リーダーシップとは?最高のリーダーになるための5つの鉄則

ぐいぐい引っ張るだけがリーダーシップではない

リーダーと言えば「高いカリスマ性でチームをぐいぐい引っ張る」というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。しかしシンクタンク・ソフィアバンク副代表を務めながら、15年間で1000人以上の経営者にインタビューをし続けてきた藤沢久美さんによれば、そうしたリーダー像は近年崩れつつあるのだそうです。ここでは著書『最高のリーダーは何もしない』を参考に、最高のリーダーになるために知っておくべき5つの鉄則を提案します。

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リーダーシップを使い分ける

チームを率いる人物の今日的なタイプは「ビジョン型」と呼ばれます。従来型のカリスマ型リーダー像は自分の命令1つ1つが実行部隊である社員やチームのメンバーによって正確に実行されているかをチェックしていました。

しかしこれだけではチームのパフォーマンスはほとんどリーダーの実力に左右されてしまい、リーダーがフォローできない世の中の流れに取り残されてしまいます。近年のスピード重視のビジネスシーンにおいては、カリスマ型一辺倒のリーダーではチームのハイパフォーマンスは維持できないのです。

そこで必要とされるのがビジョン型のリーダーです。彼らは自分の仕事は「ビジョンを作り、伝える」ことであり、それ以外のことは優秀なメンバーに委任します。これにより自律的に行動するチームができあがり、速度を増していくビジネスの変化に食らいつくことができるのです。

もちろん非常事態が発生すれば強烈なカリスマ型リーダーシップが必要になる場合もあります。東日本大震災発生時に福島第一原発所長を務めていた吉田昌郎さんのような冷静かつ強力なリーダーは、まさに有事には必須の存在でしょう。

理想のリーダーとはこの両面を併せ持った人物、つまり平時はビジョンを示し、伝えるだけで、あとはチームに委任する一方、非常時には沈着冷静かつ力強くチームを引っ張るスキルを持っている人物なのです。

ビジョンを作り、伝える

Mid adult CEO talking on a business meeting.

ビジョン型リーダーの仕事である「ビジョンを作り、伝える」とは、メンバーの「働く理由」「働く目的」を作ってあげることです。働いている人全てがそれぞれの働く理由や目的を持っているわけではありません。

むしろ「ただなんとなく働いている」という人がほとんどでしょう。しかしそのような人たちも、理由や目的ができれば自律的に動き、組織の重要な人物になっていきます。このきっかけを作るのがビジョン型リーダーの最大の仕事です。

しかしリーダーを務める人の中には「雇われ仕事なんだし、自分のビジョンなんか持っても仕方ない」と思う人もいるはずです。実際リーダーを務める人の多くは、起業家でもない限りオリジナルのビジョンを持っている人は少ないでしょう。そういう場合はそれ相応のビジョンの作り方、伝え方があります。

例えば営業部長直轄のプロジェクトチームのリーダーに抜擢された場合、チームのビジョンとなるのは「部長のビジョン」「会社のビジョン」です。この際にリーダーがするべきは「組織の哲学の翻訳」です。

チームに浸透していない企業理念などを自分なりに噛み砕いて、浸透させていく。それがこの場合のビジョン型リーダーの仕事となります。実力派の上司の後釜としてリーダーを引き継がれた場合などは、既存のチームの土壌を踏まえた上で、新しい軸を打ち出していくのが仕事です。状況に応じて何がビジョンなのかは変わりますが、「ビジョンを作り、伝える」点はどんな状況でも変わりません。

「ビジョン力」は「考える」で鍛える

Pensive face

チームを自律させるビジョンを作る秘訣は「考えること」です。優秀なリーダーは常に仕事のことを考えてしまう生き物です。大阪府大阪市に本社を置く、靴下の企画から製造・販売までを手がけるタビオ株式会社の創業者・越智正直さんは、藤沢さんのインタビューの時に「気を抜くと靴下のことを考えてしまう」と言ったそうです。

10分1000円カットのQBハウスで知られるキュービーネット株式会社の創業者・小西國義さんは事業立ち上げ当時、延々と事業の抱える問題点について考え続けていました。だからこそテレビなどで流れるニュースや一見無関係に見える他業態のやり方が、自分の事業のヒントとして目に入ったのだと言います。

