問題解決のコツは「考えないこと」?
問題解決能力がある人とない人の違いは何でしょうか。論理的思考力?偏差値?いいえ違います。答えは「考えているか考えていないか」です。こう言うと「問題解決能力がない人は考えていないから」と考えるかもしれませんが、実は違います。
問題解決能力がある人ほど「解決するべき問題」だけにフォーカスして、必要以上に考えないようにしているのです。ここでは思考の無駄な部分をカットして、より効率的に思考するための方法を3つのポイントに分けて解説します。
そもそもそれは「問題」なのか?
第一のポイントは「問題かどうかを見分けること」です。問題解決能力がない人ほど、余計な問題を抱えています。お腹の出た自分を鏡で見て「問題だ」と思い、歩きながらスマホを操作している人を見て「問題だ」と思い、イギリスがEUから脱退したというニュースを聞いて「問題だ」と思い、ニートが増えていると本で読んで「問題だ」と思います。
しかしそもそもそれは問題なのでしょうか。問題かどうかを見極める際は次のような基準を設けましょう。
・気分の問題か?事実の問題か?
・命かお金の問題か?それ以外の問題か?
・世の中の問題か?「私」の問題か?
・当事者は困っているか?困っていないか?
まず気分の問題は「解決するべき問題」ではありません。例えば「なんだか太った気がする」だけではまだ本当に太ったかどうかは判断できません。「3kg太った」という客観的な事実が判明して始めて問題になるのです。
また、確かに事実として問題だとしても問題にならないものもあります。それは命とお金以外の問題と規模が大きすぎる問題、そして当事者が特に困っていない問題です。
歩きスマホは他の通行人とぶつかって危ないかもしれませんが、こちらが避ければ済みます。国家予算レベルの資産を持っていたり、国のトップならまだしも、イギリスのEU脱退を問題視しても普通は解決しようがありません。本人が働きたいと思わず、それで困っていないのなら、第三者の介入は全部「おせっかい」です。
こうした問題ではない問題に関わろうとする人ほど、自分の抱える問題から目を逸らすための言い訳を探しているだけだったりします。自分の仕事場に山ほど問題を抱えているにもかかわらず、「イギリスのEU脱退が効いているな……」としたり顔で言ってみたり、今の仕事に納得していないから自由に生きているように見えるニートを問題視してみたくなる、というわけです。大切なのは解決するべき問題。それだけです。
原因は「変えられること」か、それとも「変えられないこと」か?
解決するべき問題を見極めたら、次に考えるべきはその原因です。問題は原因を突き止めることで解決できるからです。しかし変えられない原因を変えようとしても、問題は一向に解決しません。
変えられない原因には大きく2つあります。それは「人の心」と「過去」です。人間の喜怒哀楽は無意識のうちに感じてしまうものです。「楽しいと思おう」「悲しいと思おう」としてもそうなるものではありません。
心がけや心構えに原因を求めても、心は変えられないので解決のしようがありません。「部屋が片付かないのは心が荒んでいるからだ。心を清めるために旅行しよう!」といって旅行しても部屋は一向に片付かないでしょう。
また「親の育て方が悪かったから」「中学時代に勉強しなかったから」「日本人に生まれたから」など原因を過去に求めても、何一つ変えることはできません。「今問題解決能力がないのは、中学時代の不勉強のせいだ!」と言ったとして、どうやって中学時代の自分にそれを伝えるのでしょうか。
問題解決ができる人たちはこうした変えられないことに原因を求めるのではなく、変えられること=問題が生まれる仕組みに求めます。部屋が片付かないのはモノの場所が決まっていないから。
今問題解決能力がないのは余計な問題にかかずらっているからです。モノの場所を決めて仕組みを変えれば部屋は片付き、解決するべき問題を見極めれば余計な問題とはオサラバできます。
自分が原因だと思い込んでいることが、本当に変えられることなのか、立ち止まって考えてみましょう。
その解決策は十分にCOOLか?
問題と原因を見極められたら、最後に解決策を考えます。「なぜか自分の解決策はいつも結果が出ずに終わる」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。その典型的な原因は次の2点です。
・すぐに「〜してはいけない」「〜したら罰を与える」と禁止令・罰則を設ける。
・問題もしくは原因が何だったのかを忘れる、あるいは見誤る。
禁止令・罰則は最も手っ取り早い解決策です。問題や原因に対して「やってはいけない。やったら罰だ」とするだけなので、非常に簡単に思いつくことができます。しかしそんなルールが新たに解決されたからといって、そのルールを破る人間が必ず現れます。それに対して罰則を強化してもまた破る人間が現れて……とイタチごっこになるのが世の常。これでは問題は解決しません。
確かに禁止令や罰則が有効な場合もありますが、これはあくまで最後の手段です。本当に問題を解決したいのであれば、それを生む仕組みを変える解決策を立てなければなりません。
安直な解決策が怖いのは、イタチごっこをしている間に「そもそも問題が何なのか、原因はどこにあるのか」を忘れたり、見誤る危険があるからです。例えば恋人に浮気を何度もされているからといって、その度に「異性との連絡禁止」「夜9時以降は家に帰ってくる」「仕事以外の外出禁止」と禁止令・罰則を追加していけば、普通は恋人に逃げられるでしょう。いなくなってせいせいしたかもしれません。しかしそれでは次の恋人とも同じ別れ方をしそうです。
もちろん人によって変わりますが、本当の問題・原因は「他の異性にばかり目がいくほど、自分に魅力が足りないこと」だったかもしれません。それを取り違えて禁止令と罰則を追加していたばかりに、むしろ浮気を増長していたというわけです。このようなケースはビジネスシーンでも予想以上にたくさんあります。
これを防ぐには解決策に効果が出ない時は今一度問題や原因に立ち戻ってみる習慣をつけることです。そして何か勘違いや間違いがあれば解決策を修正していけばいいのです。その際のポイントは「なぜ前回の解決策が有効でなかったのか」をメモするなどして残しておくこと。でなければまた同じような解決策で失敗してしまいます。
考えるべきことだけ考える
一流のスポーツ選手のプレイを「無駄のない動き」と表現することがあります。これと同じで問題解決でも「無駄のない思考」が重要です。考えても仕方のないこと、考えるべきでないことをしっかりと見極め、考えるべきことだけを考える。
これこそが問題解決をアップさせる最も基本的な方法です。まずは今日から「問題」「原因」「解決策」の3つのポイントを意識してみてください。きっとたくさん無駄な「問題」が見つかるはずです。
参考文献『ミニマル思考 世界一単純な問題解決のルール』
