現在、プレゼンの方法については、多くの本が出版されています。
プレゼンの方法のほか、話し方や人前で話すときの立ち振る舞い、聞き方の姿勢など、本当に多くの情報が溢れています。
また、私自身の経験ですが、プレゼンのみならず1対1での会話の際にも相手を説得することができないことがあります。それはおそらくプレゼン能力とも似ている、“相手に納得してもらえる話し方”ができていないからでしょう。
では、より自信をもって相手に伝える方法とは?
今回は箱田忠昭氏の著書『あたりまえだけどなかなかできないプレゼンのルール』を元に、改めて、効果的なプレゼン方法について考えてみたいと思います。
この本では101のルールが紹介されていますが、今回は、その中から4つにテーマを絞り、ご紹介したいと思います。
Contents
知っておくと便利なプレゼンルール
1.話し方のコツは2箇条 PREP法&喫茶店方式
まずプレゼンの時にはPREP法がおすすめだと、箱田氏は述べています。PREP法についてはこちらの記事を参考にしてみてください。
その一方で、相手を引きつける話し方として箱田氏が勧めているのが「喫茶店方式」の雄弁術です。
喫茶店で話している老夫婦やカップルなどを見ると、とても熱心に話していて、説得力があることから、彼らのように話すことで、説得力が増すというのが「喫茶店方式」の雄弁術です。箱田氏によれば、大きくわけて5つの術に分けられます。
1 相手と対話しており、一方的なおしゃべりになっていない
2 具体例、出来事、実例、体験が多く話される
3 部分描写が明確で、状況が手にとるように表現されている
4 喜怒哀楽などの感情がそのまま出ている
5 当然のことながら、口語体、会話調で普段の言葉で話している
(前掲書、39ページ)
プレゼンをする際も、大勢の人に話しているというよりも親しい人に話しかけているような調子で話すことで劇的に話し方は変わるといいます。
喫茶店に行った際などは、熱心に会話をしている人の姿をみて、より説得力のある話し方の研究をしてみるのも良いのではないでしょうか。
2.アイコンタクトは「イエス取り」で!
話すときは、会場のいる後ろの人を見て話すようにするとよい、という話はよく聞くテクニックですが、その際、具体的にどのような後ろの人を見ればよいのでしょうか。
最初に見るのは、左側の列の一番うしろにいる人の目を見て話を始めるとよいと言います。
なぜなら、「その人に十分に聞えるような大きな声を出すことによって、プレゼンテーションを行っていく声の大きさがわかるから」(前掲書より、96ページ)と箱田氏は述べています。
また、アイコンタクトのポイントとして、箱田氏は、「ワンセンテンス・ワンパースン」の原則を紹介しています。
つまり、プレゼン中、ワンセンテンスを言い切るまではその人から視線を逸らさないということです。そして、ワンセンテンスを言い終わったところで、うなずくように首を縦に動かす。そうすると、その動きにつられて、話しかけられた相手の人もつい頷いてしまいます。
これは一人ずつ相槌をとっていくため、アメリカで「イエス取り」と呼ばれているそうですが、箱田氏の場合、左、右、左、右と後ろから前へ順々にアイコンタクトをしていきます。視線をジグザグに移行させるため、「ジグザグ法」と名付けているそうです。
もともと、人の目を見るのは3〜5秒間が適切だと言われています。よって、ワンセンテンスはできるだけ短くすることが必要となってきます。
3.見た目が大事。だからこそ、”手”を有効に使おう!
