ウルフ・オブ・ウォールストリートに学ぶ強烈な売り方

「ウォール街の狼」になりたいか?

レオナルド・ディカプリオ主演の映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』は、26歳で年収49億円を達成したジョーダン・ベルフォートという男の盛衰を描いた物語です。ここでは彼が自ら執筆した『ウォール街の狼が明かす ヤバすぎる成功法則』(クリス岡崎・訳)の中から「ウォール街の狼」に学ぶ強烈なセールスメソッドのエッセンスを紹介。あなたのセールススキルを引き上げるヒントが満載です。

セールスの真実

言葉が9%、トナリティーが50%、ボディ・ランゲージが41%。

コミュニケーションは「言葉」「トナリティー(声の調子)」「ボディ・ランゲージ」の3つで構成されています。ジョーダンによれば、このうち「言葉」の占める割合はなんと1割にもなりません。これが意味するのは、私たちは相手の話の内容をろくに聞かず、主にトナリティーやボディ・ランゲージで「話を聞いている」ということです。

ジョーダンは「だからと言って言葉を完全にないがしろにしては『バカ』だと思われる」と釘を刺していますが、話の内容こそが重要だと考えている人にとっては目から鱗の真実。人間が相手への印象を0.25秒で決めているという研究結果も出ています(電話の場合は4秒)。つまり私たちはもっと、「上っ面」に気を遣う必要があるのです。

トナリティー(声調)で「信頼」を作れ

Business Meeting

トナリティーとは日本語で声調・声色。私たちが日常的に使っているコミュニケーションの手段です。これを意図的に操作することで思い通りの印象を相手に与えることができます。

「マイクロ・アグリーメント」は文章や文脈の終わりの部分を語気を強めて言うトナリティーです。「先日代々木公園でお会いしましたよね?」「今日は午後から天気が崩れるようですね?」など商談には全く関係のない内容でマイクロ・アグリーメント=小さな同意をしているうちに、お客は知らぬ間にセールスマンのペースに乗せられやすくなります。自分の意見に同意させるための抵抗を、お客の気づかぬ間に小さくしていくテクニックです。

「宣言ではなく質問を用いる」トナリティーもお客に強く自分を印象づけるテクニックです。「こんにちは、ジョーダン・ベルフォートです」と宣言するのではなく、「こんにちは、ジョーダン・ベルフォートをご存知ですか?」と質問形式に変えるだけ。するとお客は一瞬でも「この男を知っていただろうか?」と記憶を辿るでしょう。この時相手が自分を知っているかどうかは関係ありません。要は印象づけられればそれでOKなのです。

他にも「お客の気持ちを急かすトナリティー」「こちらが商品・サービスに確信を持っていることを感じさせるトナリティー」などがあります。これまで無意識でやっていたものを意識的にやるのは難しいかもしれません。自分の声をボイスレコーダーなどに吹き込んで、他人にどのように聞こえているのかを検証しつつ練習するのも手です。

ボディ・ランゲージで相手の懐に飛び込め

Businessmen using laptop

トナリティーと同じようにボディ・ランゲージにもお客が知らぬ間にセールスマンに共感や親近感を抱いてしまうテクニックがあります。「マッチング」は相手の動作の一部を意図的に反復することで、特に鏡に映したように真似ることを「ミラーリング」と言います。

例えば相手と同じタイミングでお茶を飲む(マッチング)、対面する相手が右手で頭を掻いたとしたら、こちらは左手で頭を掻くなどです(ミラーリング)。ただし注意したいのは動作を真似るタイミング。こちらが意図的に真似ていることがバレれば、共感・親近感は一瞬にして反感に変わります。あくまでさりげなく、相手の動作から数秒程度開けてから真似るようにしましょう。

「何だかえらく細かい話だなあ」と思うかもしれませんが、ボディ・ランゲージがコミュニケーションで占める割合は41%。小さなことが積み重なって大きな信頼に変わるのです。

売りたきゃお客の「痛み」をえぐれ

ジョーダンは著書の中で、お客がセールスマンや企業、商品・サービスに抱く信頼と同じくらい大切な要素として、「行動の境界線を下げる」と「痛みの境界線を上げる」という2つの要素を挙げています。「行動の境界線」とはお客が購入を決断するまでに至る障害のことで、お客はこれが高まるほど購入しなくなります。

この行動の境界線に影響するのが「痛みの境界線」。「痛み」とはお客が現状に抱いている不安・不便・不都合・苦悩などの否定的な感情です。これが大きくなればなるほど、人はそれを解決せずにはいられなくなる。これが「痛みの境界線を挙げて、行動の境界線を下げる」のメカニズムです。

お客の痛みがどこにあるのかを聞き出し、必要であれば「しかし、そのままですと放っておけば事態は悪化するだけです」などと痛みをえぐり、自分の商品・サービスを買うように仕向ける、というわけ。もちろんジョーダンが書いているように「痛み」をえぐる場合もあくまで道徳的な観点は無視してはいけませんし、不自然な「誘導」になってしまっては信頼を損ねる原因になります。痛みを聞き出すまではともかく、えぐる際には細心の注意が必要です。

「成功のループ」にお客を巻き込め

Business people in discussion as they walk outside modern office

ジョーダンは自身のセールスメソッドで最も重要な原則を「5つのシグナル」と「ルーピング」であるとしています。5つのシグナルは次の5項目。

1.お客が商品を気に入っている。
2.お客がセールスマンに対して好意・信頼を抱いている。
3.お客が自社に対して好意・信頼を抱いている。
4.行動の境界線が下がっている。
5.痛みの境界線が上がっている。

この5つが揃った時、セールスは必ず成功する。ジョーダンは断言します。しかしこの5つが揃わない時も、もちろんあります。その時に使うのが「ルーピング」。お客が「考えてみます」「家内と相談させてください」などと購入を渋った場合、1から順にどの部分で引っかかっているのかを確認していく手法です。

「商品のコンセプトやスペックはお気に召していただけたでしょうか?」と質問し、お客が「確かに商品は良いですよね」と相槌を打ったら、すかさず「そうなんです。実は…」というように新しい情報を示します。

売り込みが終わったら間髪入れずに「いかがですか?」と購入を勧める。これでも「考えてみます」と言った場合には、「まだ1の部分で引っかかっているのか、1はともかく2で引っかかっているのか」の判断をします。

1なら商品の売り込みを続け、2であれば自身への好意・信頼獲得のためのトークを展開します。お客の「考えてみます」「家内と相談させてください」をことごとくスルーし、「成功のループ」に巻き込んでいく。これがルーピングのテクニックです。

注意したいのはお客が「購入を迷っている」状態なのか、完全に「脈なし」の状態なのかという点。これを見極めなければただのうっとうしいセールスマンとみなされてしまいます。くれぐれもお客との信頼関係を破壊し、「デス・スパイラル(破滅への悪循環)」に陥らないようにしましょう。

あくまでクリーンに、したたかに

あまりのはちゃめちゃぶりに投獄の憂き目にあったジョーダン。彼は本書の中で繰り返し「あの頃のやり方は間違っていた」「くれぐれもルールは守るように」と書いています。しかしこれは「ルールの中で工夫をすることをサボるな」というメッセージとも受け取れます。ここで挙げたテクニックは十分「ルール」の範囲内。彼のセールスのテクニックを自分のものにして、ぜひともスキルアップに役立てましょう。

Career Supli
ウルフ・オブ・ウォールストリートはディカプリオのイカれた演技が最高のハイテンションの映画です。まだ見てない人は是非御覧ください。
[文・編集] サムライト編集部