世界一周の旅を実現した3人のビジネスパーソン

旅で人生は変わらない?

「旅で人生が変わったとかいう人は中身がゼロなのです」

人気ブロガーである、はあちゅう(伊藤春香)さんが3月中旬にこのエントリをブログで公開し、ネット上で物議を醸しました。

エントリ内で、はあちゅうさんは次のように発言しています。

別にエアーズロック見ても (中略) ガンジス川に飛び込んでも、

「感動」はするけれど 人生観がそこまで変わったりはしません。

だから、そういうことで 人生観変わりましたとかって言ってる人は 人間として薄っぺらいと思う。

引用元:はあちゅう公式ブログ–旅で人生が変わったとか言う人は中身がゼロなのです

自身も世界一周をしているはあちゅうさんの実感が込められた、この言葉。「いつかは今の会社を辞めて、夢見た世界一周の旅に……」と考えている方にとっては気になる発言ではないでしょうか。

職を捨て、多くのお金を費やしてまで、世界一周に行く必要があるのか。世界の映像ならいつでも見られるのに、あえて長い旅に出て何になるのだろう。帰ってきて、自分の居場所は日本にあるのか。

今回は、そんな不安を抱える方のために、実際に世界一周の旅を終えた3人のビジネスパーソンにお話をうかがってきました。

ベンチャー経営者 Sさん–幸せの閾値が下がった

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職業:ITベンチャー経営
当時の年齢:30歳
世界一周の期間:1年半
訪れた国:南米を中心に52か国

●世界一周するまで

新卒で入った大手のネット広告会社に6年半勤めて、旅に出ました。

世界一周を決めたのは入社5年目。理由は、シンプルに世界が見たかったというのと、人間っていつ死ぬかわからないと思ったからですね。ちょうどその時、仲の良かった友人、そして好きだったサッカー選手が立て続けになくなって。いつ死んでも後悔しないように生きようと思ったのがきっかけです。

職を辞めることへの不安はなかったですね。5年間でビジネスマンとしてのベースができたという自信があったので。

●世界一周した後の過ごし方

戻ってきて1ヶ月くらいは日本に馴染むのに時間がかかりましたね。旅してるときは平和とか人種差別、宗教戦争とかが身近にあって、そういったことを考えていたんですが、日本に帰ってきたら、もっと小さなテーマを考えなくてはならなくなった。

それに、世界一周から帰ってきた時、僕の資産ってマイナスだったんです。貯金を全部使い切って、借金して帰ってきたから。で、帰って2ヶ月目くらいから週3くらいでアルバイトをしようかなと探していました。

ちょうどその時、大学からの友人であり、前の会社でも付き合いのあった友人が起業しようとしているのを知って。それで、一緒に会社をつくってきました。

●世界一周して人生は変わりましたか?

人生は、変わりませんでした。

ただ、ひとつ変わったと言えるのは、幸せの閾値(しきいち)が下がったということ。幸せを感じる値って人それぞれだと思うんです。家族と過ごせることが幸せなのか。職があることが幸せなのか。今日生きていけることが幸せなのか。

世界一周をしたことでその閾値がすごく下がって、小さなことにでも喜びを感じるようになりましたね。

通訳 Mさん–どこに行っても、実は日本人と変わらない

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職業:通訳
年齢:32歳
世界一周の期間:3か月
訪れた国:20か国ほど

●世界一周するまで

大学を卒業したあと外資系メーカーに就職して、システムを管理する仕事をしていました。もともと英語に関心があり、留学経験もあったので、英語を使える仕事を選びました。

ただ、「もっと人と関わって仕事をしたい」と思い、仕事をしながら通訳の学校に通い始めました。その後、通訳ボランティアとしてピースボート(世界一周クルーズを行う非政府団体)に参加して世界一周を果たした、というかたちになります。

●世界一周した後の過ごし方

帰ってきたら人材会社に就職して、通訳になりました。海外企業との交渉や、契約に関するやりとりを担当しています。

●世界一周して人生は変わりましたか?

難しいですね。ただ、一つ感じたのは、人間としての普遍的な部分はどこに行っても、実は日本人とあまり変わらないということですね。日本の常識が通じないことももちろん多いのですが、現地の人が私に気を遣っていることが分かることもあって。外国の方は日本的な気遣いが出来ないと言われることがあるけど、そんなことないんだな、と。

そういった部分も知ることができ、英語力も身につきましたし、通訳としてどんな方にも柔軟に対応出来るようになったと思います。

金融関係 Tさん–普通では出会えないような交友関係が出来た

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職業:金融関係
年齢:21歳
世界一周の期間:半年
訪れた国:30か国以上

●世界一周するまで

私が旅をしたのは在学中なので、普通の大学生と同じように授業に行き、サークルや学生団体に入り、アルバイトをする生活でした。

世界一周に踏み切った直接的な要因としては、「周りに世界一周する」と宣言していたからですが、本来の目的は外国をたくさん見ることでした。「世界一周と言った方が説明が簡単になるから」という打算のもとで一周しただけで(笑)。

●世界一周した後の過ごし方

大学に戻り、卒業を間近に控えた同級生たちと毎日のように遊んだり、飲んだりしながら、普通の大学生に戻りました。その後、就活して今の仕事についています。

●世界一周して人生は変わりましたか?

良くも悪くも変わったと思います。プラスの要素としては、普通に生活していては出会えないような交友関係が出来たことと、自分でも想像だにしていなかった大冒険が出来たこと。マイナスの要素としては、少し時間にルーズになったことと、周りに何を言われても動じないマイペースさが身についてしまったことですね。

世界一周も、人生という旅の一部

ヨーロッパの大都市。アジアの少数民族。北米の自由な空気。南米の世界遺産。アフリカの大自然。オセアニアの太陽……。

旅に出て、世界に触れても、私たちはまた日本での生活に帰ってきます。そのとき、きっとギャップがあるでしょう。職もなく、お金も使い、人によっては家まで引き払っているかもしれません。その「リスク」をとってまで世界一周の旅に出ることを決断するかどうかは、あなた次第です。

ただ、ひとつ言えるのは、今回紹介した3名のビジネスパーソンは、誰も旅に出たことを後悔していませんでした。人生はよく旅に例えられますが、世界一周の旅も人生という長い長い旅の一部。そう考えれば、少し寄り道として日本を離れることへの躊躇もなくなることでしょう。

Career Supli
「世界一周の旅」で変わるのは、人生か、価値観か、自分の性格か。人それぞれでしょうが、それは旅に出た人自身にしかわからないことです
[文・編集]サムライト編集部