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そのPDCAでは遅すぎる!
フレームワークの定番として、誰もが一度は耳にしたことがあるであろう「PDCAサイクル」。これを組織や個人を最速で成長させるフレームワークだと言うのが、株式会社ZUUの代表取締役社長兼CEO・冨田和成(とみた・かずまさ)さんです。
しかしただ漠然とPDCAサイクルを回しているだけでは、到底このフレームワークを活用していることにはなりません。冨田さんいわく、PDCAサイクルの本当の力を引き出すには高速を超える「鬼速」で回すことが必要不可欠です。
ここではPDCAの基本をおさらいするとともに、冨田さんが著書『鬼速PDCA』で挙げている、「PDCAを鬼速で回す条件」を10個紹介します。
PDCAを鬼速で回す条件

0.PDCAの基本を知る
PDCAは4つのフェーズで構成されるフレームワークです。PはPlan(計画)。最終的に到達したいゴールを決め、そのために解決するべき課題と解決策を立てるフェーズです。より具体的に綿密にすることでこの後のフェーズが格段にスムーズになるため、冨田さんはこのフェーズがPDCAの5割を占めると考えています。DはDo(実行)。計画フェーズで立てた解決策をより小さなアクションに分解し、具体的なタスクとして落とし込み、片っ端から実行していきます。
CはCheck(検証)。検証フェーズがなくても実行フェーズを回すことはできます。しかし実行フェーズの精度を高めて、より速く目標を達成するために、検証は必要不可欠です。
最後のAは一般的にはActionとされますが、冨田さんはAdjust(調整)としています。このフェーズではゴールレベル・計画レベル・解決策レベル・行動レベルで調整を加えるか、順調な場合は経過を見守るかを決定します。では基本をおさらいしたところで、この4つを鬼速で回すための条件を見ていきましょう。
1.因数分解で精度の高い仮説を立てる
PDCAにおける「因数分解」とは計画フェーズで用いる、「ゴール」と「現状」の構成因子をリストアップしていく方法です。因数分解でわかりにくければロジカルシンキングで用いる「ロジックツリー」と考えても構いません。「ゴール」と「現状」を次々に分解していき、ロジックツリーが5段目になるまでリストアップしていくと、「どんな課題があるのか」「ボトルネックはどこか」「課題解決のための指標は何か」といったことが見えてきます。この作業を計画フェーズでどれだけ細かく行っておくかが、実行フェーズ以降がスムーズにいくか否かを左右します。
2.仮説思考、リーン思考で動く
「仮説思考」とは限られた情報や知識をもとにして仮説を立て、実行・検証を繰り返していく考え方です。リーン思考は情報が足りないからといって行動に起こさないのではなく、行動に起こしながら情報を集めていこうとする考え方です。この2つを意識してPDCAを回していれば、情報不足で思い悩んで立ち止まることはなくなります。
3.常にインパクトの大きい課題、行動から着手する
KGI(Key Goal Indicator)、つまり達成すべき目標を数値で指標化したものから逆算して、常にタスクに優先順位をつけておきます。これによりスケジュール通りに計画が進まなくても、PDCAサイクルが停止することはありません。優先度付けには手間暇がかかりますが、PDCAサイクルが停止するという最悪の事態を防ぐためには必要不可欠です。
4.行動(DO)のアイデアが湧いたらすぐにタスク化(TODO化)する
例えば「一流のビジネスパーソンになる」という目標に対して「数字に強くなる!」という解決策が出たとします。この解決策をDOにすると「簿記の入門書を読む」となります。しかしこれではまだ具体性に欠けます。これをさらに具体化し、スケジュール化したものがTODOです。
例えば「今週末までに入門書を3冊買う」「来週末までに3冊全て読む」といったタスクレベルにまで落とし込むのです。このDOを保留にして、TODO化しないでいると、どんどん時間だけがすぎていきます。これを防ぐにはDOのTODO化を習慣にしなければなりません。
