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その「努力」で結果は出てますか?
「努力は報われる」「何事も一生懸命やるべき」多くの人はこうした考え方を信じ、努力することに膨大な時間を費やしています。しかし人事・戦略コンサルタントの松本利明さんは、これまでのキャリアの中で5万人をリストラし、6千人の幹部候補を選抜する中で「本当に仕事ができる人というのは『ラクして速い』を実践している」ということに気づいたそうです。
著書『「ラクして速い」が一番すごい』には、「無駄な努力」の典型的パターンとして次の5つが挙げられています。
1.一生懸命がんばるけれども、やり直しが多い
2.すべてに全力投球で、疲れ果てる
3.責任感を持ちすぎて、仕事を抱えすぎる
4.根回しに労力と時間をかけすぎ、疲弊する
5.上司の指示通りにやるが、結果が伴わない
引用:『「ラクして速い」が一番すごい』p7
本書はこれらのパターンごとの解決策を章ごとに提示し、「ラクして速い」を実践するためのノウハウを合計56個も紹介しています。
「ラクして速い」というと、真面目な人ほど「何だかサボっているみたい」と思うかもしれません。しかし松本さんが重要視している「ラクして速い」とは、力を入れるべきところと抜くべきところを心得て、1秒でも速く仕事を終わらせることです。
つまり『「ラクして速い」が一番すごい』は、一流のビジネスマンが実践している効率の良い力と時間の使い方を教えてくれる本なのです。
以下では本書の内容を少しだけ紹介しながら、『「ラクして速い」が一番すごい』の魅力をお伝えします。
「ラクして速い」人はどこを見て、何を考えているか?

●努力は報われる派が本当は知りたい「要領がいい人の視点」
正直なところ、筆者は松本さんが指摘する「無駄な努力」をたくさんしてきたタイプの人間です。それを自覚しながらも努力を続けてしまうのは、「ラクして速い人たちが、なぜラクして速いのか」がわからないからです。
「要領よくできるなら、とっくにそうしてる」これは愚直なまでに努力をしている人の本音ではないでしょうか。努力は報われる派だって本当は、どうやったら「ラクして速い」が実現できるかを知りたいのです。
『「ラクして速い」が一番すごい』の魅力の一つは、こうした努力は報われる派のニーズに答えるノウハウが、ずらりと並んでいる点にあります。
要領のいい人が何を考え、何を見て、どう行動しているのか。ひとつひとつは具体的なノウハウですが、全てを読んでいくとそうした「ラクして速い人のクセ」も見えてきます。いくつか本文から紹介してみましょう。
●コツコツ積み上げていたら遅すぎる
大ヒットを生み出す新しい製品やサービスのアイディアは、「論理的な分析」ではなく「逆張り」から生まれています。
松本さんは著書の中でワコールの「小さく見せるブラ」、リーボックのトレーニングシューズ「イージートーン」、セリジエの染まらない白髪染め「つや髪」を例に挙げていますが、本来不健康なイメージを持つ飲み物を特定保健用食品として売り出したキリンの「メッツ コーラ」や、消せないのが当たり前だったボールペンを消せるようにしたパイロットの「フリクションボール」も同じです。
論理的な分析をコツコツ積み上げるよりも、単純に正しいと思われていることの逆からアイディアを作る方が、速いうえに質の高いアイディアが生まれるのです。
●「勝てるフィールド」で勝負する
努力の総量にフォーカスする人は、得てして「努力してやりたい仕事をするんだ。そのためには苦手な分野も克服しなきゃ」と弱点の補強に注力しがちです。
しかし松本さんが幹部候補として選抜してきた6千人は「やりたい仕事」より「求められている仕事」「向いている仕事」に力を注いでいるのだそうです。
苦手な分野を努力して克服しても、同じ分野が得意な人には敵いません。もちろん結果も出せません。しかし自分が勝てるフィールドで勝負すれば、当然ですが勝つことができます。たとえ今はやりたい仕事でなくても、勝てば面白くなってきて、ゆくゆくはやりたい仕事になっていきます。
松本さんは向いている仕事を知るための簡単な方法として、仕事上の「ありがとうの声」を分析するようアドバイスしています。
・いつも速くやってくれてありがとう
・いつも丁寧にやってくれてありがとう
・いつも面倒見てくれてありがとう
・いつも気を配ってくれてありがとう など
こうした「ありがとうの声」を分析すれば、自分の勝てるフィールドがどこかがわかります。そのフィールドで勝ち続ければ自分の評価が確立され、勝てるフィールドの仕事しか入ってこなくなります。そうなれば苦手な仕事や勝てない仕事はなくなっていき、勝ち星は益々増えていくというわけです。
「ラクして速い」人のテクニックを真似よう!