考えることで一見無関係でも、実は有益な情報を受け入れることができ、自分の中のビジョンが明確になっていく。これこそがビジョン型リーダーの仕事の仕方です。

「でもそんな四六時中仕事のことなんて考えてられないよ」という人も多いでしょう。そういう場合は「通勤時間」「休憩時間」など意図的に考える時間を設け、仕事中などはその時間に考えるトピックをスマホなどにメモっておくという方法もあります。

考える時間はできるだけ多くの情報と接している時を選ぶようにすれば、仕事のことを考えていない時には思いもよらないところにある「ビジョンのタネ」を見つけられるかもしれません。

ビジョンを伝えるための方法を持つ

せっかく作ったビジョンも、ただのお題目で終わってしまえば何の意味もありません。重要なのはいかに組織に浸透させるかなのです。優秀なリーダーは自分の作ったビジョンを、チームに浸透させるための方法を持っています。

『最高のリーダーは何もしない』で挙げられている例に共通するのは、「人対人」で伝えている点。ツールやマニュアルを作ってハイ終わり、ではないのです。

1.「同じ釜の飯」を食べて浸透させる

近年社長と幹部が合宿をしている企業が増えています。これは「寝食を共にする」ことでビジョンの共有をしやすくする効果的な手法です。他にもリーダー同士での合宿などを行っている企業もあります。

2.ビジョンを振り返る習慣で浸透させる

リッツカールトンでは行動指針である「ゴールド・スタンダード」が書かれたカード「クレド」を従業員が常に携帯し、理念を常に意識する習慣をつけています。このクレド経営は様々な企業で実践されていますが、重要なのはクレドを作ることではありません。いかに「ビジョンを振り返る習慣」が浸透しているか、これがクレドの肝です。それが実現できれば自ずとビジョンは浸透していきます。

3.「ビジョンの語り手」で浸透させる

組織の規模が大きくなれば、リーダー自身でビジョンを伝えきるのは難しくなります。その時に活躍してくれるのが既にビジョンを共有している「ビジョンの語り手」です。チームの参謀や組織の幹部などに社員教育を任せれば、自分が伝えなくともどんどんビジョンは浸透していきます。

4.「本当の仲間」だけを選び出す

どうしても分かり合えないメンバーがいる場合は、本当にビジョンを共有できる仲間だけを選別することも必要です。この方法はいわば「最後の手段」。むやみに使うと単なる暴君になってしまうので注意が必要です。

「誰にも嫌われない人」である

「リーダーは嫌われ役だから」というのは誰しもが聞いたことのある常套句です。しかしビジョン型のリーダーシップにおいては、リーダーは嫌われ役になってはいけません。

もちろんプロジェクトを推進したり事業変革をするためには万人から好かれるというわけにはいかないでしょう。それでも決して敵を作ってはいけないのです。いかに自分に対する中立層を増やすか。それがビジョン型リーダーにとっては重要です。

そのために必要なのは「周囲の人に愛情と感謝を忘れないこと」。確かにリーダーは様々な責任を負っているので「自分だけが焦っている」「自分だけが頑張っている」と思いがちです。

しかし周囲への気配りを忘れて自分のことに没頭しているうちは、周囲からも顧みられることはありません。まずは自分からしっかりと周囲やメンバーと向き合うことが大切です。

「何もしないリーダー」になるために

藤澤さんの著書のタイトル『最高のリーダーは何もしない』は、ビジョン型リーダーの本質を示しています。最高のリーダーが何もしないでいられるのは、自分のビジョンを自律的に実行してくれるメンバーのおかげであり、そうなるようにリーダーが心血を注いだ結果です。

「何もしないリーダー」になるためには、ここで挙げた5つの鉄則を忠実に実践しなくてはなりません。確かに「言うは易く行うは難し」かもしれません。しかし行わなければ組織も自分も変わりません。まずは第一歩目、つまり自分のリーダーシップについて考えるところから始めましょう。

参考文献『最高のリーダーは何もしない』
Career Supli
考えづづけることができるのも才能の一つだと思います。
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部