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USJ躍進のキーマン
「私はUSJをレジャーの部門でアジア最大の会社にしようと決めています」そう語るのはユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下USJ)の執行役員マーケティング本部長・森岡毅氏。テーマパークが不振にあえぐ中で、森岡氏が強気でいられる理由とは何なのでしょうか。ここでは同氏の仕事哲学を中心に、USJが2014年に全盛期を超える年間来場者数を記録した秘密に迫ります。
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間違ったこだわりを、捨てる

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森岡氏が入社した2010年当時、USJには「間違ったこだわり」が蔓延していました。ハイクオリティなエイジング技術を施した「ピーターパンのネバーランド」の海賊船は、顧客からすれば「ボロボロで汚い」という評価しか得られていませんでしたし、目玉アトラクションは主ターゲットのファミリー層からは不人気。
いくら技術的に素晴らしくとも、顧客目線に立ったこだわりでなければ「間違い」だ。森岡氏はその信念のもと、1つ1つ間違ったこだわりを切り捨てていったのです。
社内からは反発もあったものの、現在のUSJはハローキティやスヌーピーなどの子供が喜ぶ施設を一ヶ所に集めた「ユニバーサル・ワンダーランド」で成功を収め、ファミリー層からの支持を得ています。企業の体質は少しずつ変わり、間違ったこだわりに向けていたリソースを正しい方向へと向けられるようになったのです。
「戦略<戦術」の戦い方

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いくら戦略レベルで優秀な作戦が立てられても、戦術レベル=現場で勝利できなければ戦いには勝てない。森岡氏はこのような哲学のもと、現場での「感動」にこだわりを見せます。
ほぼ毎月自腹で自社のテーマパークに家族で訪れ、一般客と同じように行列に並ぶ。実際にアトラクションを体感して、自分のなかに湧き上がる感動を覚える。そこまで来ると森岡氏はその感動を客観的に観察して「感動を分析する」のだそうです。
マーケティングのデータに現れるのはどうあがいても数字だけですが、自身の体験を分析することで数字だけではわからないソフトの部分が見えてきます。現場で何が起きているか。トップがそれを見据えているからこそ、USJは数々のヒットアトラクションやイベントを打ち出せているのです。
シーズナルイベントに設備投資をしない
2014年にオープンしたハリー・ポッターのアトラクションは、USJのV字回復に大きく貢献しました。しかしだからと言って森岡氏と同社がハリー・ポッターだけに全てを賭けていたわけではありません。
例えば「ハロウィーン・ホラー・ナイト」。夜になるとパーク全体をゾンビが徘徊するホラーエリアと化す季節限定のシーズナルイベントです。初日来場者数は想定の3倍にも及ぶ6万人。期間全体では40万人と例年のハロウィーンイベントを大成功に導きました。
このイベントの成功の秘密はパーク全体がアトラクションになるというアクロバティックな発想にもありますが、なによりも「低コスト」であった点に尽きます。
確かに大量のゾンビには人件費はかかりますが、ハリー・ポッターに注ぎ込んだ約450億円のようなコストになることはありません。お金をかけずに新たな価値を生み出す。難しいことかもしれませんが、これに勝るビジネスの必勝法はないでしょう。
変革のためには嫌われることもいとわない
人に好かれようとか、誰かの顔を立てようなんて思っていてはダメなんです。
引用:リクナビ NEXTプロ論。
森岡氏が変革を推進するにあたって最も大切にしている哲学が、「人に好かれようと思わない」だそうです。たとえ周囲から煙たがられようと、「これが正しいんだ!」と信じて貫き通すこと。それができなければ組織は変えられないのです。
確かに変わる・変えるというのは誰にとっても大変なことです。しかし変わらなければ未来がないのだとすれば、選ぶべき道は1つだけ。ただただ未来を見据えて、変わり続けるしかないのです。そのためには嫌われることなんて気にしてはいられません。
危機感の中を走り続けている

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失敗したら倒産するかもしれないという覚悟でやっている。だからいつも追い詰められていて、夜も眠れず、何か思いついたらすぐに起きてメモを取るような日々です。
引用:グノシー
森岡氏は常にこのような危機感の中で働き続けているのだそうです。これは先ほど引用した「変わらなければ即、死」という言葉ともリンクする考え方でしょう。
はじめに森岡氏がUSJにやってきて感じたのはあまりの危機感のなさでした。そこで同氏はUSJの年間売り上げ約800億円に対して無謀にも思える約450億円もの事業費をつぎ込む「ハリー・ポッター」の導入を打ち出したのです。
会社全体の危機感を煽り、劇的な成長に賭ける森岡氏のやり方はそう簡単に真似できるものではありません。しかしその夜も眠れないような危機感の中を走ってこそ、成功を手にすることができるのです。
まずは「嫌われても仕方ない!」から始めよう
人は変化を嫌います。そのため何か大きな変革を行おうとする人は、たいてい周囲から煙たがられることになります。こだわりを持って仕事をしている人に対して「そのこだわりは間違いだからやめましょう」などと言えば、間違いなく嫌われます。
普通の人はそこで「嫌われたくないから」と諦めてしまうでしょう。しかしそれでは変革は実現できず、描く未来にも手は届きません。
まずは一歩。「嫌われても仕方ない!」と勇気を持って踏み出すこと。組織を変え、成功をつかむために、そこから始めてみませんか?
[文・編集] サムライト編集部