人間関係の面倒くささは「選択理論」でラクになる!

「どうしてあいつは」って思ってる?

「どうしてあいつはあんなことばかりするんだ」「あいつはおかしい!」私たちは人間関係でトラブルがあったとき、ついこんな風に言ったり思ったりしがちです。

そんなときに「他人を思い通りに動かす心理学」にヒントを探す人も多いかもしれません。

実際こうした心理学には一定以上の効果があるわけですが、今回紹介するのは「他人を変えたり操作したりすることはできない。

それよりも自分を変える方が早い」という真逆の視点に立った「選択理論」という心理学理論です。

なぜ私たちは誰かと衝突し、ときにせっかく築き上げた人間関係を壊してしまうのでしょうか。そのメカニズムを解説します。

私たちの行動は他人に「左右されない」

選択理論が「他人を変えたり操作したりすることはできない。それよりも自分を変える方が早い」という視点に立つのは、前提として私たちの行動は他人だけに左右されているわけではないとしているからです。

相手を思い通りに動かすことで人間関係の問題が解決するというスタンスは、以下のようなメカニズムで私たちの行動が決定されていると考えています。

ここでは外部からの刺激がほぼそのまま行動に直結しているため、「変えるべきは外部からの刺激=相手だ」という認識になります。これに対して選択理論は、私たちの行動と外部からの刺激の間には「自分自身の選択」が介入していると考えます。

このとき人間関係を壊そうとするのは、外部からの刺激ではなく自分のマイナスの解釈であり、それに基づく行動です。かくして選択理論は「自分を変える方が早い」と主張するのです。

自分をコントロールするための「行動のメカニズム」

では具体的にどのように自分を変えればいいのでしょうか。まずやるべきことは自分が行動を起こすときのメカニズムへのより深い理解です。

●人の行動は4つの要素でできている

前述のメカニズムをさらに分解してみると、人の行動には以下の4つの要素が絡んでいることがわかります。

1.行為
2.思考
3.感情
4.生理反応

例えばAさんがBさんとの関係がギクシャクしているとします。AさんはBさんを避け、なるべく顔を合わせないようにします(行為)。なぜなら「顔を合わせたくない」「何か言われたらどうしよう」と思考するからです。

このときAさんの心の中は「気まずい」「怖い」「寂しい」といった感情が渦巻いています。

食欲はなくなり、自律神経にも変調が出るかもしれません(生理反応)。選択理論ではこれらを「全行動」と呼び、車の4つの車輪にたとえます。

●コントロールできるもの、できないものを知る

ではこのうち自分の意思でコントロールできるものとそうでないものを区別してみましょう。

コントロールできるのは「行為」「思考」、できないのは「感情」「生理反応」です。

感情はコントロールできると考えている人もいるかもしれませんが、感情は「する」ものではなくひとりでに「湧く」ものなので、コントロールはできません。

前輪駆動の車に例えるなら、行為と思考が前輪、感情と生理反応が後輪です。

私たちは感情的になると、このコントロールできるもの、できないものを混同してしまい、感情や生理反応までコントロールしようとします。

しかしそれでは当然上手くいきません。動かない後輪を一生懸命動かそうとしてもどうにもならないのと同じです。

自分をコントロールして今ある人間関係を守るには、まず自分の行為と思考という前輪にフォーカスする必要があるのです。

「何が自分/相手を突き動かすのか」を理解しよう

しかし車を動かしているのは車輪だけではありません。エンジンとハンドルも必要です。

このうちエンジンの役割を果たすのが選択理論における「基本的欲求」、ハンドルの役割を果たすのが自分の理想とするイメージです。

自分と相手の間にこの基本的欲求と理想のイメージの違いがあるという理解ができれば、自ずと何が最善の行動なのかが明確になるはずです。

●私たちが持つ5つの「基本的欲求」

選択理論によれば、私たちには以下の5つの基本的欲求があります。

1.愛・所属の欲求(愛し愛されたい、誰かとつながっていたい)
2.力・価値の欲求(自分の力と価値を感じていたい)
3.自由の欲求(自分の思うようにやりたい)
4.楽しみの欲求(楽しみたい、知りたい、学びたい)
5.生存の欲求(食べたい、眠りたい、セックスがしたい)

これらの欲求は多かれ少なかれ誰にでもありますが、どの欲求が強くてどの欲求が弱いかは人によって千差万別です。

愛・所属の欲求が強い人は世話焼きだったり、誰かと一緒に行動することにこだわったりしますし、自由の欲求が弱い人は自分の意見を主張しなかったり、規則や慣例を無批判に受け入れがちだったりします。

私たちはこうした欲求をエンジンとして、行動を起こすのです。

●上質世界=基本的欲求が全て満たされた世界

自分の理想とするイメージを選択理論では「上質世界」と呼びます。この上質世界は各人にとっての基本的欲求が全て満たされた、理想的な世界を指します。

基本的欲求が人によって違うので、上質世界の様子も人によって違います。私たちは基本的にこの上質世界を実現するために「どう行動するか」を選択します。

したがって上質世界は行動のハンドルを握っているといえるでしょう。人間関係を円滑にしたいのであれば、私たちは相手の行動の選択基準である上質世界の仲間入りを果たさなくてはなりません。

つまり相手にとって「この人がいる世界こそが自分の基本的欲求を満たす上質世界なのだ」と思ってもらうのです。

ここには冒頭で触れた「相手を思い通りにコントロールしよう」という考えはなく、あくまで自分が変わろうという姿勢が表れています。

ただしこれは「自分の気持ちを我慢して相手に合わせろ」という意味ではありません。

相手が自分の上質世界に必要ないのであれば、すっぱり切り離してしまっても構いません。

選択理論の考え方は自分にとって何が大切で理想なのかを、きちんと把握するためのものなのです。

他人と自分を切り離そう

選択理論の考え方を取り入れると、他人の行動と自分の行動を切り離して考えられるようになります。

他人はあくまで自分とは別の生き物で、期待に応えてくれることはあっても思い通りになってくれることはありません。

そんな相手に対して「どうしてあいつはあんなことばかりするんだ」「あいつはおかしい!」と憤ったところで、疲れてしまうだけ。

他人と自分を切り離して、快適な人間関係を築きましょう。

参考文献『人間関係をしなやかにするたったひとつのルール はじめての選択理論』


Career Supli
相手の上質世界を想像しようとするとそこで抽象度が一つあがるので、相手の言動にそのまま反応することがなくなります。
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部