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メンターがわかってない、新入社員の本音
「誰に伝わるか分からないし、本当に思っていることは話せない」「相手が忙しすぎて、時間を取ってもらうこっちが気を遣う」「結局説教されるだけで、何の役にも立たない」。
これは、メンターと定期的にミーティングを行っている若手社員(メンティー)に聞いた、リアルな本音です。普段、親身になってメンティーから話を聞いて助言しているメンターにはショックかもしれませんが、これが現実なのです。
ただ、それも当然のことなのかもしれません。HR総研が実施した調査によれば、2013年時点でメンター・OJT指導員のための研修・勉強会を実施している中堅・中小企業は3割程度。「メンタリングとは何をするべきか」とを理解せずに、過去の自身の経験だけを頼りにメンターとして振舞っている人も多いでしょう。
しかし、このような姿勢ではメンティーが満足しないことは冒頭の本音からわかるでしょう。そこで今回は、新入社員が仲間に加わったとき、身につけておきたいメンターとしての10の心得を紹介します。
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1.命令しない。

メンタリングという行為の第一義は、指示や命令ではなく、対話と質問によってメンティーに気づきを与え、自律的な行動を促すことです。
ついつい良かれと思い、指示したくなる気持ちはわかりますが、あなたはメンターであり、上司ではなありません。そこを勘違いしてはいけません。
メンターは、メンティーが自発的かつ自律的に行動するように貢献するのが役目なのです。
2.傾聴する。
話をただ聞くだけでなく、そこから相手の思いにまで関心を持って積極的に聴く力、「傾聴力」。その重要性は誰もが知るところですが、表面上のテクニックのみにならないように注意しましょう。
傾聴とは「相手の気持ちに寄り添い、考えを尊重する」ことです。発言だけでなく、その背景にある想いまで受け入れようとしなければなりません。自分は新人の時はどんな想いを抱えていたか、思い出してください。
3.人の成長には時間がかかることを意識する。

人は、頭で理解できたとしても、それを実践できるようになるまでには時間がかかるもの。プロになるには1万時間の練習が必要だとする「1万時間の法則」があります。
この法則はすべての分野に通じることではないと言われていますが、人の成長とはそれぐらい時間がかかることだと意識したほうが良いでしょう。
前回の面談で課題としていたことが、次の面談で解決できていなかったとしても、焦りは禁物。長い目で見守ることが大切です。
4.互いの時間を尊重する
メンターは部下との面談を定期的に行いますが、その日程や時間はメンティーと十分に話し合って、相手が使う時間を尊重するべきです。
お互い、通常業務の間を縫って面談の時間を決めている以上、時間を勝手に伸ばしたり、自分の都合で日程を変更しないように気をつけましょう。
5.自身も学ぶ立場であることを忘れない
自分が一方的に部下の悩みを解決する、アドバイスをしてあげるという意識を手放すことも、ミーティング時には必要です。自身も部下から学んでいるという立場をとれば、部下の話に素直に耳を傾けられるようになります。
先入観を持って、最初から答えを決め付けるのではなく、「そういう考え方もあるんだな。勉強になる」というスタンスを取ると良いでしょう。新人のフレッシュな感性にふれることで、思ってもいなかった気づきを得られることも少なくありません。
6.普段から自身の言動には気をつける

個人ミーティングをして悩みを聞き出し、助言をする。それだけがメンターの役割ではありません。なぜなら、メンターは、メンティーにとってキャリアや勤務態度など、すべてにおいてモデルになるべきと考えられている存在だからです。
自分では気づかなくても、メンティーはメンターの行動を常に見ています。遅刻や欠勤が多かったり、あるいは軽率な言動で周囲に迷惑をかけているようであれば、メンティーの師となるどころか、反面教師になってしまうでしょう。
7.アドバイスに従わなくてもいいことを伝えておく。
心の底から相手を思ってのアドバイスでも、受け取る側の気持ちへの配慮は不可欠です。というのも、人は上からやり方を押し付けられると反発するものだからです。
「こうした方がうまくいくよ」と話しても、本人が完全に納得したものでなければ、どうしても「やらされてる」という意識が芽生えてしまいます。そうすると、アドバイスに従ってうまくいっているうちはいいですが、つまずいてしまうと、メンティーはメンターのせいにしてしまう恐れがあります。
そのため、アドバイスをするときは「自分のアドバイスに従わなくてもいいからね」と事前に伝え、本人の意思を尊重し、責任は自分自身にもあることをはっきりさせましょう。
8.説教よりも、良い質問をする

ミーティングをしていると、部下が自分の努力不足を棚に上げてただ愚痴を言っているだけのように思うことがあるかもしれません。そんな時、人生の先輩としてはついつい説教をしてしまいたくなりますが、そこをぐっと我慢して、相手に気づきを与えるような質問をしてあげましょう。
「○○さんが腹を立てているのは、君の態度が原因だろ!」と説教をするのではなく、「どうすれば、〇〇さんが怒らないようになるだろう?」「何か自分がアクションを起こすことで、変化させることはできないだろうか?」と質問するのです。自分にも非があったと、メンティーが気づくきっかけを作れるかもしれません。
9.会社を機能させるためのメンター制度であることを忘れない
メンターとメンティーは、師匠と弟子のような間柄とも言えますが、会社に利益をもたらすためにメンター制度が実施されていることを忘れてはいけません。
新入社員が早く職場になじんで機能するため、ストレスや悩みの相談などを受けるのがメンター制度の主な目的。師弟のような間柄になったとしても、一緒に会社を批判していては本末転倒です。会社のビジョンに対してメンティー自身がどのように貢献できるのか、ミーティングの中ですり合わせていくことが重要なのです。
10.話した内容を他言しない
ミーティングの内容は、ときにメンティーのプライベートな部分にまで話が広がります。それはメンティーが自分に対して信頼してくれている証です。そのため、話した内容は互いの承認がない限り、絶対に他言してはいけません。
「人の口に戸は立てられぬ」と言うように、「ここだけの話」と口止めしても、いつの間にか周知の事実となっているのが社会というもの。自分のプライベートな話をメンター以外が知っていたとき、メンティーの心はひどく傷つくでしょう。
人間不信に陥り、退職の原因となってしまうことも考えられます。「ミーティングで話した内容は墓場まで持っていく」。それぐらいの覚悟が、メンターには求められているのです。
新入社員の未来、会社の未来を作るのはメンターの役目
機械化が進み、人間の仕事も機械にどんどん奪われていく現代ですが、未だに仕事の中心は人間にほかなりません。
そして、その人間を支え、ケアできるのはやはり人間なのです。仕事がうまくいかず悩み、人間関係にストレスを抱える新入社員。彼らの心を十分に整備し、会社の原動力とすることができるかどうかは、メンターとなったあなたの振る舞い次第なのです。

[文・編集]サムライト編集部