プロライターも実践する基礎知識!「読みやすい文章」の絶対的ルール10選

広範囲でのリモートワークの普及やIT化により、「文章を書く」場面が一段と増えているはず。それに比例して、コミュニケーションミスや文章での伝え方に頭を悩ませる場面が増えているかもしれません。

そんな悩みを解消に導くのが、プロのライターや編集者も実践する読みやすい文章を書くためのテクニックを学ぶこと。アマゾンランキングでベストセラー1位を獲得した書籍『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』では、文章術のベストセラーに共通するテクニックをランキング形式で紹介しています。

今回は、本書に書かれた1位〜10位のテクニックの内容を、商業用の文章を書き始めて7年目の筆者の経験も織り交ぜてご紹介します。

1位「文章はシンプルに」

筆者が駆け出しライターの頃、もっとも意識していたことが「シンプルな文章を書くこと」でした。書籍のなかでは「1文の長さは60文字以内を目安に」「ワンセンテンス・ワンメッセージ」と紹介されています。

1文のなかに複数の要素を盛り込むと、もっとも伝えたいことがぼやけてしまい、文章のリズムも悪くなります。とくにテクニックが身についていないいうちは長文を避け、簡潔な文章を心がけるのがおすすめです。

削ったほうがいい言葉としてよく指摘されるのが、「そして」や「また」といった接続詞、主語、形容詞など。そのほかにも「〜することができる」を「できる」にする、「という」を削除する等もよく指摘されるポイントです。「なくても意味が通じる言葉」は、どんどん削除してみてください。驚くほど文章がスッキリします。

2位「文章の型に当てはめる」

本書2位では、以下3つの「文章の型」が紹介されています。

1.逆三角形型……結論→説明
2.PREP(プレップ)法……結論→理由→具体例→結論
3.三段型……序論→本論→結論

ビジネスメールやプレゼンテーションなど、ビジネス文書・実用文向きなのが「逆三角形型」と「PREP型」。Web記事やプレスリリースの執筆を本業とする筆者も、結論を冒頭で述べるパターンが多いように思います。たとえば、「〇〇社の△△というアイテムが前年比10倍の売れ行きだ」と結論を冒頭で伝えたあと、その背景をひもといていく……など。

一方、論文やレポートは「三段型」を基本の型としています。冒頭で「扱うテーマ」と「問題点」を提示し、結論を最後に示します。これらの型の利用に加えて、長文になる場合は細かい構成を立ててから文章を書き始めると、書きながら悩む時間が減るはずです。

3位「見た目を整える」

「文章の見た目」は、プロライター・編集者も非常に気を配るポイント。同じ内容でも見た目を整えるだけで、格段と文章が読みやすくなるためです。

ここまでの文章を見ていただくと、ところどころに「行間」が入っているのがわかると思います。一般的にWeb記事では3〜4行ごとに行間を入れると読みやすいと言われており、多くの記事で適度な行間が入っています。

漢字・ひらがな・カタカナのバランス、句読点の位置も重要なポイント。目安としては、漢字を2〜3割に調整するとテンポよく読みやすいようです。本書には「ひらがなで表記したほうが読みやすい言葉」の一覧も掲載されていますので、参考にしてみてください。

4位「推敲する」

「推敲」は、読みやすい文章を書くにあたり欠かせないテクニックで、文章を何度も練り直して改善していくことを指します。推敲することで誤字脱字をなくすだけでなく、違和感がある、情報があやふや、わかりにくいといった不十分な文章の修正など、見違えるように読みやすい文章に変わります。

主な推敲の方法は、「時間を置いて読み直す」「プリントアウトして読む」「音読する」「他者に読んでもらう」の4つ。時間に余裕があれば1日置いて読み直し、その後も何度か重ねると良いでしょう。難しい場合は他者の視点を入れるのも有効的。わかりづらいところを率直にフィードバックしてもらってください。

5位「わかりやすい言葉を選ぶ」

本書では、「中学生でもわかる言葉」「日常的に使われている言葉」などを使うと良いとされていますが、現役ライターの視点でお伝えすると、この文章を「誰」に向けて書くのかによって、「わかりやすさ」の基準は変化します。

とある分野の専門的な技術を持つ人に向けた文章なら、業界の専門用語を説明なしに使っても構いません。一方、消費者に向けた文章なら万人に伝わる耳慣れた言葉を使ったほうが、言いたいことが伝わりやすくなります。

また、基準があいまいな表現にも注意を払う必要があります。「大きい」は身近な言葉ですが、人によって捉え方があいまいであり、誤解を生む可能性も。「東京ドーム3個分の大きさ」など、具体的に伝わる基準を添えると一気に伝わりやすくなります。

6位「比喩・例え話を使う」

一般的な文章で使いやすい比喩・例え話として、直喩(ちょくゆ)・隠喩(いんゆ)・擬人法(ぎじんほう)の3つが本書で紹介されています。

直喩は、「まるで〇〇のような」といった説明をつけ加える比喩で、「彼女はひまわりのように明るい人だ」のように使います。隠喩は、「〇〇のような」等の説明をせずに直接的に例える方法。「あの人はガラスの心をもっている」は隠喩の表現で、「繊細な人である」ことを「ガラスの心をもっている」と例えています。これら比喩は意味を強調し、読み手がイメージしやすくなる等の効果があります。