アメリカのカルフォルニア大学ロサンゼルコ校の教授アルバート・メラビアンの研究によれば、人はプレゼンテーターが話すのを見ているときに、何に一番影響を受けるかというと、
言葉(何を話すか、内容)……7%
話し方(声の調子、高低、音色など)……38%
ボディランゲージ(態度、姿勢、身振り手振り、顔つき、外見、視線、服装など)……55%
だという結果が出ています(前掲書、75ページ)
そのなかでも特に大きいボディランゲージにおいては、外見や服装などは以前からよく言われていることですが、例えば、手をどのような位置におさめるかによっても、大きく印象が変わってしまいます。
日本人はよく組んでしまいがちですが、前にも後ろにも組まないようにし、できるだけ自由にするのが大切です。
そもそも、喫茶店などでも一生懸命に話せば、自然とジェスチャーがでてくるものです。
さらには、手は「ビジュアルハンド」とも言われており、話の内容を強化する役目をもっています。例えば、横に広げると拡大や関係の広さ、縦に広げると数字の飛躍、売上の伸び率などを表すことができるのです。
また、声も感情を伝える非常に大切な武器のひとつです。箱田氏は、「感情を正直に伝えるには、声の調子が高低、大小などが微妙に伝わった方がいいのです」(前掲書、121ページ)と言っている通り、小さな会場でも必ずマイクを使うといいます。マイクなしで声を張り上げてしまうと、こちらの微妙な感情が伝わらなくなってしまうためです。
見た目というのは、外見や服装だけではなく、手や声などにも大きな影響があります。プレゼンの練習時にはぜひ見直してみてください。
4.視覚物は単純に、効果的に使用する

現代ではパワーポイントやスライドを使ってさまざまな映像・画像・図表などを出すことができますが、プレゼンテーションにおいて重要なのは、“相手の右脳に訴えること”です。
右脳には、直感、絵画、イメージ、色彩等を記憶する機能があり、それらを使用することで、早く覚えてもらって長く忘れないでもらうようにします。
右脳により刺激を与えるためにも、できるだけ色彩豊かに、絵、図形、グラフなどのビジュアルに訴えるのが良い方法です。
例えば、できるだけ数字の羅列ではなく、グラフにする、あるいは、図表にすることで視覚物を活かすという方法があります。箱田氏は、「すべての文章は図解できる」(前掲書、136ページ)と述べています。
日本人のプレゼンでよくあるのが大見出しと箇条書きのスライド。これも箱田氏によれば、イラスト化することができると言います。キーワードを丸で囲むサークルテクニックなどもあります。
ただし、情報が多すぎたりビジュアルが多すぎるのもよくないので、役立つ情報をうまくまとめること。それは、次の箱田氏の言葉からもわかるでしょう。
「配布資料はできるだけ詳しく、プレゼンテーション用視覚物は単純に、が原則です」(前掲書、138ページ)
場合によっては、ブラックアウトを活用することも効果的です。ブラックアウトは、スライドには次の話題に移っているのに、スクリーンの画面は前の話題のスライドが残ったまま、あるいは画面に関係のない話をしている時などにスライドを切って、黒い画面にすることです。
たまには映像・画像をオフにする、というのも手法の1つです。前の画像を残したままにしてしまうと、その映像がより記憶に残ってしまいます。
また、映像・画像などスライド以外のものを使うときは、視覚物はできるだけ大きくて見やすいものにすることが重要です。
どんなものであれ、実物大というのは得てして小さいものが多く、観客はそれを観ようとして目を凝らしてしまい、肝心の話の内容が耳に入ってこなくなってしまいます。実物大は必要なときだけ見せ、できるだけ回覧はしないようにしましょう。
5.質疑応答は、“自分の言葉に言い換える”
質疑応答の前提として、事前に想定質問を考え、答えを準備しておくことが大切です。
プレゼンの準備をしている段階で、おそらくここは聞かれるな、という部分があると思います。それを先にプレゼン中に答えてしまうというのも方法ですが、あえて残しておいて、質問時に答えるというのも、またひとつの方法です。
また、質問が出たら、もう一度聴衆に向かって質問を復唱することが基本だとされていますが、そのときに、もし否定的な質問だった場合は肯定的な言い方に言い直すことが大切です。
例えば、
質問者:「先ほどの説明では、アイデアとしては面白いけれども、実現するのは難しいのではないですか。第一、費用がかかり過ぎて無理でしょう」という質問の場合、プレゼンター:「ただいま、松山さんから、このアイデアをどのようにして実現するのか、また、費用の点ではどうなのか、という質問をいただきました」(前掲書、186ページ)
と言い換えることができます。
その場でとっさにプラスの言い方に言い換えるのはテクニックが必要ですので、事前に何度か練習しておくと良いでしょう。
おわりに
今回は、箱田忠昭氏の著書『あたりまえだけどなかなかできないプレゼンのルール』をもとに、プレゼンのルールをいくつかご紹介しました。特に、日頃プレゼンに慣れてしまっていると、つい忘れがちな内容に即したものを紹介してみました。
また、プレゼン以外に、ふだんの会議や会話のなかでも活かせるルールがいくつもあるのではないでしょうか。相手を説得させたい、自分の意思を明確に伝えたい、という場合にもきっと応用ができると思うので、自分なりに応用をしてみてください。
参考文献:箱田忠昭『あたりまえだけどなかなかできないプレゼンのルール』

