ずっと手元において、繰り返し読む価値があるビジネス名著30選

11.『失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫) 』

著:戸部良一 、寺本義也、 鎌田伸一、 杉之尾孝生、 村井友秀、 野中郁次郎

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初版が1984年と書かれてから30年以上の歳月を経てもなお、文庫版として再版される組織論の名著。著者陣は日本の組織論を代表するメンバーで、2005年には本書の続編にあたる『戦略の本質~戦史に学ぶ逆転のリーダーシップ』を同じ顔ぶれで出版しています。

本書の内容は、第二次世界大戦の日本軍の敗北を「組織としての日本軍が、組織としての米軍に負けた」という切り口から分析し、その失敗の本質を現代企業の組織にあてはめようというものです。

組織が歴史にさえ残る失敗するとき、いったいどんな問題が起きているのか。それを日本人の民族性と合わせて戦争という大きな文脈の中で読み解いた不朽の組織論です。ミッドウェー海戦や沖縄戦など具体的な作戦の分析も出てくるので、歴史好きにもおすすめです。

12.『稲盛和夫の実学―経営と会計』

著:稲盛和夫

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京セラ・第二電電創業者の稲盛氏が経営における会計の重要性について、自身の経験に基づいて解説した本。経営者の中には「会計なんてわからなくても経営はできる」と考えている人も少なくないでしょう。しかし稲盛氏は本の帯で「会計がわからんで経営ができるか!」と言い放っています。

といっても「簿記検定をとれ」という本ではもちろんありません。本書は「経営に役立つ会計とはどうあるべきか」という切り口で「簿外処理は一切許さない」「予算制度は実施しない」「ダブルチェックを徹底する」などのルールがなぜ必要なのかを解説した本なのです。

そこには会計に収まらない、全社的に通じる哲学が込められています。経営者のみならず、リーダー全般、経理担当者もぜひ読んでおくべき一冊です。

13.『プロフェッショナルマネジャー』

著:ハロルド・ジェニーン 訳:田中融二

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著者のジェニーン氏は巨大コングロマリット米ITTの社長兼CEOとして58四半期連続増益を遂げた人物。本書はそのジェニーン氏が1985年に刊行したものを復刊したものです。

「古い本」と侮るなかれ、解説を担当したファーストリテイリング会長兼CEO柳井正氏は本書を「自分にとっての経営の教科書」と呼んでいます。それだけ本書が普遍的な経営哲学を説いているということでしょう。

「リーダーは紳士的であるべき」「ノー・サプライズ経営を実践せよ」「ルールに従って実行すべきだが、思考までルールに従う必要はない」など、ジェニーン氏一流の経営哲学からは、多くの学ぶところがあるはずです。

14.『新訂 孫子 (岩波文庫)』

訳:金谷治

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多くのビジネスパーソンに読み継がれてきた古代中国の兵法書が『孫子』です。かつては全82巻という大部な書物でしたが、戦の天才であった曹操によって現代の全13篇という形に落ち着きました。

岩波文庫の新訂版では原文と読み下し文に現代語訳をつけ、さらにわかりやすい注釈もついているうえ、巻末には重要語句索引もつけられているため、かなり読みやすくなっています。

「相手を負かす」のではなく、「自分が勝つ」あるいは「自分が負けない」ための戦い方の基本を具体的な例を挙げて解説している本書は、ビジネスシーンにおいて大いに役立ちます。数千年の時を経てなお読み継がれているだけあり、いつどんな時でも何かしらのヒントを得られる懐の深い一冊です。

15.『思考は現実化する』

著:ナポレオン・ヒル 訳:田中孝顕

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自己啓発の原典ともいえる一冊。1908年、新聞記者だった著者は鉄鋼王アンドリュー・カーネギー氏にインタビューをした際に、カーネギー氏本人から無償での「成功哲学」の研究を依頼されます。

この依頼を受けたヒル氏はその後20年間をかけてカーネギー氏が見込んだ500人の成功者にインタビューし、彼らに共通する思考とやり方を本書にまとめたのでした。

膨大な時間をかけて膨大な成功体験から「確固たる願望を持つこと」「信念」「忍耐」などのエッセンスを抽出した本書の内容は、有象無象の自己啓発本数百冊に匹敵する価値のあるものといえます。

