デキる人は箇条書きができる
「箇条書きこそが最速・最強のコミュニケーションツールだ」と聞くと意外に感じる人もいるかもしれません。なぜなら箇条書きは誰もが作ったことのあるもので、プレゼンのスライドなどでもよく目にするものだからです。
しかしその箇条書きは本来の箇条書きの潜在能力の一部しか活用できていない可能性があります。デキる人というのはその潜在能力をフル活用できるのです。ここではこの箇条書きの潜在能力を引き出すための方法を紹介します。
なぜ「箇条書き」が最強なのか?
箇条書きの最大の強みは「読み手の情報処理の手間を大幅にカットできる点」にあります。例えば議事録が箇条書きにまとめられていれば、あっという間に会議の内容を把握することができます。
時間がないビジネスパーソンにとって、素早く効率的に情報を処理できるだけなく特殊な道具もいらない箇条書きは、この上ないコミュニケーションツールなのです。
実際外資系コンサルタントのプレゼンの冒頭には必ずと言っていいほど箇条書きのスライドが提示され、しかも多くの場合そのスライドはチームリーダーが担当します。彼らはそれが多忙なクライアントに対して最も重要な部分だということを理解しているからです。
ではこの箇条書きの潜在能力を引き出すためにはどうすればいいのでしょうか。以下で3つのポイントに分けて見ていきましょう。
「構造化」で説得力を作る

箇条書きにおける第一のポイントは「構造化」です。構造化にはさらに次の3つのポイントがあります。
1.グルーピング
2.時系列化
3.ガバニング
グルーピングとは「似た者同士をまとめること」です。例えば業績不振の店舗の改善策を考える会議の資料に、次のような箇条書きが添えられていたとしましょう。
・アルバイトのトレーニングが遅れている。
・レイアウト変更による回遊性強化。
・期間限定でベテランアルバイトを派遣してもらう。
・什器の問題でお客様の回遊性が低下している。
・未熟なアルバイトのトレーニングを他店で行う。
確かにずらりと文章にされるよりはすっきりしているかもしれませんが、これでは読み手側で各項目を整理し、情報処理しなくてはなりません。しかし似た者同士でまとめると、次のようになります。
・現状抱えている問題
→什器の問題でお客様の回遊性が低下している。
→アルバイトのトレーニングが遅れている。
・検討するべき改善策
→回遊性強化のための予算を確保する。
→期間限定でベテランアルバイトを派遣してもらう。
→未熟なアルバイトのトレーニングを他店で行う。
これがグルーピングです。グルーピングを行うと一気に情報が整理され、理解しやすくなります。2つ目のポイント「時系列化」とは、箇条書きを見るだけで時間の変化が追えるようにすることです。上記の箇条書きを時系列化すると、次のようになります。
・店長から報告を受けた問題点
→什器の問題でお客様の回遊性が低下している。
→アルバイトのトレーニングが遅れている。
・営業部で検討した改善策
→回遊性強化のための予算を確保する。
→期間限定でベテランアルバイトを派遣してもらう。
→未熟なアルバイトのトレーニングを他店で行う。
この変更により「店長から報告を受けた問題点に対し、営業部が改善策を検討した」という時間的な流れが追えます。3つ目のポイントの「ガバニング」とは箇条書きの中にさらに内容をまとめる機能を持たせることです。
・店長から報告を受けた2つの問題点
→什器の問題でお客様の回遊性が低下している。
→アルバイトのトレーニングが遅れている。
・営業部で検討した3つの改善策
→回遊性強化のための予算を確保する。
→期間限定でベテランアルバイトを派遣してもらう。
→未熟なアルバイトのトレーニングを他店で行う。
こうして各項目を使って箇条書きの見取り図を作ってやることで、さらに読み手の情報処理を簡便化できます。
「物語化」で読み手・聴き手を巻き込む
箇条書きにおける第二のポイントは「物語化」です。いくら構造化されていて理解しやすくなっていても、それが読み手の興味を引くようなものでなければ説得力は半減してしまいます。
それを防ぐためのキーワードが「アンサーファースト」です。箇条書きの読み手、あるいは箇条書きを使ったプレゼンの聴き手が知りたいのは結論や答えです。したがってそれまでの経緯は後回しでよく、まずはどんな結論に至ったのかをまず最初に伝える必要があります。
構造化のところで時系列化について述べましたが、物語性を重視するならば時系列を入れ替えるべきでしょう。
ただしアンサーファーストも万能ではありません。前提となる知識や情報がない相手に対して箇条書きを提示するのであれば、順を追って並べる方が効果的な場合もあるからです。
そこで重要となるのが「読み手・聴き手」についての理解です。物語化するためには読み手・聴き手が箇条書きの内容についてどれだけ理解しているのか、どんな情報を持っているのか、さらにはどのような順番で説明される方が理解しやすいのかなどを知っておく必要があります。そうして初めて読み手・聴き手をこちらの物語に巻き込むことができるのです。
「メッセージ化」でスタンスを示す
箇条書きにおける第三のポイントは「メッセージ化」です。端的に情報をまとめられる箇条書きですが、その中にもしっかりとメッセージを込めなくてはなりません。ここでポイントとなるのは次の2点です。
1.当たり前のこと・無難なことは言わない。
2.数字や名前を使って具体性を高める。
書かなくてもいいこと、書いたところで何も変わらないことは少ない情報量にまとめなければならない箇条書きでは一切不要です。メッセージとはその人の「スタンス」を示すものです。これは価値観や、立場、思想、信条などと言い換えても構いません。これらを明示するためには当たり前のこと・無難のことは書いてはいけないのです。
またメッセージの中に具体的な数字や、人の名前を盛り込むと一気にメッセージ性が強くなります。先ほど例に挙げた業績不振の店舗の箇条書きを次のように変えてみましょう。
・斎藤店長から報告を受けた2つの問題点
→什器の問題でお客様の回遊性が繁盛店に比べ30%低い。
→アルバイトのトレーニングが遅れている。
・営業部で検討した3つの改善策
→回遊性強化のための予算を100万円を確保する。
→期間限定で原宿店のベテランアルバイト・佐々木さんを派遣してもらう。
→未熟なアルバイトのトレーニングを原宿店で行う。
これだけでもかなり具体性が高まり、読み手にも書き手が何を考えているのかがダイレクトに伝わってきます。箇条書きでスタンスを示す。これは自分の考えを伝えるために必要不可欠な発想です。
箇条書きは思考力も磨く
構造化・物語化・メッセージ化の3点を意識するだけで、情報を論理的にわかりやすく整理しようと考えるようになります。それを繰り返していれば徐々に思考力が高まり、すんなりと伝わりやすい箇条書きが作れるようになるでしょう。
箇条書きは思考力をも磨くのです。たかが箇条書き、されど箇条書き。いまいち自分の考えが伝えられないという人は、改めて箇条書きと向き合ってみましょう。
参考文献『超・箇条書き 「10倍速く、魅力的に」伝える技術』
