演劇に学ぶ7つのプレゼン術

良いプレゼンには良い役者がいる

魅力的なプレゼン演劇に例えることができます。プレゼンテーターが主演の役者なら、プレゼン内容を補佐するスライドは演劇の舞台上に風景を作り出す書き割りであり、プレゼンの目的は演劇と同じように見ている人を惹きつけ、興味を持たせることにあります。

Appleのスティーブ・ジョブズやMicrosoftのビル・ゲイツ、SoftBankの孫正義に任天堂の岩田聡など一流の経営者たちのプレゼンは、聞き手がまるでひとつのお芝居を見ているかのように惹きつけられます。

演劇の中に魅力的なプレゼンのヒントを見つけてみましょう。

つかみの言葉


画像引用:http://www.ted.com/talks/dan_pink_on_motivation?language=ja

演劇に台本が欠かせないように、プレゼンにも台本は欠かせないものです。プレゼンの台本の良し悪しはストーリーの組み立てと、その台本をどれだけ読み込むかにかかっています。

プレゼンの台本を作るにあたって必要なものが3つあります。1つは見ている人の心を掴む印象的なつかみの言葉、2つめは臨場感や自分ごと化させられる体験談やエピソード、3つめは聞き手にとってのメリットです。この3つの要素を組み込み、聞き手を引き込めるストーリーこそが魅力的なプレゼン台本といえます。

たとえば、キャリアアナリストのダニエル・ピンクは「やる気に関する驚きの科学」というプレゼンで、

「最初に告白させてください。20年前ほど前にしたあることを。私は後悔しています。」

というセリフから話を始めています。思わず、彼はどんなことをしたのか?と続きが気になってしまいます。聞き手はもう第一声から彼のプレゼンの世界に引き込まれているため、あとは彼の語るストーリーを聞くしかありません。

世界観を共有する

前項のダニエル・ピンクのつかみのセリフは、聞き手が自分ごと化できるエピソードでもあります。あなたが新商品のプレゼンをするのであれば、この自分ごと化できるエピソードは商品に絡めたエピソードの方が好ましいですが、何より大事なのはプレゼンターと聞き手の間で世界観や価値観を共有することです。

また、聞き手にとってのメリットですが、どれだけ聞き手と同じ目線に立ってメリットを提供できるのか?で良し悪しが決まります。どんな年代のどんな立場の人がプレゼンを聞くのかを考えてメリットを盛り込みましょう。

プレゼンテーションをする時は決してひとりではなく、聞き手をも巻き込まなければいけません。それを意識して、台本を作り、役者が台本を読み込み一語一語に魂を込めるように、プレゼンを頭の中でシミュレーションしておきましょう。

全員の目を見る

目を合わせずに話をしてくる人を信用できるでしょうか?絶対にどこかに嘘がある、信頼できる人物ではないと感じる人が大多数でしょう。

演劇を見ていると、たくさんの観客がいる中で自分だけと目があったと思わせる瞬間が何度もあります。演技の上手な役者はこうして客席に目線を配ることで、たくさんの観客に「自分だけに語りかけている」と感じさせ、芝居に引き込む手段としているのです。

会議室などで行われるプレゼンならば、実際に全員と目を合わせることは可能でしょう。重要な単語を言う時には、会議室の誰かの目をじっと見て発言することで、プレゼン内容に信ぴょう性を強く持たせると同時に、「自分に向かって発言している」という意識を与えることができます。

セリフの合間の「えーと、」「あの、」はNG!

舞台の役者がセリフの前に気まずそうに「えーと…」なんて付けていたらとても演劇のストーリーに入っていくことはできません。プレゼンにおいても、プレゼンターが「あの…」と言った数だけ聞き手の関心が離れていくのは事実です。

極力言わないようにしていても、無意識に声に出てしまう人は多いでしょう。「えーと」のような声が出てしまうのは、発言する前に息が先走って漏れてしまうからです。話し始める前には意識して大きく息を吸うということを実践すれば、このような声は出なくなるでしょう。

息を吸うことで肺が膨らみ、胸を張ることにもなるので、堂々とした態度でプレゼンをすることができます。

感情表現を豊かに

プレゼンといえば、事実を確実に伝えることや根拠や説得力など理性的な部分が求められるイメージを持つ人も多いでしょう。しかし、単純に事実を伝えるだけのプレゼンでは人の心を動かすことはできないのです。

事実を伝えるだけであれば、わかりやすい資料を1枚製作すれば事足ります。わざわざプレゼンという形で新しいものを紹介するのであれば、事実を確実に伝えるだけでなく、プレゼンをする人ならではの感性を結びつけなければ意味がありません

ついかしこまって、ビジネスライクな話し方・表情でプレゼンを行ってしまうのはとても勿体無いことです。聞き手にとって喜ばしいことであれば、笑顔で話し、聞き手にとって脅威や懸念材料となることを話すときには悲しそうな表情で話しましょう

人の感情とは目の前の人の表情につられるもので、プレゼンターが大きく感情表現をすることによって聞き手にも同じ感情を共有させることができます。

しかし、ビジネスの話を表情豊かに話すことはなかなか難しく、思うような表情が作れないこともあるでしょう。プレゼン中の表情を豊かにするためにも、練習をするときはぜひ鏡を見ながら話してみましょう。舞台役者のように少し大げさかな、と思えるくらいがちょうどいいですよ。

動きに緩急を

棒立ちでするプレゼンよりも、動き回りながらするプレゼンの方が聞き手の注意を引くことができます。人間は動いているものに目がいってしまうものです。

動き回るといっても、落ち着きなく動き回るだけではいけません。話している内容に合わせたジェスチャー、訴えかけたい内容の時には聞き手に近づく、リラックスさせたい時には奥に下がる、など聞き手がどう受け取るかを考えた動きが必要です。

また、聞き手を飽きさせないよう、ジェスチャーや動きを加えながら話し、重要なことを話すときに動きを止める緩急が印象に残るプレゼンを作るためにはかかせません。

聞き手の目の前からスライド資料までを舞台と考えて、舞台を目一杯使いましょう。

間をとる

演技のうまい役者は「間」に様々な感情を表現するといいます。「間」をとることなく矢継ぎ早に話して、早口になっていませんか?これでは、プレゼンや台本にどんな工夫を凝らしても聞き手はついていくことができません

話すべき内容に追われてしまい、焦る気持ちはよく分かりますが、そんな時こそ「間」をとることを意識しましょう。間をとることは焦る気持ちを落ち着かせるだけではなく、プレゼンの内容も聞き手に強く印象づけます

テンポよく話が進んでいたところに、溜めとしての間が入ると、聞き手に程よい緊張感を与えることができます。無言の時間を作るのはかなり自信のいることですが、自分がリードしている場だということを念頭に置いて、勇気をもって間を取りましょう。

プレゼン中は役者になりきろう

ただ理性的に伝えるべきことを伝えるだけでなく、あなたにしか伝えられないやり方で、聞き手にプレゼンをして魅力を伝えることが大事なのです。

プレゼンの場はあなたの舞台です。あなたも役者になりきって、演じきる事で聞き手を引き込むプレゼンができるようになるでしょう。

舞台や映画を見るにしても、どんな動きで、どんな感情を表現しているのか?を観察してみると、良いプレゼンの糧になるかもしれませんね。

[文・編集] サムライト編集部