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いまだにみんなTVが大好き
最近TV見てますか?若者のTV離れといわれていますが、昨年発表された総務省のデータを見ると10代の平日の平均視聴時間は102.5分です。
13歳から69歳までの全世帯だと168.3分と、いまだに毎日2〜3時間は視聴されています。視聴率15%となれば1,000万人近くが見ている計算になり、その影響力は衰えてません。
そんな多くの人に向けて番組をつくるのが仕事のTVプロデューサーと呼ばれる人たちがいます。TV番組は毎分ごとに視聴率が計測され、悪ければすぐに打ち切られるシビアな世界ですが、そんな中でも継続してヒット番組を手がける人気TVプロデューサーがいます。
よく番組にも登場するので名前は聞いたことがあると思いますが、
『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』、『踊る!さんま御殿!!』などを手がける
菅 賢治(すが けんじ)さんや、
『ロンドンハーツ』、『アメトーク』などの
加地 倫三(かぢ りんぞう)さんなどがとても有名です。
TVプロデューサーというと、特殊な業界人というイメージがあるかもしれませんが、どんな業界であろうとお客さんやクライアントに喜んでもらう、という点は共通していると思います。
そこで今回は、人気番組のプロデューサーのお二人の仕事のやり方から、企画の参考になる考え方をご紹介します。
TVプロデューサーってなに?

出典:Wikipedia
そもそもTVプロデューサーって何をやっているのかわかりそうで、よくわからないですよね。菅さんいわく、プロデューサーとは「ラーメン屋のオーナー」であるといいます。
オーナーは新規出店を決め、出店場所によってお店のコンセプトや料理、内装などの大枠を決めて、そこでようやく腕利きのラーメン職人を雇う。職人にコンセプトを伝えて、そこから先の詳細は職人にまかせる。プロデューサーとして、はじめの座組やコンセプトメイキング、雰囲気づくりなどをして、そこからはディレクターや出演者にある程度まかせるというイメージのようです。
一方、加地さんはプロデューサーとしてはかなり細かいところまで見るタイプのようで自分の仕事を「まんじゅう作りの職人さんのようなもの」と表現しています。1つ1つの作業を丁寧に行い、気を抜かないで納得のいくものをつくる、と考えているようです。プロデューサーといってもその人によってやり方やスタイルが異なりますね。
それでは、このタイプの異なるお二人が、どんなやりかたをしているのか見ていきましょう。
企画は日常の中にしかない

タイプの異なるお二人ですが共通している点は「企画についての考え方」です。菅さんは「自分の日常からかけ離れたものすごいことなんて思いつくわけがない」といい、違う職種の人たちとブレストなどを盛んに行なうテレビマンに疑問を投げかけています。
加地さんも「アンテナを張っての情報収集」といったことは、まったくしていないそうです。むしろトレンドに背を向けた企画ばかりしています。自分の感情や実感がともなっていない、本気で面白いと思っていないものはダメだといいます。
これは本当にその通りだと思います。自分が本気でいいと思えないものを、お客さんに提案したり、販売するというのは、この程度で満足するだろうと、どこかお客さんを舐めているのでしょう。流行やマーケティングデータを参考にするのは良いですが、自分自身に「それ、本当にお金出して買う?」という問いかけは常にしていきたいですね。
いい企画はいい空気がつくる

いい企画をつくるのに、いい企画が出やすい空気をいかにつくるか、についてもお二人が共通して意識している点です。
菅さんは会議の席で口が裂けても「つまんねえよ」と言わないと心に決めているそうです。その日に入った新入りのADの意見でも「そんなのつまらない」と言った瞬間にその人は、二度と発言しなくなります。そのためつまらない意見にも耳をかたむけ、反応してあげるそうです。そうすることで若い人も自由に発言できる空気が生まれ、いい会議になるといいます。
加地さんが「アメトーク!!」をスタートした時に、最初に決めたのは、会議は狭い部屋でやることと、甘いものを食べながらやることだったそうです。深夜番組はゆるくて楽しい空気感が出ている方が面白い。それなら会議の雰囲気をそれにあわせて行なうべきだと考えたそうです。また会議に参加する人選びも意識していて、面白いと思える感覚や方向性を共有できる人を選び、話の流れをとめないような工夫をしています。
いい企画をするための空気づくりはどの程度行っていますか?ちょっと意識するだけで、だいぶ会議の空気は変わりそうです。
企画書は通行手形にすぎない

プロデューサーは企画が通らないと自分のやりたい番組ができませんので、どうやって自分の企画を通すかという話は非常に参考になります。
菅さんは企画書はやりたいことを実現するための通行手形、手続きに過ぎないのだから、企画意図は後付けのウソっぱちの理由でいいと(笑)いまの若い人はそれがわかってないといいます。
企画書に書いていない部分を想像する力が欠けているので、なんでもかんでも企画書に書いてしまい、結果的にそれに縛られている。コンセプトはしっかりつくる必要があるが、面白くなるなら必ずしも企画書通りにやらなくいいといいます。
加地さんが企画書を出す時は、A4用紙2枚以内におさめて分量的にはペラペラで薄いものを出すそうです。こっちの方が通る可能性が高いといいます。面白そうな概要だけを書き、後は読む側に想像してもらう、企画の「余白」をつくっているのです。
そして、企画書に書ききれなかったけどどうしても伝えたいことは、あえて別でメールで訴えるといいます。熱意などを真剣に伝えるには、文字の方がよいと考えているようです。そして、加地さんもやっぱり、企画意図は後付けでもよいのではといってます(笑)
チャンスをつかみにいく

菅さんは「仕事をしない上司、先輩がいたらラッキーだと思え」という鉄則を持っているそうです。そういう人の下だと色んな仕事を上司の代わりにやらせてもらえるので、新しいことが経験できるチャンスだと思って何でもやっていたそうです。
加地さんも同じことをいっていて、「自分がそれやります!」と半ば勝手に決めてしまい、仕事をやっていたそうです。そうやって経験値をどんどんあげていくことで視野が広がり、よい企画がだせるようになるといいます。
企画は自分の中にある
こうやってお二人の仕事のやりかたをみていくと、面白いものを企画するというのは特別なことではなく、普段の生活の延長線上にあることがよくわかります。
自分以上の企画はでてこないし、無理して考えたものはお客さんに刺さらない、本質的ではないということだと思います。
今回ご紹介した内容は特別なことではなく、意識すれば今日から仕事に取り入れられる内容なので、ぜひ実践してみてください!お二人の仕事術をもっと詳しく知りたいという方は、それぞれの著書『笑う仕事術』(ワニブックス)と『たくらむ技術』(新潮新書)をお読みください。
[文]頼母木俊輔 [編集]サムライト編集部