転職した方がいい?人工知能時代のビジネスマンの生き残り方

AI時代がやってきた!

人工知能(artificial intelligence、以下AI)はこれまで数々の映画で取り上げられ、観るものに夢と希望を与えてきた技術です。しかし今やこのAIという技術は夢でなくなり、場合によっては希望ですらなくなっていることをご存知でしょうか?ここではAI研究の最前線をレポートするとともに、AIが労働者として市場に参入してきた場合に、私たちビジネスパーソンが生き残るための方法を考えます。

AI研究の最前線!機械はここまでできるようになる

Always professional

●AIは、会議を支配する。

ビジネスパーソンが業務時間の多くを費やす会議。ビジネスを機能させるためには必要不可欠な会議ですが、その時間は必ずしも有意義とは言えず、無駄な会議が多いのも事実です。

企業向けの事務用品を扱うイトーキ(大阪)が現在研究を進めている「AIが組み込まれた会議」では、議論の進行を邪魔するコミュニケーションや議題に対する認識のズレをAIが排除し、ファシリテーターなどの議論の活性化を担います。

音声認識機能を使って発言者の言葉をもとに新しいアイディアを提出したり、専門用語が発言されればウェアラブル端末を使って説明してくれ、根拠の弱い発言には根拠データを提示する。この時のAIはサポート役というより、会議の支配者です。いつか「AIがいなければ会議が成立しない」世の中がやってくるかもしれません。

●AIは、診察する。

AIは医療業界にも今後大きな変化をもたらすとされています。それはディープラーニングという機械学習技術が要因です。2015年初頭に米マイクロソフトや米グーグルが開発したAIは、この技術を用いて人間の画像認識能力を超えました。これを応用すると人間の医者では見逃してしまう可能性のある病気も、AIなら膨大な数のデータを参照することで瞬時に見つけることができます。

東京大学医学系研究科医療情報経済学分野の大江和彦教授は、人工知能が一度診察を行い、異常があった場合にのみ人間の医者がダブルチェックする世の中が、今後10〜20年のうちに訪れるという予測までしています。診断能力にだけ関して言えば、今医者の能力差は限りなくゼロになっていくでしょう。

●AIは、自己学習する。

米グーグルが買収したAI開発ベンチャー「DeepMind(ディープマインド)」が開発した「DQN(Deep Q-Network)」は、自分でいちからゲームをプレイして上達していくという自己学習能力を備えています。ディープマインドはデモンストレーションとしてこのDQNにインベーダーゲームやブロック崩しをプレイさせていますが、後者に関しては2時間程度でゲームをほとんどマスターしてしまうのだとか。

同社創立者であるデミス・ハサビス氏はこのDQNが「取り扱うデータを株式市場のデータに変えることも可能」だとコメントしています。AIがあればデイトレーダーに一瞬でなれる。そんな時代はすぐそこまで来ているのかもしれません。

AI時代になると「機械でもできる仕事」が危ない!

Customer Service

●すでに始まっている「AIによる人力の駆逐」

無限の可能性を秘めたAIはすでに日本の企業でも導入され、少しずつ人間の仕事を奪い始めています。三井住友銀行は2016年からコールセンター業務にIBMのAI「Watson」を導入するべく、2015年9月から実用検証をスタートさせました。

アサヒビールはNECの「異種混合学習技術」を導入。この技術はこれまでベテランでしかできなかった新商品の需要予測を誤差1%以内でやってのけてしまうだけでなく、予測の理由の説明もできるのです。

●英オックスフォード大が明かす!「こんな仕事は危ない」

英オックスフォード大でAI研究を行うマイケル・A・オズボーン氏が研究員のカール・ベネディクト・フライ氏。彼らが発表した「雇用の未来ーコンピューター化によって仕事は失われるのか」という論文によれば、あと10年で多くの仕事がコンピューターによって奪われるのだそうです。

金融・会計・法務の仕事に「消える」とされる仕事が多く、職人的な仕事やいわゆるホワイトカラーの仕事もコンピューターに取って代わられる可能性が高いとされています。「機械でもできる仕事」はそう遠くない未来に消えて失くなる。これはビジネスパーソンとして知っておくべき厳しい現実です。

AI時代を生き抜くために必要な3つのヒント

ひょっとすると自分の仕事がなくなるかもしれない。そのような状況にあって指を咥えてみているわけにはいきません。以下ではAI時代を生き抜くために必要な3つのヒントを紹介します。

●AIを使いこなせ

「人間にしかできない仕事は?」という問いに対し、国立情報学研究所教授・新井紀子氏は「人工知能を使いこなすことによって成し遂げる仕事だ」と言います。「機械以上に高度な判断が下せる人々は生き残る」と言うのはビッグデータ分析などを手がけるメタデータ創業者・野村直之氏。現在実現可能とされているAIは、より複雑な計算が必要な「状況理解」「筋道理解」といった情報処理を苦手としています。逆に言えばそういったスキルを身につけていればAI時代を生き抜ける可能性があるということです。

実際先ほど取り上げた英オックスフォード大の論文では、そういった高度な情報処理が必要とされる仕事はコンピューターに代替されにくい職業としてリストアップされています。単純な情報処理の道具としてAIを使いこなす。そのレベルにある者だけがAI時代に生き残れるのかもしれません。

●「ヒトの脳」の可能性

「状況理解」「筋道理解」などの高度な情報処理をAIが苦手としているという事実は、「ヒトの脳」の可能性を信じるということでもあります。心や自意識、価値観や人生観などについて、人間は今まで様々な方向から考えてきました。現在では脳科学や神経生理学、認知科学に言語学、心理学といった学問分野で考え続けています。しかしそれでもなお、これらを科学的に解明するには至っていません。

プログラムによって心や自意識などを完成させるには、まずそれらの仕組みを解明する必要があります。私たち「ヒトの脳」には、まだまだAIにも手の届かない場所が間違いなくある。AI時代を生き抜くために知っておくべき事実の1つです。

●常に「なぜ?」と問い続ける

野村直之氏はAI時代を生き抜く方法として、常に「なぜ」と問い続けることを挙げています。先ほども述べたようにAI技術は「心」「自意識」「価値観」「人生観」を与えるには至っていません。インプットされたデータに基づいて行動する限り、AIは「なぜ?」という問いを発することができないのです。

リクルートマーケティング社長の山口文洋氏はAI時代の教育現場を知識を与える場から、知恵を育む場に変えると推測しています。いわゆる「詰め込み型教育」では圧倒的な知識量を持つAIに人間は太刀打ちできません。AIと人間に差をつけるのは、知識を使いこなす知恵の有る無しなのです。そのために、「なぜ?」と問いかける。この疑問の言葉はAI時代の人類にとって、重要なキーワードになるかもしれません。

消費をするだけの人間になるな

情報を受け取ることで抜群のスキルを発揮するAIに対抗するために必要なのは、「なぜ?」という問いです。しかし与えられた仕事をするだけの人間、与えられた情報やサービスを消費するだけの人間にはこの「なぜ?」という問いを持つことはできません。受け身ではなく、自ら選び取る姿勢。それが身についている者だけがAI時代を生き抜くことができるのです。

Career Supli
文章を書けるAIも出てきているので人事ではありません。複数の仕事を持つのも生き残るための戦略の1つになると思います。しぶとく生き残りましょう。
[文]鈴木 直人 [編集] サムライト編集部