擬人法は人間ではないものを人間の言動に例える方法で、「うなるような風」「泣き出しそうな空」など。現象を生き生きと描写する効果があります。隠喩は難しい方法であるため、まずは直喩・擬人法を使いこなせるように練習すると良いでしょう。

7位「接続詞を正しく使う」

接続詞は前の文と後ろの文をスムーズにつなぐ役割をもち、適切に使うことでスッと理解できる文章になります。

接続詞をどれくらいの頻度で使うべきかは難しい問題で、プロのライターでも悩む場面が多々あります。本書では、プロのライターや編集者の間でも「接続詞を多く使うべき」と主張する人と、「接続詞を減らすべき」と主張する人がおり、意見が分かれていると書かれています。筆者の周囲では後者を主張する声が多く、接続詞を減らすことで「文章がスッキリする」「文章の勢いや流れをさえぎらない」などのメリットがあります。

文章を書き慣れていない人は接続詞が増えがちな傾向があることからも、接続詞を減らすことに注力するのがおすすめです。「だから」「そのため」などの順接や「また」「なお」など、関連性のある文章を追加したいときの接続詞は、なくても意味が通じることが多くあります。推敲しながら本当に必要な接続詞かどうかを再考してみてください。

一方、「しかし」「けれども」「だが」といった逆接の接続詞は、なくすと意味が伝わりづらくなることがあるので、むやみに削除しないよう気をつけましょう。

8位「メモやノートを活用する」

本書では、書くための材料集めのプロセスにおいて、メモやノートを活用する重要性が示されています。アイディアや思いついたことは「メモ」に、思考は「ノート」に書き溜めると良いとのこと。

本書では手書きの情報整理方法が勧められていますが、効率化を図るならスマートフォンやパソコンの活用がベターでしょう。その日の気づきや読んだ本で印象的だったこと等はスマートフォンのメモに、深く考えたことはドキュメントやテキストに残しても良いでしょう。

筆者は企画案が浮かんだらドキュメントに残すか、自分宛てにメールを送るようにしています。企画立案や執筆の前には入念なリサーチもするため、重要な部分をコピペして一つのドキュメントにまとめるといった準備作業を行います。

どのくらいのボリュームの文章を書くかにもよりますが、書くための「情報」をあらかじめ集めてから執筆に取り掛かると、執筆に集中しやすくなります。

9位「正確な文章を書く」

筆者がプロのライターとして文章を書くようになって痛感したのは、自分が「今までいかに正確な文章を書いていなかったか」でした。複雑な内容や長文になるほど、抜け漏れがなく、正しく伝わる文章を書くのは技術を伴います。文章の表現うんぬんの前に「必要な情報」が揃っているかの確認はマストでしょう。

そして、もう一つ重要なのが文章の基本ルールを守ること。表記を統一する、会話は「」(かぎかっこ)、作品名等は『』(二重かっこ)で括る、一般的に定着している外来語はカタカナにする等です。小学生レベルの基本ルールでも、正しく使えていない人は案外少なくありません。これらを意識して、正確な文章であるかを確認しましょう。

10位「名文を繰り返し読む」

本書10位では、「こんなふうに書きたい」と思える“自分にとって”の名文を見つけて、繰り返し読むというテクニック上達法が紹介されています。新聞、雑誌、Web、書籍など、あらゆる文章のなかから好みの文章を見つけてみてください。

目指す文章のスタイルによって、読む媒体を変えるのもおすすめです。ビジネスシーンで使う文章ならビジネス媒体のインタビュー記事やレポート、ユニーク性を求めるならエンタメなどのカルチャー媒体、情緒のある文章を書きたいならコラムや小説、ドキュメンタリーなど。

名文がよくわからないという人は、「スラスラ読めるかどうか」「読んでいて心地いいか」を基準にしてみてください。自分にとっての名文とは、次の文章をどんどん読み進めたくなるような、ある種の中毒性があるもの。筆者の主戦場であるWebの場合は、多くの人に知られている人気媒体や古くから存在する媒体は、それなりにこだわりをもって書かれているので、勉強になると思います。

「書いて、直す」を繰り返して文章力を鍛えよう!

語学の習得は「筋トレ」のようなものと言われますが、文章力の上達にも似たような一面があります。とにかく全力で書いた文章を編集さんに直してもらい、一般の読者の率直なフィードバックも参照しながら、より良い文章を書く努力をする。これを7年近く繰り返して、ようやく読みやすい文章が書けるようになった気がしています。

ひとつ、重要な視点としてお伝えしたいのは、「どう書くか」より「何を書くか」。これは大先輩のとあるライターさんからの教えです。表現の工夫を凝らすことも大事ですが、内容はもっと大事なんだと。

記事を執筆する際、ライターはいきなりスラスラと文章を書き出すわけではありません。念入りなリサーチやインタビューを重ねて、しっかりと構成を立ててから執筆に取り組み始めます。書くための材料をふんだんに準備しているんです。

「調べる、書く、直す、(名文を)読む」といった一連の作業を繰り返せば、必ず文章は洗練されていきます。ぜひ文章力の筋トレに励んでみてくださいね!

[文]小林 香織 [編集]サムライト編集部