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「イシュー・ドリブン」では淘汰される
「イシュー・ドリブン」とは、すでに顕在化している課題に対して、それを解決していくための思考法を指します。この思考法はいわば「考えてから動く」思考法であり、今後急速に発展していくであろう人工知能などの機械の得意分野です。そのためこれからもイシュー・ドリブンのような「考えてから動く」やり方に頼っていれば、いずれ淘汰されていく危険性があります。
こうしたリスクを回避するカギこそが、「妄想=VISION」であり、妄想を起点とした「ビジョン思考」がこれからの思考法だと指摘するのが、株式会社BIOTOPE代表を務め、戦略デザイナーの肩書きを持つ佐宗邦威さんです。
ビジョン思考は人工知能時代を生き抜くための思考法であり、同時に人生をより楽しく充実させるための思考法でもあります。人工知能による変化が進行し、同時に人生100年時代の到来により働き方が見直される現代において、この思考法は重要な思考法の一つになっていくことでしょう。
そこでここでは佐宗さんの著書『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』の入り口として、佐宗さんが提唱する「ビジョン思考」のポイントを概観していきたいと思います。
「自分モードの思考」を取り戻そう

「考えてから動く」という思考法では、基本的に論理の文法からは抜け出せません。しかし環境の変化がめまぐるしい現代においては、論理だけでは太刀打ちのできない問題も少なくありません。また論理は人工知能の得意分野なので、論理頼みの思考法はいずれ淘汰されます。
このような状況に対応するには、「データ」「戦略」「分析」「前年比」といった論理の産物から一旦距離を置き「自分モードの思考」を取り戻す必要があります。
「自分モードの思考」が失われる4つの原因と処方箋

しかし現代に働く人たちを取り巻く環境は、自分モードの思考が失われる原因をはらんでいます。
第一に「やらなければならないから、やっていること」に支配されて、内発的動機を見失っていること。第二に自分好みのフィルタをかけることによって、狭い範囲でのインプットしかしなくなっていること。
第三に「イイね!」をはじめとする他者評価のシステムに影響されて、オリジナリティが低下していること。そして第四にインプットに終始していて、アウトプットの量が圧倒的に足りていないことです。
この4つの原因を解消し、自分モードの思考を取り戻すための処方箋となるのが、佐宗さんの提唱するビジョン思考を構成する「妄想」「知覚」「組替」「表現」なのです。
「ビジョン思考」は4ステップで妄想を現実にする
妄想
課題=イシューから考える「イシュー・ドリブン」に対して、ビジョン思考はまず自分の中の本当の関心と向き合い、そこから生まれてくる妄想=ビジョンを起点に考える「ビジョン・ドリブン」の思考法です。
ビジョン思考における妄想の基本は「紙に手書きで書き出すこと」。毎朝15分の時間を取り、そこでノートに自分の妄想を書き出すといったエクササイズを通じて、日常の生活の中で見失った内発的動機を探っていきます。
ここでの妄想はあくまでも妄想です。そのためなるべく地に足のついた発想を捨て去り、実現しようがないように思える発想をつかむように心がけます。
知覚
インプットの幅を広げるためには、視覚や聴覚、体感覚を使うと同時に頭で考えるだけでなく手も動かして「知覚」する必要があります。この知覚力を磨くために佐宗さんは、知覚力を構成する3つの力を一つずつ磨いていく方法を提案しています。
1.言語モードをオフにして、対象を言葉で表現せずにありのままに見る「感知」の力
2.対象から得られた情報を絵(イメージ)で表現する「解釈」の力。ここでも言語モードはオフになっている。
3.まとめ上げた考えを、視覚イメージと言語モードを行き来しながら言語化していく「意味付け」の力。
組替
組替は、妄想と知覚を通じて形になってきたアイデアに、独自性を持たせるためのステップです。独創的なアイデアをいきなり思いつくのはごくごく一部の天才だけで、残りの凡人は「つまらないアイデア」を磨いていくことで独創的なアイデアに到達するしかありません。
例えばアイデアの中で「あたりまえ」になっている部分をピックアップし、それを全て裏返して非常識を作ってみる。あるいはアナロジー思考を使って発想を広げてみる。佐宗さんは著書の中で、こうした方法をアイデアの「分解」と「再構築」という形で使用するツールなども挙げながら、具体的に紹介しています。
表現
ビジョン思考における表現のポイントは、「手を動かして具体化しながら考える」です。まず具体化する前の調査や分析、議論、企画には時間をかけず、とにかく先にプロトタイプを作ってしまいます。そのうえで具体化された成果物について議論を行い、より完成度の高いプロトタイプを作っていくのです。この「具体化→フィードバック→具体化」の反復は「イタレーション」と呼ばれ、より早くよりクリエイティブに思考するための方法として位置づけられています。
本書では、この思考法を実践するうえで注意するべき「動機付け」「シンプル化」「共感の仕掛け作り」の3点についても解説されており、より良い表現のための具体的なメソッドについても紹介されています。
夢や妄想を現実にする技術

「何が起きるかわからない」現代において、従来の「考えてから動く」というイシュー・ドリブンのようなやり方はもはや通用しなくなっていきます。今後はそれよりも夢や妄想といったVISIONをいかに語り、いかに現実化していけるかが、より充実した楽しい人生を送るためには重要になっていくでしょう。
佐宗さんが提唱し、そのハウツーを『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』の中で語っているビジョン思考という思考法は、まさに夢や妄想を現実にする技術と言えます。ここではその概要を紹介するだけにとどめましたが、著書の中ではより細かく、具体的にビジョン思考の身につけ方・磨き方について説明されています。
従来型の「考えてから動く」やり方を抜け出し、より人生を楽しく充実させる思考法を身につけたいという人は、ぜひ本書を手に取ってみてはいかがでしょうか。

