「自分の今の状態は、オーバーワークではないだろうか?」
そのような疑問を持つことはありませんか。自分でも気づかない間にオーバーワークに陥り心身に不調をきたすこともあるため、早めの対処が必要です。本記事で、オーバーワークの意味や症状から対処法について理解を深めてみましょう。
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仕事におけるオーバーワークの意味とは
仕事におけるオーバーワークとは「働きすぎ」の状態のことです。ではどのくらい働くとオーバーワークにあたるのか明確な基準はありませんが、月65~80時間以上時間外労働をしている人はオーバーワークの可能性があります。
厚生労働省の「脳・心臓疾患の労災認定基準」では、「2~6か月間平均で月80時間を超える時間外労働の水準には至らないが、これに近い時間外労働」をしていた場合、「労働時間以外の負荷要因」を加味して労災かどうか判断すると定めています。
【参照元】厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント」
仮に月80時間、時間外労働をしたとすると、勤務日数20日の場合、1日あたり4時間のペースで時間外労働をすることになり、オーバーワークになる可能性が極めて高いと言えます。
また、「これに近い時間外労働」とあるように、月80時間を超えていなかったとしてもオーバーワークにはなりえます。具体的には、退勤から次の出勤までのインターバルが短い場合や、休日がなく勤務が続いている場合が、心理的にも・身体的にも負荷を伴う業務です。
仕事におけるオーバーワークの症状例
ここではオーバーワークの状態にある人の症状例を紹介します。ご自身に当てはまる症状がないかチェックしてみてください。
集中力が続かない
オーバーワークに陥った人は集中力が低下しパフォーマンスが下がります。
具体的には、我知らず放心状態に陥ってしまったり、考える作業がはかどらなくなったりします。また目の前のことに集中できていないため、単純な作業でミスをしてしまうこともあるでしょう。
こうなると、結局生産性が悪化し、休日出勤や時間外労働をする羽目になり、結果さらにオーバーワークに陥るという負のスパイラルになってしまうのです。逆に言えば、適度な休憩をとることが仕事を進める上でも肝要と言えます。
心が安定しない
オーバーワークになった人は常に気持ちに余裕がもてなくなり、精神的に不安定になってしまう傾向があります。具体的には、イライラして言葉遣いや態度が悪くなってしまったり、精神的に落ち込んだり、うつ病になる可能性もあります。
このような状態になると結果、人間関係を悪化させてしまうこともあります。職場であれば、比較的自制しやすいですし、周囲も似たような状況で理解も得やすいかもしれません。しかし仕事でのストレスを家庭に持ち込んでしまうと、家族関係にも悪影響を及ぼして、プライベートの関係性でも問題を起こしてしまう恐れもあります。
休んでも疲れがとれない
オーバーワークの人は休んでも疲れがとれないことがあります。休日によく寝たはずなのに、慢性的に体が重い、朝からずっと体がだるいといった症状です。
厳しいノルマや長時間労働により精神をすり減らしているので、寝付きが悪くなったり、睡眠の質が下がったりすることもあります。疲れをとるためには本来しっかり睡眠をとらなければいけないのに、よく眠ることができず、それが原因で頭痛などの不調に悩まされることもあります。
時間外労働の過多に加え、慢性的な疲労感のある人はオーバーワークを疑うべきでしょう。
仕事におけるオーバーワークの主な原因
オーバーワークは時間外労働が多過ぎることが原因の一つと解説しましたが、ここではもう少しその詳細についてみていきたいと思います。ご自身の日々の業務の中で当てはまるものがないか確認してみてください。
残業が当たり前になっている
まず、残業が当たり前になっていることが原因の一つです。残業が常態化する要因として以下の2つが考えられます。
- 企業体質により、残業することを前提に仕事が割り振られる
- 従業員個人の考えで、残業すればいいと思って日中のパフォーマンスが低い
前者は企業の体質の問題です。残業が当たり前、残業が美徳とされ評価される、といった企業が日本にはまだ多くあります。後者のように個人の問題ということもあるでしょう。残業したほうが評価してもらえる、残業代がもらえる、などの認識が背景にあるかもしれません。
しかし、残業が常態化しているのは裏を返せば、効率的に仕事ができていない、無駄な業務が多い、ビジネスモデルに問題があり収益性が低い、といった根本的な原因があると考えられます。
タスク・スケジュール管理ができていない
タスク・スケジュール管理が不十分であることも、オーバーワークの原因となります。スケジュール管理が不十分だと、結果的にキャパシティを超えて仕事を引き受けてしまったり、直前まで手を付けずに最後になって慌てたり、といった問題が起きがちです。結果的に精神的な負担や時間外労働の増加を招いてしまうでしょう。
比較的若い社員は雑務を割り当てられる機会が多いため、業務の優先順位や重要度を明確にしないと、仕事に押しつぶされるように感じるかもしれません。
人によって仕事の進め方はさまざまで、簡単なことを先に何件か片づけると調子が上がる人もいれば、重要な案件にまず取りかかり簡単なものは後回しにしたほうがよい人もいます。自分や職場の進め方に合った方法を見つけ、スケジュール管理をしていきましょう。
人手不足で仕事の量が多過ぎる
人員に対して仕事量が多い場合もオーバーワークになりがちです。根本原因は企業の人手不足と言えます。どんなに仕事ができる人でも、一人の人ができることには限りがあります。その範囲をあまりにも逸脱すると業務過多でオーバーワークになってしまうのです。