●「すぐ使って試せるテクニック」が溢れている
『「ラクして速い」が一番すごい』のもう一つの大きな魅力は、考え方にしろコミュニケーション方法にしろ、ツールの使い方にしろ、どれもこれもが「すぐに使って試せる」という点にあります。しかもそうしたテクニックが56もあるので、それこそ自分の「勝てるフィールド」に合ったテクニックを選んで試すことができるのです。
エクセルやパワーポイント、スマホやメールの使い方なども紹介されていますが、以下では「ラクして速い」人のコミュニケーションテクニックを2つ紹介しておきましょう。
●「普通の人と一番違うポイントは何でしょうか?」
自分で一からノウハウを作るよりも、できる人にノウハウを聞いて真似をする方がよりラクして速く成長できます。しかしこのときに「コツを教えてください」と聞くと、相手が重要視しているところは教えてもらえますが、相手の他の人間との差別化ポイントを聞き出しにくいのだそうです。
そこで松本さんが推奨している聞き方が「普通の人と一番違うポイントは何でしょうか?」。この聞き方は外資系人事コンサルタントがリーダー候補者を選抜する際に、相手の思考や行動特性を探るために使うインタビュー技法です。
優秀な人は「自分が他の人とどこが違うか」を把握していますが、普段からそれを意識してやっているわけではありません。そのため「コツを教えてください」という漠然とした聞き方では、差別化ポイントを引き出せないのです。
しかし「普通の人と一番違うポイントは?」と具体的に質問すると、普段は意識していない「自分が他の人とどこが違うか」を教えてくれるというわけです。まさに今日、今からできる質問テクニックです。
●尊重するのは「偉い人」より「事務スタッフ」
松本さんが選抜してきたリーダー候補者たちは、「偉い人」よりも前に、まず同僚や後輩そして「事務スタッフ」を味方につけていたそうです。なぜなら現場を実際に動かすのは彼らであり、かつ「偉い人」というのは人事異動や転職で替わる可能性がありますが、後輩や事務スタッフが替わる可能性が低いからです。
いくら偉い人に気に入られても、現場を動かす彼らに嫌われてしまえば、自分の仕事をやり遂げることはできません。だからまず事務スタッフからの信頼が重要なのです。
松本さんは現場を動かす人たちの信頼を勝ち取るための方法として、以下の3つを挙げています。
・書類など提出納期は必ず守る
・上から目線で物事を頼まない
・「ありがとう」を声と形にして表す
引用:『「ラクして速い」が一番すごい』p176
コストも時間もかかりません。ただ相手の立場と仕事を一貫して尊重するだけで、仕事が一気にやりやすくなります。「ラクして速い」人たちの仕事には、こうした裏付けもあるのです。
今日から、今から、「ラクして速い」を追求しよう!

「ラクして速い」人たちは、今こうしている間にもラクして速く結果を出しています。努力そのものや、努力で築き上げてきた「自分のスタイル」にこだわっている場合ではありません。
今日から、今から、「ラクして速い」を追求しましょう。松本利明さんの著書『「ラクして速い」が一番すごい』には、努力だけに固執していては決して手に入らないノウハウがびっしりと並んでいます。よりそのノウハウが知りたいという人は、ぜひ本書を手にとってみてください。
参考文献『「ラクして速い」が一番すごい』

