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ストーリー・テリングはマストで磨くべきビジネススキル
ストーリー・テリングが人の心を動かす。ビジネス、生活、人と人が交流する場面におけるストーリー・テリングの重要性は再度説明するまでもない周知のことでしょう。
本稿ではトイ・ストーリー、ファイティング・ニモを生み出した映像制作会社ピクサー出身者のストーリー・テリングのノウハウをご紹介します。
クラウドファンディングはストーリーが肝心
最近、筆者はストーリー・テリングはビジネスパーソンが最優先で習得すべきビジネススキルの1つだと確信する出来事に遭遇しました。
筆者は日常的にKickStarterやIndiegogoなどのクラウドファウンディングサイトを見ています。サイト上には商品を製造するための資金を募るプロジェクトが多く立っています。
プロジェクトを見ている中で、同じようなハンドメイドの革靴のプロジェクトを2つ発見。以下の2つのプロジェクトのプロモーションビデオを見比べてください。
・プロジェクトA
・プロジェクトB
この2つのプロジェクトの資金調達額を比較してみます。
プロジェクトA 4人から545ドル(約6万1000円)
プロジェクトB 168人から3万9297ドル(4398万円)
圧倒的な違いです。
ストーリーは人を動かす

一体、何がこれだけの資金調達額の違いを生み出したのでしょうか。商品自体の質が資金調達額に違いをもたらしたわけではありません。違いをもたらしたのはストーリーの有無でした。
プロジェクトAのプロモーションビデオはただ単に革靴、革靴の製造風景を撮影しているだけで靴について説明する音声のナレーションはありません。
プロジェクトBのプロモーションビデオでは、革靴を製造することになった背景、どの様に革靴を製造しているのか、その革靴の何が良いのかを音声のナレーションで説明しています。
ストーリーを持ったビデオが人の心を動かし資金調達に成功したのです。ビジネスにおいてストーリー・テリングの有無が大きな違いを生むとわかる例です。
しかし、ストーリー・テリングは重要と言えど、ストーリーをどのように作っていくとよいのでしょう。次に、そのストーリー・テリングの技法をお伝えします。
ストーリー・テリングを習得するには

そこで、今回そのストーリー・テリングを習得するためのノウハウをピクサー出身者の言葉から拝借します。
ピクサーが他社に比べてずば抜けているのはコンピューター・グラフィックスの映像技術ではなく、作品のストーリーでした。
そんな、ピクサーで作品のストーリーを執筆していたエマ・コーツ氏は、ピクサーの作品の全てに通底しているストーリーの「型」があることを発見しました。
「昔々~~、毎日~~、ある日のこと~~、そんなわけで~~、そんなわけで~~、そしてついに~~」Pixar story rules (one version)
というものです。
たとえばファイティング・ニモのストーリーは以下の様になっています。
「昔々、あるところに妻を亡くしたマーリンという魚がおり、一人息子のニモを過保護に育てていた。
毎日、マーリーンはニモに、海の危険について言い聞かせ、くれぐれも遠くまでは行かないようにと訴えていた。
ある日のこと、父親に反抗したニモは、戒めを無視して広々とした海域で泳いでいた。
そんなわけで、ニモはダイバーに捕まり、シドニーの歯科医の水槽で別途として飼われることになった。
そんなわけで、マーリンはニモを取り戻そうと旅に出て、道中に他の海の生き物たちの助けを得るようになった。
そしてついに、マーリンとニモは再会し、再び一緒に暮らせるようになり、愛情は信頼のうえに成り立つことを学んだ」
ダニエル・ピンク2013年人を動かす、新たな3原則[Kindle版] 第7章Kindle位置番号2657
このストーリーの「型」を覚えておくと、ストーリーを作りたいときにサッと使えます。このストーリーの「型」を活用することで、共感を得られるストーリーを作りやすくなります。
ピクサーのストーリー・テリングをビジネスに活用する
ピクサーのストーリーの「型」をビジネスに活用することもできます。顧客に商品・サービスの良さを伝えるストーリーを作る際には以下のような「型」を活用しましょう。
昔々~~顧客が商品・サービスを使用する以前の状況
毎日~~顧客が不安、不満に思っていたこと
ある日のこと~~商品・サービスと出会ったキッカケ
そんなわけで~~商品・サービスを使用したことによる変化
そんなわけで~~商品・サービスを使用したことによるさらなる変化
そしてついに~~顧客が不安、不満に思っていたことが解決した様子
ストーリーを聞いた人に
・知ってもらいたいこと
・感じてもらいたいこと
・行動してもらいたいこと
の3点を意識しながらストーリーを練っていくと、より伝わりやすいストーリーが出来上がります。
たとえば、オンラインのプログラミングスクールの宣伝をストーリー風にできます。
「昔々、小さなメーカーで営業として働いているAさんがいました。
毎日、Aさんは、これからも同じ仕事を続けていけるのだろうかと、将来に対して漠然とした不安を抱いていました。
ある日のこと、Aさんネットサーフィンをしている時にオンラインのプログラミングスクールを発見してWebサイト制作コースを受講することにしました。。そのスクールは少しユニークで生徒各自に1人のメンターがつくというものです。
そんなわけで、Aさんはスクールの課題をこなしていくうちにWebサイト制作のためのスキルを身につけていきました。Aさんが働いている会社は小さな会社だったので、AさんがWebサイト制作できるという噂を聞きつけた社長からWebサイト制作、集客を任されました。Aさんはどんどん仕事の幅を広げていきました。
そんなわけで、Aさんは週末には副業でWebサイト制作をしたり、Web集客のためのマーケティングやライティングを勉強しました。雪だるま式に様々なスキルを身につけることに成功しました。
そしてついに、Web周りに詳しくなったAさんはWebサイト制作から集客までの全てを一気通貫で支援する中小企業向けのWebサイト制作会社を設立しました。
Web周りのすべてを支援してくれるということもあって、噂が噂を呼びたくさんの中小企業のクライアントがAさんの会社に仕事を発注するようになりました。Aさんは将来に対する不安もなくなり、活き活きとした仕事生活を送るようになりました。
ビジネスパーソンにとって、ストーリー・テリングを磨く場は至る所にあります。ビジネスメールを書く、朝礼でのスピーチなど。
毎日、ストーリー・テリングをスキルとして向上させるよう心がけてみてはいかがでしょうか?きっとビジネスに活きてくるはずです。
