書であれば、1,000円〜2,000円ほど支払えば一流の人の話を美味しいところだけ、しかも体系的に知ることができます。だからこそ「究極の読書術」は「人生を変える読書術」なのです。
やってはいけない3つの「読書」
次に「本を読むぞ」と意気込んでいる人が、ついついやりがちな間違った本の読み方を3つ紹介します。これらの読書を続けているうちは、読書で人生を変えるのは難しいでしょう。
●必ず最初から最後まで読む「バカ正直読書法」
小説や学術書など、一部の内容が抜けてしまうと全体の理解に影響が出るような場合は別として、ビジネス書の場合は最初から最後まで通読する必要はありません。
経営学の祖とされるピーター・ドラッカーの『マネジメント』はビジネス書の古典ですが、全ての内容を読んだからといって役に立つわけではありません。むしろ今自分が必要だと感じるところだけを部分的に読む方が記憶に残りやすいため、身になります。
●自己肯定のために読む「自己陶酔読書法」
自分の意見を肯定しているような「好きな著者の本」ばかりを読む、あるいは「その通りだ!自分は正しかったんだ!」と自分を肯定している箇所に線を引く。こうした自己陶酔読書法は「消費」の読書ならばともかく、「投資」の読書においては何の意味もありません。
苦手な著者や分野の本を読み、自分とは異質なものと触れること。自分を否定していたり、嫌悪感さえ感じても「どこか引っかかる一文」に線を引くこと。それを習慣化しなければ読書で人生を変えることはできません。
●速読したり読書目標を立てたりする「内容希釈読書法」
付け焼き刃の「速読術」や、読んだ本の数にとらわれて読む本やその内容に重きを置かない内容希釈読書法も、やってはいけない本の読み方です。
土井さんは1日に3冊の本を読むと言います。しかも1冊にかける時間は平均20分。これだけを聞くととんでもない速読術の使い手だと思うかもしれませんが、土井さんの場合は速読しているのではなく「必要なところを読んでいる」だけです。
必要かどうかを判断するにはその本の分野にある程度精通している必要があります。これは膨大な本を読んできた土井さんだからこその技なのです。
読書目標を立てるとついつい「本を処理する」ことに夢中になり、内容がおろそかになりがちです。「投資」の読書の目的は、自分の価値観や世界観を変え、次のアクションのヒントを得ること。したがって読書目標を立てて読んではいけないのです。
「人生を変える1行」の探し方
やってはいけない本の読み方を理解したら、いよいよは土井さんが実践する「究極の読書術」、すなわち「人生を変える1行」の探し方を身につけましょう。「人生を変える1行」の探し方のキーワードは「部分」「原因」「背景」の3つです。
まずは「部分」についてです。「人生を変える1行」を見つけ出すには手当たり次第に読んだり、一冊の本を網羅的に読むのではなく「必要な本・部分だけ」を読む必要があります。
そのために必要なのが自分が成長するために読むべき本のジャンルを分類することです。例えば土井さんは一流を目指すビジネスパーソン向けに、次の8つの分類を提示しています。
1.会計、ファイナンス
2.戦略
3.マーケティング
4.オペレーション
5.マネジメントとリーダーシップ
6.商品開発
7.統計
8.経済
引用『一流の人は、本のどこに線を引いているのか』p81
こうした分類をしたうえで、「このジャンルの本(もしくは内容)を読むんだ」と目的意識を持って読めば、ビビッとくる1行がより見つけやすくなります。また自分が苦手なジャンルの本や本の内容を集中して読めば弱点を克服できますし、得意なジャンルを読めばさらに磨きをかけることもできます。
次は「原因」についてです。土井さんはビジネス書を読む時、常に「結果」ではなく「原因」に注目せよと言います。例えば「○○社は業界No.1シェアを誇る」というところに線を引いても、自分にとっては何の役にも立ちません。
一方、○○社が業界No.1シェアを獲得するに至った戦略や開発、人材教育などの「原因」は、応用できる可能性があります。したがって「人生を変える1行」は「原因」の中にあるのです。
最後は「背景」についてです。何十冊、何百冊と読んでいると知っている内容ばかりだったり、期待していたものとは違う内容だったりすることが必ず出てきます。しかしそこで「騙された」「損をした」と見限ってしまってはいけません。
そういう場合はその本が持っている背景に思いを巡らせるのです。「帯文が魅力的だった」「タイトルに惹きつけられた」「著者のプロフィールで期待感を持った」など、どうして自分がその本を買うに至ったのか、「本の外側」を読みましょう。とりわけ専門家たちが「内容がない」と批判するベストセラー本ほど、そうした「本の外側」に思わぬ学びが隠れている可能性があります。
「人生を変える1行」を見つけ出そう!
土井さん流の読書術は、「本は通読しなければならない」「できるだけ多くの本をできるだけ速く読まなければならない」といった読書の呪縛ともいうべきものから、私たちを解き放ってくれます。
「1行の価値ある文章」さえ見つけ出せれば、後の部分は無駄になってもかまわないのです。ここで紹介した本の読み方を意識して手元にある本を読むもよし、より具体的な土井さん流の読書術を学ぶために、次の1冊に『一流の人は、本のどこに線を引いているのか』を選ぶもよし。ぜひとも自分にとっての「人生を変える1行」を見つけ出してください。
参考文献
『一流の人は、本のどこに線を引いているのか』
