USJに学ぶ、売れない時代に売るためのマーケティングとは

entry_img_44

今の時代に売る方法

「モノが売れない時代」と言われて久しい今の時代。戦後日本を支えた大企業も様々な問題を抱えるなか、中小企業はさらなる苦戦を強いられています。これはテーマパーク業界も同じ。東京ディズニーランドが業績を伸ばすなか、中小規模のテーマパークは集客難にあえいでいます。

しかしそんな中でUSJは、低迷していた業績を盛り返し、2014年には全盛期を超える年間来場者数を記録しています。その背景には2010年にマーケティングの責任者に就任した森岡毅氏の存在があります。彼がUSJにもたらした売れない時代に売るための「たった1つの考え方」に迫ります。

「売れない時代」は本当か?

そもそもこの「売れない時代」という認識が間違っていることは、博報堂生活総合研究所が実施している「生活定点調査」が明かしています。

この調査では「今、どうしても欲しいモノがこれといって思いあたらない」と考える人の割合は、2004年から2014年まで約35%前後で安定しているからです。にもかかわらず「売れない時代」と言われるのはなぜでしょうか。

博報堂買物研究所の山本泰士氏によれば、これは情報量の爆発と商品点数の急増が原因です。あまりの情報と品数が押し寄せる状況に消費者はお腹いっぱいになってしまい、欲しかったものも欲しくなくなってしまうというわけ。

確かに普段からあらゆる商品の情報をネットで目にしていると、昨日欲しいと思ったものが何だったかを思い出せないという経験は少なくありません。

このような「売れない時代」の背景を受けて、それでも売るためにはどうすればいいのでしょうか。

USJを変えた「たった1つの考え方」とは?

mv
画像出典:http://www.usj.co.jp

そのヒントは森岡氏がUSJで行った改革にあります。その改革とは「作ったものを売る会社から、売るものを作る会社へ」です。

もちろん実際に森岡氏が改革した項目を挙げればブランドの定義やアトラクションの系統、価格に需要予測の精度、PRのやり方など数え切れません。

具体的な施策に関しては、以前キャリアサプリでも「USJはアジア最大のレジャー企業を目指す!強気の秘密は?」と題して取り上げました。

しかしそれらにはすべて「作ったものを売る会社から、売るものを作る会社へ」というコンセプトが貫かれています。このコンセプトは「消費者視点」と言い換えることができます。

「なんだそんなことか!」と言いたくなるかもしれませんが、森岡氏に言わせれば厳密な意味で消費者視点を実行できている企業はごく少数。「消費者が本当に喜ぶもの」と「消費者が喜ぶだろうと作る側が思っているもの」は必ずしも一致しないのです。

「消費者が何を求めているのか」だけ考える

iStock_000074052795_Small 2

両者を一致させるための最強の武器、それを森岡氏は「マーケティング」だと言います。マーケティングを行うマーケターは消費者の代弁者であり、真のマーケティングはそれだけで売れる・売れないを左右することができる。

そう言い切る森岡氏もUSJに入社する前はP&Gに勤め、マーケターとして数々のヒット商品を生み出しています。

そのために必要なのは「消費者が何を求めているのか」だけを考えることです。しかし日本では終身雇用や技術へのこだわり(「良いものを作れば売れる」)、各種規制による競争阻害などが障壁となり、本当に役にたつマーケティングの発展が遅れてきました。

どちらかといえば組織内での競争やいがみ合いなどに労力を費やし、消費者の視点にこだわっている企業は少ないというのが実情です。

つまり私たちの多くは「マーケティングの本当の力」を知らないままなのです。

売れる仕組みを作る「パーチェス・フロー」

Choosing lipstick

マーケターが売れる仕組みを作る時に意識しているのが「パーチェス・フロー」と呼ばれるものです。これは消費者がモノ・サービスを認知してから購入し、さらに再購入に至るまでの流れのことです。

1.認知率(%)
2.店頭での配下率(%)
3.店頭での山積率(%)
4.購入率(%)
5.再購入率(%)
6.平均価格
7.購入頻度

消費者の頭の中で自社のモノやサービスが認知されている割合が「認知率」です。そもそも消費者は知らないものを買わないため、この数字は最も重要な指標の1つとなります。

「配荷率」は消費者が買える場所に商品がどれくらいの割合で展開されているかを示します。この指標を高くするポイントは「いかに流通業者(卸、小売)に自社のモノ・サービスを取り扱うメリットをどう作るのか」です。

山積率は文字どおり店頭で品物が山積にされている割合のこと。山積を始めとする商品展開のメソッドは、売れる仕組みづくりのためには必要不可欠です。

この1から7の要素のうち、どれを高める施策を打てば効果が出るのかを見極めるのがマーケターの仕事となります。

実際に森岡氏もUSJのあるイベントに対してパーチェスフローを考え、「重要な要素は購入率だ」と分析し、そこに集中投資を行っています。結果は大成功。必要なところに十分な投資を的確に行えば、ビジネスの成功率は一気にアップするのです。

マーケターに向いている人の4つの素養

That was an inspiring presentation

マーケティングには様々な理論や方法があり、一朝一夕にマーケターになることはできません。「ちょっと面白そうかも」「自社もきちんと取り組んでみたい」という読者の方のために、森岡氏が挙げる「マーケターに向いている人の4つの素養」を紹介します。

1.リーダーシップが強い人
2.戦略的思考の素養がある人
3.EQ(心の知能指数)の高い人
4.精神的にタフな人

この場合のリーダーシップとは「チームを率いて、結果を出す能力」を指します。マーケターはマーケティングに基づいて組織を変える役割を果たさなくてはなりません。リーダーシップはそのための強力な武器となってくれます。

戦略的に物事を考えたり、問題を解決できる能力が高い人もマーケターの素養があると森岡氏は言います。また「IQ的に賢い人はそれだけでマーケターの素養がある」とも言います。だからといって「偏差値が低い時点でNG」というわけではありません。重要なのは戦略的に知性を発揮できるかどうかです。

EQとは感情察知や感情コントロール、対人関係スキルなどを数値化したもの。マーケターには調査や判断に十分な時間をかけられない場面が数多くあります。その時に限られた情報と時間の中で消費者のニーズを見抜くために、EQが武器となるのです。

マーケターとして組織を引っ張っていく過程では、必ずと言っていいほど多くの挫折を経験します。その挫折に耐え抜き、「それでも変えたい」と思う強い意志が必要なのです。

さあマーケティングを始めよう!

「バリバリのマーケターとして活躍したい!」というわけでなければ、ここに挙げた4つの素養がなくても十分マーケティングを勉強することはできます。

確かに新しいことを始めるには大きな苦痛が伴います。しかし成長するにはその痛みが必要不可欠です。少しでも興味があるのなら、まずは一歩を踏み出してみましょう。

参考文献『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』
Career Supli
森岡毅氏は日本一のマーケッターと言って良いかもしれません。著書はものすごく勉強になりますので、是非読んでみてください。
[文・編集]サムライト編集部

entry_img_44