16.『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』

著:スティーブン・R・コヴィー 訳:フランクリン・コヴィー・ジャパン

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英国『エコノミスト』誌に「世界で最も大きな影響力を持つ経営コンサルタント」に選ばれたこともあるスティーブン・R・コヴィー氏の代表的著作。ビジネスシーンでは個人のみならず組織においても、そしてプライベートでも活用できる「7つの習慣」について書かれた自己啓発の名著です。

7つの習慣の中身は「主体的である」「終わりを思い描くことから始める」「最優先事項を優先する」など至極真っ当なもの。目新しさはないかもしれませんが、何度でも振り返って何度でも心身に叩き込みたい内容となっています。節目節目に読み直して、人生の方向修正に役立てたい一冊です。

17.『仕事は楽しいかね?』

著:デイル・ドーテン 訳:野津智子

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試すこと、自分が変わっていくこと、目の前の課題に集中することなどの大切さを180ページの物語仕立てで説いた、シンプルながらも濃厚なビジネス啓発書です。

あらすじは、未来に希望も持てずに漫然と仕事に追われる主人公が、公明な実業家であるマックス老人に出会い、老人との会話を通じて自分の仕事観を揺さぶられていくというもの。

「目標を立てるな」「問題はコイン投げの達人でないということだ」など一見唐突な老人の言葉に主人公は反発しますが、それぞれの言葉にはしっかりと裏付けがあり、それを具体的な例とともに説明してくれます。短い物語なので思い立ったときにさっと読み返せるのも、本書の大きな魅力です。

18.『プロフェッショナルの原点』

著:P.F.ドラッカー、ジョゼフ・A・マチャレロ 訳:上田惇生

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「現代経営学」「マネジメント」の発明者として知られるドラッカーの遺作となった、仕事をめぐる名言集。時間管理、自己開発、意思決定などをテーマにした6つの章から構成され、それぞれがドラッカーの言葉を基にしてまとめられています。

名言集というと箇条書きの名言がズラリと並んでいるイメージを持つかもしれませんが、この本に限っては様子が違います。

というのもドラッカーの名言に対して解説が加えられ、さらにはそれに「とるべき行動」と「身につけるべき姿勢」という実践的なアドバイスも加えられているからです。原題は『The Effective Executive in Action: A Journal for Getting the Right Things Done』。成果を上げるエグゼクティブになりたいのであれば、必携必読の一冊です。

19.『Q思考――シンプルな問いで本質をつかむ思考法』

著:ウォーレン・バーガー 訳:鈴木立哉

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検索エンジンや人工知能が「答え」を簡単に導き出すこれからの時代、人間にとって最も重要なスキルになるのは「問う力」である。本書はこの考えのもと、GoogleやNetflixなどの先進的な企業が刺激的なアイディアを生み出している「Q思考」について解説した本です。

「質問力」と名のつくビジネス書は数あれど、『Q思考』ほど本質的に質問をすることを掘り下げたビジネス書はありません。レベルの高い質問の重要性を思い出させてくれるだけでなく、そうした質問を生み出すためにはどうすればいいのかについてもしっかりとレクチャーしてくれます。AI時代のビジネスパーソンなら座右の書として手元に置いておくべき一冊です。

20.『ブラック・スワン 不確実性とリスクの本質 (上・下)』

著:ナシーム・ニコラス・タレブ 訳:望月衛

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不確実性科学の大学教授であり、デリバティブ・トレーダー兼クォンツ*としての経歴を持つ著者が書いた、経済学・ファイナンス理論を痛快に批判する一冊。

本来ランダムに変化する世界を人間は完全に予測することはできず、特に大きな変化になるとなおさら予測が難しくなるものだとタレブ氏は主張します。また、だからこそあと知恵でしか説明できないような予測不可能なアクシデント「ブラック・スワン(黒い白鳥)」が出現するのだとも言います。

タレブ氏の主張が暴くのは金融工学と名のつくものの「ニセ科学」ぶりと、この世界の不確実性です。そして私たちは本書を読んでいるうちに「いつのまにか世界を予測できると考えている自分」に気付かされます。

ビジネスをするうえでも、人生を生きるうえでも、本来確実なことなど何もない。そのことを頭の芯から理解できる著作です。