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「ぐいぐい引っ張るリーダー」はもう時代遅れ
「リーダーは嫌われてもいいから、みんなをぐいぐい引っ張っていくもの」。もしそう考えているのであれば、自分のなかのリーダー像のアップデートが必要です。
なぜなら、トップダウン型のリーダーシップは、チームのパフォーマンスがリーダー個人の能力に依存しやすいからです。
ビジネス環境の変化のスピードが、10年前、20年前と比べて桁違いに速くなった今の時代、もはや個人の能力だけでその変化に食らいついていくことは難しくなっています。
時代の変化についていくためには、リーダーだけの能力だけに頼らず、チーム全員の能力を最大化できるリーダーが必要です。嫌われてまでチームを引っ張るのではなく、好かれながらチームと一緒に前進していく−−−今求められているのは、そんなリーダーなのです。
しかし「メンバーから好かれる」とひとくちに言っても、どうすればいいかわからないという人も多いはず。やみくもにご機嫌伺いをしても、チームのパフォーマンスは上がりません。
そこでおすすめしたいのが「メンバーの話をじっくり聴く(傾聴)」です。以下では、簡単なようでとても難しい「傾聴」のコツについて解説します。
好かれるリーダーになるための「傾聴」3つのコツ

デール・カーネギーは著書『人を動かす』のなかで「人に好かれる6原則」として次の6項目をあげています。
・誠実な関心を寄せる
・笑顔を忘れない
・名前を覚える
・聞き手に回る
・関心のありかを見抜く
・心からほめる
どれも本質的でシンプルな項目ですが、どれから実践するべきかと言えば「聞き手に回る」です。
なぜなら聞き手として相手の情報を引き出せなければ、相手に関心を寄せることも、相手の関心のありかを見抜くことも、心から褒めたくなるような部分を見つけることも、できないからです。
したがって、人に好かれるリーダーがまず身につけるべきなのは、人の話をしっかりと聴く(傾聴する)能力なのです。以下ではこの力を身につけるための3つのコツを解説します。
1.結論・判断・解決策は、必要ない
プロジェクトの会議なら、結論・判断・解決策が出なければやる意味がありません(出ない会議もたくさんありますが)。
しかし自分のチームのメンバーに「自分の話を聴いてもらった」と思ってもらうには、自分から結論を導いたり、判断を下したり、解決策を提案する必要はありません。
それらは結局のところ、こちらの価値観や思考の枠に、相手の話をはめこんでしまうことだからです。たとえるなら「人参と玉ねぎ、じゃがいもがあるんだけど、何を作ればいいと思う?」と誰かに尋ねられて、即座に「カレーでしょ」と返すようなものです。
人参と玉ねぎ、じゃがいも=カレーというのはあくまで1つの答えでしかありません。この組み合わせならポトフも作れますし、肉じゃがでも大丈夫です。炒め物や味噌汁にしてもいいでしょう。
にもかかわらず「カレーでしょ」という返事をしてしまうのは、人の話を聴いているのではなく、自分の思う答えについて話しているだけ。
だから傾聴する際には、「ひたすら話を聴き、相手の話したいことを話してもらう」を重視し、結論・判断・解決策を出すのはNG。もっと言えば、絶対にそうしてはいけないのです。
効率が悪いように思うかもしれません。しかし傾聴の目的はあくまで相手の話を聴くことです。それを理解していれば、相手の話を聴かずに自分の話をするほうが、よっぽど効率が悪いとわかるはずです。
2.全神経を研ぎ澄ませて、聴く
「話を聴く」と言うと、耳と頭だけを使えばいいと思っている人も少なくありません。しかし言葉に表れるものだけが、相手の話したいことではありません。
メールやLINEでは絵文字やスタンプを使って細かい感情表現ができるのに、ビジネスメールではそれができないからコミュニケーションが難しい……そう思ったことはないでしょうか。
生身のコミュニケーションでも同じです。意識する・意識しないにかかわらず、人は言葉以外にも身振りや手ぶり、息遣いや話を切り出すタイミング、体から出ている空気感など、すべてでメッセージを発信しています。
傾聴する側はそうしたメッセージを受け取るために、耳や頭はもちろん、全神経を研ぎ澄ませて聴く必要があるのです。
これができるようになれば、相手の本心が言葉の通りなのか、それとも言葉とは違うところに真意があるのかといったことも含め、本当に伝えたいことがわかってくるはずです。
3.相手と一緒に悩む、考える
人の話を聴いているようで聴いてない人の典型的なセリフが「わかるよ」です。
このセリフは一見共感の言葉として便利に思えます。しかし安易な共感は「あんたに何がわかるんだ」という反感につながりかねません。
そう感じてしまったら、相手は二度と話を聴いてもらおうとは思わないでしょう。
励ましのつもりの「気にするな」も同様です。上司や先輩である自分からすれば小さな悩みでも、部下や後輩にしてみれば大きな悩み。
それを「しょうもないことで悩むな」と言わんばかりに一蹴されれば、「あの人は自分の話を聴いてくれない」と思われても仕方がありません。
共感や励ましをするには、相手が何を考え、感じているかをじっくりと理解していく必要があります。
そのためには「(こういうことが言いたいんだろう)わかるよ」「(大した問題じゃないから)気にするな」という自分の決めつけで自分の話をするのではなく、「どうしてそう思ったのかな?」「どうすればいいんだろう?」と一緒に悩み、考える姿勢が求められます。
そうして傾聴していくと、相手の頭のなかにしかなかった情報や、相手がうまく言語化できない本質を引き出すことができます。情報が増えれば、相手に自分を重ね合わせて考えられるようになるので、共感や励ましの精度も上がっていくのです。
「本当に相手の話を聴くことができているのか」を自問し続ける

人はついつい、自分の話ばかりをしがちです。もちろん信頼関係を作るには自分について話して自己開示することも必要ですが、それはあくまで相手の話を聴くためにするものでなければなりません。
先輩風を吹かせたり、上司の「威厳」を見せつけたりするために、自分が思う結論や判断、解決策を話しているのなら、人の話を聴いているとは言えないのです。
聴いているつもりで聴いていない状態を避けるためには、いつも「自分は本当に相手の話を聴くことができているのか」と自問し続ける必要があります。
優秀な聴き手になるために目指すべきゴールは、「相手が話したいことをきちんと伝えられること」。自分がそのゴールに向かって行動できているか、いつも意識するのです。
話の最中に意識するのが難しければ、終わってから振り返るのでもかまいません。毎回やるのが大変なら、1日○回は傾聴を意識するという形でもかまいません。そうやって傾聴できる回数が増えていけば、聴く力が伸びている証拠です。
「好かれながらチームと一緒に前進していくことができるリーダー」を目指して、今日から聴く力を磨いていきましょう。