無駄な作業がないか、効率化できる作業がないかを確認するのは基本ですが、それでも仕事が終わらないというのであれば業務量が多過ぎると言えます。会社に相談しても改善が見込めない、また慢性的に続くような状況であれば、転職などにより労働環境を変える必要があるかもしれません。
仕事でオーバーワークになりやすい人の特徴
ここではオーバーワークになりやすい人の特徴を紹介します。特に複数当てはまる場合は、知らないうちにオーバーワークになっている可能性があるので注意が必要です。
頼まれたら断れない
よくあるのが、仕事を依頼されると断り切れず業務量が増えてしまうというものです。以下のような特徴に心当たりはないでしょうか。
- 優柔不断である
- 小心者である
- 責任感が強い
優柔不断な人は頼まれた仕事をついつい受けてしまいます。また気の小さい人も強く言われると断れません。責任感が強い人であれば、「自分がやらなければ誰かに回ってしまう」と感じ、無理をしてでも仕事を引き受けてしまいがちです。
中にはすでに抱えている仕事の業務量を正確に見積もれず、まだできると勘違いして引き受けてしまう人もいるでしょう。
いずれにしても仕事を断れない人は、周囲から「あの人に言えば何でもやってくれる」と見なされるようになり、さらに頼まれてしまう可能性が高まります。
一人で抱えてしまう
何でも一人で抱えてこんでしまう人もオーバーワークになりがちです。なぜならすべての作業を自分でやろうとして業務量が増える半面、無理をしていても周囲に認識されないからです。
相談できない理由はいくつか考えられますが、上司や周囲の人をあまり信用できなかったり、相談したら相手に迷惑だろうと思っていたりしているのかもしれません。またプライドの高い人も、自分の弱みが出てしまうような相談は避けてしまいがちです。
しかし、オーバーワークを防ぐには、上司や同僚に相談したほうが周囲の理解や助けを得られ、業務もスムーズにいきます。
完璧主義で真面目
もともと完璧主義や真面目な人もオーバーワークになりがちです。なぜなら真面目すぎる人は、適度に手を抜くことができないからです。常に高いクオリティしか認められないため時間がかかり、その結果オーバーワークになってしまうのです。
実際には、業務によって重要度の違いがあります。必ずしもすべてを完璧にこなす必要はなく、業務内容によってはある程度のレベルを満たせばよしとすることも必要でしょう。
仕事におけるオーバーワークの対処法
次にオーバーワークにならないためには何を意識すべきか、その対処法を紹介します。
タスクを整理して優先順位をつける
タスク管理をして優先順位をつけることは改善に役立ちます。
どのような業務にも重要度や緊急度の度合いがあり、仕事を大別すると以下の4つに分けることができるでしょう。
- 重要度も緊急度も高い
- 重要度は低いが、緊急度は高い
- 重要度は高いが緊急度は低い
- 重要度も緊急度も低い
このように分けた場合、重要度も緊急度も高い業務は真っ先に取り組み、多少順番が変わることもあるとはいえ基本的に上から順に取り組むことになるでしょう。
現在抱えているタスクを上記4つのうちどれに当たるか分類します。日にちが経つにつれ、緊急度が低かったものでも納期が迫って高くなる、といった変化もありますから、定期的に(たとえば毎朝)見直していく必要もあるでしょう。
タスク管理ツールを使うのも、効率的に管理するのに役立ちます。
仕事量を伝えて無理な仕事を断る
無理な仕事はきっぱり断るようにすることも必要です。そうしないと業務過多が常態化してしまいますし、上司や周囲から見ても余裕があると思われかねません。実際のところ、自分が特定の仕事を断ったからと言って会社がつぶれるわけでもありませんし、他にできる人がいるはずです。
自分のキャパを正確に把握して、周囲に伝えるのも社会人としての自己管理の一つなのです。もし、なかなか理解が得られなければ、タスク管理ツールなどを使って現在の仕事量を示し、量的または視覚的に上司に伝えるのも方法の一つです。
仕事を効率化できないか検討する
仕事そのものを効率化できる部分はないでしょうか。効率化できれば、作業時間の短縮や効果性のアップが見込めます。
具体的には、新しいツールやサービスを使う、省略または簡略化できる工程がないかを考える、自身のスキルアップを図る、といったことが考えられます。近年では電子化やDX(デジタルトランスフォーメーション)を用いた業務効率化も注目されています。
慣れ親しんだ方法を変えるのはエネルギーが必要ですが、のちの省力化につながることを考えると、挑戦する価値はあると言えるでしょう。
仕事のオーバーワークは早めの対処が重要
オーバーワークの兆しが見られたら、迅速に対処するのが賢明です。そのままにしていると精神的にも肉体的にもよいことはありません。うつ病を発症してしまう、脳や心臓疾患などの病気になってしまう、注意力が鈍くなり事故を起こしてしまうなどのおそれがあるからです。そうなってからでは取り返しがつきません。
先ほど、オーバーワークの対処法について紹介しましたが、オーバーワークの原因は、職場の人手不足や非効率な労働環境、ビジネスモデルの限界など個人の問題ではないことも多くあります。
ここまで見てきた内容を踏まえ、自身ができる範囲でやれることをまず試してみてはいかがでしょうか。それでも改善されなければ、転職など環境を変えるのもありでしょう。
まとめ
海外と比べて過労死の多い日本では、オーバーワークは深刻な問題です。メンタルヘルスやライフワークバランスという言葉が浸透しつつある昨今でも、社会全体の意識が変わるまでは時間がかかります。
まずは自身の状態がオーバーワークになっていないか、なりやすいタイプの性格ではないかなどを客観的に見直してみましょう。もし、オーバーワークの兆候があるなら早めの対処を検討してください。
[文]CareerSupli編集部 [編集]CareerSupli編集部