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何が歌姫・レディーガガをつくったのか
1986年3月28日、アメリカ合衆国ニューヨーク州で産声をあげた少女の名はステファニー・ジョアン・アンジェリーナ・ジャーマノッタ。彼女は今や世界に冠たるアーティスト、レディー・ガガとして世界中を席巻しています。
彼女の今の成功にはもちろん自身の才能や哲学などが要因として挙げられます。しかしだからといって彼女と同等の才能と哲学思想があればここまでの名声を手に入れられるのかといえば、決してそんなことはありません。そこには圧倒的な「セルフブランディング力」が必要不可欠です。以下では「歌姫・レディーガガ」を作り上げた彼女のこの特殊とも言えるセルブランディング力の秘密に迫ります。
そもそもブランディングとは何か
はじめに明確にしておきたいのは「ブランディング」とは何かということ。ブランディングは自分で自分をアピールするマーケティングとは違い、顧客から自分に対して特定のイメージを持ってもらう方法を言います。
例えばルイヴィトンは自らを「高級ブランドバッグメーカーです」とは言いません。しかし商品戦略や店舗戦略によってそのイメージを浸透させ、今の地位を築いています。この時ユーザーにとっては「ルイヴィトン」というブランドは、他のブランドとの「識別」を行い、かつ安心・信頼出来る「品質保証」とルイヴィトンを身につけているという「アイデンティティー」を形成する役割を担っています。これらが成功してこそのブランディングなのです。
ではレディー・ガガはどのようにしてこの3つの役割を自らのものとしたのでしょうか。そのキーワードは「発信」でした。
SNSモンスター レディー・ガガ

画像出典:littlemonsters.com
レディー・ガガとブランディングという文脈で必ずと言っていいほど挙げられるのがSNSブランディングについてです。現在の彼女のTwitterフォロワー数は4730万人近くにのぼり、Facebookページの「いいね!」数は6000万人を超えます(彼女がスナップショットをあげただけで30万「いいね!」を軽く超えます)。さらに彼女はこれらの大規模SNSだけではなく、「littlemonsters.com」というファンのためのSNSを立ち上げます。ここではガガのファンだけが集まって互いにフォローやコメント、画像や動画の共有などを行えるようになっています。さらにはガガ自身がファンとの交流を行うなどして、「ファンの育成」を行っているのです。
TwitterやFacebookで一国の人口ほどもフォロワーを集め、そこで情報を発信しながら、ロイヤリティーの高いファンを自前のSNSで育てる……まさにSNSブランディングのお手本ようなやり方です。
レディー・ガガはどこまでも「オリジナル」である

出典:https://twitter.com/gaga10pa/status/606653443562872833
ユーザーがブランドを識別するためには、そのブランドには圧倒的な個性が必要になります。自分をコピーするまがい物が出てこようともそのなかに埋もれない圧倒的なオリジナリティー。それこそがブランドがブランドたる所以です。その点をガガはしっかりと把握しているため、のちに触れるようなファッションやパフォーマンスにも一切手を抜かないのです。
ではこの「オリジナリティー」とはどういった戦略から生まれるのでしょうか。これはブランディングの最も大きな問題の一つで、ターゲットユーザーに抱いて欲しいブランドイメージから始めるやり方もあれば、自社がどんな価値をユーザーに提供したいかを考えるところから始めるやり方もあります。しかしガガは「自分が自分であり続けること」を持って、この大きな問題を解決してしまいました。
「レディー・ガガ」というアイコンであり続ける

それはつまり、彼女の生い立ちであり、思想であり、哲学によって「オリジナリティー」を確立してしまったということです。なるほど人それぞれの人生は全て違うわけですから、それ自身をブランディング戦略の出発点にしてしまえば、必ずオリジナリティーは確立できます。
しかしそれが友人グループでのブランディングならともかく世界規模となると話は別。彼女は全身にバラをあしらったタイツ姿や「生肉ドレス」と呼ばれた奇抜なファッションによって「レディー・ガガ」を主張し、ハイチ地震への復興支援やエイズ撲滅運動、セクシュアルマイノリティーへの理解を示すなど、常に「アイコン レディー・ガガ」を発信し続けたのです。
その結果としてユーザーからは、「レディー・ガガ」というブランドが自己のアイデンティティーを示す一つのファッションとして認識されました。ただ、最近は正統派のシンガーというイメージにポジションチェンジをしており、第1回ヨーロッパ競技大会の開会式で見せた「イマジン」の熱唱が絶賛されています。
レディー・ガガのブランド戦略を取り入れるために
彼女は派手なファッションやパフォーマンスだけでなく、しっかりと本業のミュージシャンとしても地位を確立しています。このように言うとまるで彼女が雲の上のような存在に思えますが、前述したように全ては「自分を発信する」というコンセプトに基づいてブランディングが行われているだけなのです。
もちろん一般社会で生肉ドレスを着たからといって、いい会社に入れたり、給料が上がったりするわけではありません。なぜかといえば、それは「自分」ではないからです。彼女のように自分を発信するプロになりたければ、まずは「自分とは何か」という問いから始めればいいのです。
日本ではとかく「自分を発信する」ことへの風当たりが強くなりがちです。しかし今の世の中で生き残っていくにはセルフブランディングは日常でも仕事でも非常に重要なツールです。それを使いこなすためにも、自分とは何かを問い、自分を最も活かせるフィールドを探す必要があるのです。
[文・編集] サムライト編集部