5.行動目標も必ず数値化
行動目標(KDI:Key Do Indicator)とはDOを定量化したものです。例えば「自分が新しい仕事にチャレンジする」という目標に対して立てた解決策が「後輩に自分の今の仕事を覚えてもらう」だったとします。
この解決策をDOにすると「上司の許可を得て指導をする」「どの仕事を任せられるか定期的に仕事の棚卸しをする」などが挙げられます。これをKDIにすると「上司の許可を得て指導をしたか?(1回)」「4ヶ月に1回棚卸しをしたか?」となります。

結果は様々な要因が重なるため、いくらコントロールしようとしても難しい部分があります。これに対して行動はコントロールが可能です。そのため結果に繋がる行動をKDIで管理しておけば、何が原因で結果が出なかったのかをスピーディに検証できるのです。
6.TODOの進捗管理は毎日行う
検証フェーズとは別に、TODOの進捗が問題ないかのチェックは1日最低1回、理想は数回行うようにします。例えば毎朝その日のTODOリストを用意し、全体の進捗と比較して遅れていれば調整するという作業です。このような微調整を繰り返すことで着実にPDCAサイクルが回っていきます。
7.こまめに検証を行う
ゴールの指標となるKGI、ゴールを支えるサブゴールの指標となるKPI(Key Performance Indicator)、そしてKDIのそれぞれに対して、可能な限り短いサイクルで検証を行います。これにより間違った方向に進んだり、非効率な作業をしたりすることで、せっかくの努力が無駄になるのを防ぐためです。
冨田さんの株式会社 ZUUでは、「半週ミーティング」といって週に2回、3日に1回、各30分の定例ミーティングでPDCAサイクルの検証を行っています。その主目的は課題の洗い出しとそのTODO化です。これを高頻度で行うことで、滞りなくPDCAサイクルを回しているのです。
8.要因分析時は「思い込み」を外す
要因分析とは検証フェーズで「なぜKGI・KPI・KDIを達成できなかったのか」あるいは「達成できたのか」を行う作業です。この時の原則は「思い込み」を捨て、ひたすらに「なぜ?」と問いかけ続けることです。
「なぜKGI・KPI・KDIを達成できなかったのか」という問いに対して、「時間がなかったから」という答えが出たら、再び「なぜ時間がなかったのか」と問います。「慢性的に忙しかったから」という答えが出たら「なぜ慢性的に忙しいのか」と問います。「そういうものだから」と妥協せずに徹底的に掘り下げることで、事態を打開する課題や今まで見えていなかった強みが発見できるのです。
9.次のサイクルに迅速につなげる
次のサイクルに回すためにタイムラグが発生しているようでは「鬼速」とは言えません。計画変更の必要性を感じたら即会議、簡単な調整で済むのであれば即TODO化します。ここでも仮説思考、リーン思考は重要です。
10.小さいPDCAを同時に多く回す
「PDCAサイクルは大きな課題の時だけ回すもの」というのは勘違い。本来のPDCAサイクルは大きな課題だけでなく、それを分解した中程度の課題、さらにそれを分解した小程度の課題、さらに分解した極小程度の課題……というように延々と小さな課題について回されるものです。
こうして小さい課題についてのPDCAサイクルを、同時に、できるだけ多く回すことで大きな課題の解決速度が急速に高まっていきます。そのためPDCAサイクルを使うときは、あらゆる課題に対して導入することが大切です。
■PDCAサイクルを「鬼速化」しよう!
ここで挙げた10個の条件を意識するだけでも、今までよりも仕事のスピードが格段にアップするはずです。1つでも2つでも、自分の仕事に取り入れてみてください。また、冨田さんの著書『鬼速PDCA』にはPDCAの各フェーズに沿って、より詳細な解説が加えられています。
単に仕事のスピードを上げるだけでなく、自分の成長スピードを「鬼速化」したい人は、ぜひ本著を手に取ってみてください。毎日の仕事や生活の中でPDCAサイクルを積み重ねていけば、そこにはきっと今とは違う景色が広がっているはずです。
