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クリティブになるためには
私はクリエイティブだ。そう言い切れる人は決して多くないでしょう。
しかし、クリエイティブになんてなりたくない!そんな人もいないでしょう。現代のビジネス環境ではクリエイティブであることを求められる機会も多いはずです。
筆者自身も執筆業を営んでおり、どうすればもっとクリエイティブになれるのかそう考えることも多いです。
そこで、「クリティブになるためにはどうすれば良いのか?」そのヒントを得るために「クリエティブ・マインドセット」という本を手に取りました。
著者はIDEOの創設者のデイヴィッド・ケリー氏とトム・ケリー氏。IDEOといえばアップル社の初代マウスのデザインをはじめ、サムスン、P&G、ペプシなどの有名企業から重用されているデザイ・コンサルタント会社です。
大学で生徒の創造性を開花させる手助けもしている著者らは人間は誰でもクリエイティブになれるポテンシャルを持っていると「クリエティブ・マインドセット」で述べています。
IDEOが提案するクリエイティブになる方法について「クリエイティブ・マインドセット」を参考に見ていきます。
人間中心の考え方こそクリエイティブを引きだす
著者は人間のニーズを深く理解する、人々に深く共感する人間中心の考え方こそがクリエイティブなイノベーションや新しいアイデアを生み出すと述べています。そして、その考え方を実行するための手法が以下です。
①着想
人間中心のイノベーションを起こすためには共感が重要。現場で人々に密着して観察、インタビューする、アーリーアダプターの技術の活用方法を知る、ユーザーの不満を知り改善点を探します。
②統合
現場での観察、インタビューから得た情報から問題を設定します。ここでは問題の枠組み自体をとらえ直すこともあります。著者らは小売り業で「どうすれば顧客の待ち時間を減らせるか?」という問題を「どうすれば顧客の『感じる』待ち時間を減らせるか?」と置き換えた例を挙げています。
③アイデア創造と実験
問題を解決するための多数のアイデアを出します。有望なアイデアから人の反応を確かめられる程度の具体性のあるプロトタイプを作り、反応を見て、改良、方向転換を繰り返し人間中心の解決策を決定します。
④実現
アイデアを製品・サービスとしてリリースします。早く市場に製品・サービスを投入して改良を繰り返していく企業も増えています。
MRIを海賊船へ、人間中心の考え方でクリエイティブを実現
「クリエティブ・マインドセット」では、ゼネラル・エレクトリックの社員ダグ・ディーツ氏が人間中心の考え方でクリエイティブを実現した事例を紹介されています。
ダグ氏はMRIを開発して、そのMRIの設置を行う現場を視察。しかし、そこで見たものはダグ氏が予想していなかったものでした。患者の少女がMRIに怯え麻酔で鎮静しなければスキャンを受けられなかったのです。
ダグ氏は自分の開発したMRIが患者に大きな不安を与えているのを目の当たりにして、ショックを受けました。何とかしなければならないと感じたダグ氏はデイヴィッド・ケリー氏が創設したdスクールのエグゼクティブ教育クラスで1週間のワークショップを受講。人間中心のデザイン・プロセスを学び、MRIの体験を設計し直すことにしました。
ダグ氏は現場に出向き徹底的に観察を実行。託児所で子供を観察、小児患者に関連した専門家と話すことで小児患者が経験することに対して理解を深めました。そして、子供目線からMRIを捉え、MRIの体験を冒険物語へと変えることを考案しました。
海賊船のデザインを施したMRI
スキャナーの入口周りに木の舵輪を描き、海賊船のデザインを施しました。このようにMRI体験を冒険物語へと変えることで恐怖を軽減。麻酔で鎮静が必要な小児患者は劇的に減りました。結果的に病院は多くの患者をスキャンでき、小児患者の満足度も高まりました。
クリエイティブな力を伸ばす方法
著者はクリエイティブになるための方法として以下を挙げています。
①クリエイティブになると決意する。
②旅行者のように考える。
③「リラックスした注意」を払う。
④エンド・ユーザーに共感する。
⑤現場に行って観察する。
⑥「なぜ」で始まる質問をする。
⑦問題の枠組みをとらえ直す。
⑧心を許せる仲間のネットワークを築く。
この中でも①クリエイティブになると決意する。⑤現場に行って観察する。これらの重要性が本書で繰り返し述べられています。
クリエイティブになると決意することの重要性
著者はIDEOで働く以前に広告業界で働いていたIDEO社員ジル・レヴィソン氏を例に出してクリエイティブなると決意することの重要性を説いています。このジル氏は広告業界と言えど「クリエイティブ」には関わっていませんでした。
しかし、ある日もっとクリエイティブになろうと決意し、Pinterestで色とりどりのクッキーのレシピをピンしました(※ピンは所謂、画像のブックマークのようなものです。Pinterestでは他のユーザーがピンした画像一覧を閲覧して楽しみます。)
すると、そのレシピを見た他の多くのユーザーがクッキーのレシピをピンしました。ジル氏は引き続きPinterestで様々な画像を収集、ピンしていく内に多くのフォロワーから支持され最終的には100万人以上のフォロワーを獲得したのです。ジル氏はこの経験より自分の創造力に対する自信を得ました。
このジル氏の事例で分かること。それはクリエイティブになると決意して何らかの行動を始めることの重要性です。クリエティブになる上で何かたいそうなことをするのではなく、まずはすぐにできること、小さなことから始めることが重要なのです。
最近では、インスタグラマーやユーチューバーからクリエイターとして活躍する人も増えています。彼らに共通しているのは、まずは何でもいいからコンテンツを投稿してみるという姿勢から始めていることです。
最初から完璧なコンテンツを作ろうとするのではなく、まずはコンテンツをSNSに投稿し、その反応やフィードバックを元に徐々にコンテンツの質を高めていったのです。
現場に行って観察することの重要性
現場に行って観察することの重要性についても前述のダグ氏の事例のように本書で繰り返し述べられています。現場に行って観察することでしか見えてこない隠れたニーズがあります。
IDEOがチリス社の台所用品の開発に取り組んだ時のこと。台所に立つ人を観察したところ、アイスクリーム・スクープを使った後、スクープをシンクに置く前にスクープにこびりついたアイスクリームをなめていたのです。そこで、IDEOはこびりついたスクープを怪我することなく最後までなめられる口にやさしいスクープを開発しました。現場に行って観察したからこそ得られたアイデアです。
ジル氏のPinterestの例のようにクリエイティブになるためのキッカケというのは日常生活の中にも溢れているのでしょう。今日からクリエイティブになると決意し何らかの行動を始めてみてはいかがでしょうか。
