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チーム作りに「ただ一つの答え」はない
巷には無数のチーム作りのための理論や書籍があふれています。しかしそこに「チーム作りのためのたった一つの答え」を求めてはいないでしょうか。もしそうだとしたら、とんでもない勘違いをしたままチーム作りに臨んでしまっているかもしれません。貴重な時間を割いてまで勉強しているのに、それでは甲斐がありません。
ここでは株式会社リンクアンドモチベーションの取締役であり、就職・転職口コミサイトを運営する株式会社ヴォーカーズの取締役副社長も務める麻野耕司さんの著書『The Team 5つの法則』を参考に、チーム作りに失敗するリーダーがやりがちなコミュニケーションにおける5つの勘違いを紹介します。
チームのコミュニケーションは多い方がいい

「チーム内のコミュニケーションが頻繁であればあるほど良い」という認識は、チームの仕事を非効率的にする可能性があります。例えば工場の生産ラインで「今から何をいくつ作るか」「今どれくらいの製品が完成しているか」といった情報を逐一報告していたらどうなるでしょうか。
あっという間に、報告のための時間でかなりの数の製品が製造できるようになるはずです。必要以上のコミュニケーションは仕事の効率を落とすのです。
「チームにはコミュニケーションが多ければ多い方が良い」ではなく、「チームのコミュニケーションは少ない方が良い」と考えるべきです。
引用:前掲書p94
つまり「チーム内のコミュニケーションが頻繁であればあるほど良い」は全くの逆で、コミュニケーションを必要最低限にすることで、コミュニケーションに必要なコスト(報告のためのメール作成の時間や、それを読む時間など)をカットすることが、チームのパフォーマンス向上には必要なのです。
メンバーには自由にやらせた方がいい

ではどうすればコミュニケーションのコストをカットできるのでしょうか。その答えは適切なルール作りです。麻野さんは著書の中で以下の4つをルール設定の際のポイントとして挙げています。
ルール1.どこからどこまでをルールの範囲にするか?
ルール2.誰がどこまで自分の裁量を持つのか?
ルール3.誰がどこまで責任を負うのか?
ルール4.何を評価対象とするのか?
ルール5.いつ、どれくらい確認するのか?
これらについては、チームのタイプごとに正解が変わっていきます。表にまとめてみましょう。
※前掲書p95〜115を再構築
近年「権限委譲」や「エンパワーメント」をキーワードに、チームのメンバーに裁量を与えて、自由にやらせた方が良いという考え方も知られるようになりました。しかしそれは人材の連携度合いや環境の変化の度合いによって左右されるもので、「あらゆるチームにおいてメンバーに自由にやらせた方が良い」という話ではないのです。
一度チームワークができれば仕事は「あ・うんの呼吸」でできる
日本の企業独特の文化とも言われる「あ・うんの呼吸」「以心伝心」「空気を読む」ですが、こうしたコミュニケーションのあり方は時代の変化に伴って難しくなってきています。
なぜならかつての日本の企業という組織は、日本人であり、かつ男性であり、かつ正社員であるという境遇のよく似た人間の集まりだったからです。しかし今では日本人もいればアジア人もいればアメリカ人もいて、男性もいれば女性もいて、場合によってはセクシャルマイノリティーの人もいます。
雇用形態にしても正社員、契約社員、派遣社員、アルバイトと多様性を増しています。このように各メンバーが持っている背景が多様化するほど、それぞれの価値観や感情も多様化していきます。
それにつれて、コミュニケーション不足による認識のズレも大きくなっていくのです。加えて転職をする人が増えているので人材の流動性も高く、「一度チームワークができたら、もう大丈夫」というわけにもいかず、その度にチームのルールやコミュニケーションの取り方を変えていく必要もあります。
このような状況であるにも関わらず、「あ・うんの呼吸でわかれ」「空気を読め」などと言っているようでは、チームのパフォーマンスは低下する一方なのです。
リーダーは完璧でなければならない

優秀で真面目な人ほど、「リーダーは完璧でなければならない」と考えがちですが、これもチームのパフォーマンスを下げる勘違いです。なぜならリーダーが完璧であればあるほどメンバーの心理にマイナスの影響をもたらすからです。すなわち以下の4つの不安が生まれるのです。
・無知だと思われるかも……。
・無能だと思われるかも……。
・邪魔だと思われるかも……。
・批判的だと思われるかも……。
実際にリーダーが完璧であればまだマシですが、たいていのリーダーは完璧であろうとするだけで、全く完璧ではありません。そのため「無知」「無能」「邪魔」「批判的」に当てはまる言動を否定しがちです。こうなればチーム内にはこれらを許容しない空気ができあがってしまうでしょう。
しかし無知が否定されると質問や疑問が出てこなくなりますし、無能が否定されると失敗が怖くなります。議論を遮るなどの何かの邪魔をする言動が否定されると意見を言うのが怖くなり、批判的なことが否定されるとチームの同調圧力は強くなるでしょう。
これらは自由で積極的な質問や意見、指摘などを押さえつけ、個人やチームの成長を阻害します。
したがってリーダーが完璧でなければならないというのは勘違いで、むしろ自ら不完全さをアピールし、チームの空気を変えていく必要があるのです。
自分のチームにあったチーム作りを!
コミュニケーションひとつとっても、チームそれぞれに適した形があります。チーム作りには他にも「目的」「人員選定」「意思決定」「共感創造」が必要ですが、いずれについても最適な形はチームごとに変わります。
『The Team 5つの法則』ではコミュニケーションも含めたこれら5つの要素について、チームのタイプ別に最適なチーム作りの方法がわかりやすく解説されています。
またAKB48の人員選定や、ロンドンオリンピック女子バレーボールチームのコミュニケーションなど、具体的な事例も豊富に紹介されています。
自分のチームにとっての「最適解」を知りたい人は、ぜひ本書を手に取ってみてはいかがでしょうか。
参考文献『The Team 5つの法則』

