【筆談ホステス】斉藤里恵さんに学ぶ「自分のリピーター」をつくる4つのメソッド

クライアントにリピーターとなってもらうためには?

あなたには、初対面の人に「この人ともう一度会って話がしたい」と思わせる魅力がありますか?周囲に味方が多い「人気者」と言われる人には必ず、何か人を魅了する理由や、根拠があるものです。

今回は、ビジネスシーンで「自分のリピーター」をつくるための4つのメソッドを、聴力を失いながらも銀座のNo.1ホステスに登り詰め、その人生がドラマ化もされた筆談ホステス、斉藤里恵さんの言葉を添えてご紹介します。

クライアントに「嫌われないための技術」

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まず、ホステスに関わらずビジネスで一番大事なことはクライアントとの良好な関係に他なりません。「好かれるための技術」に特化しているのがキャバ嬢だとすれば、敏腕ホステスが持っているノウハウは「嫌われないための技術」です。どちらも一緒では?と思うかもしれませんが、この双方の技術は全く別物なのです。

キャバ嬢の場合、自分を売り込もうと積極的に前に出てきますが、下手に「好かれよう」とすると、お客との距離感を間違えて思わぬ地雷を踏んでしまうことがあります。このことについて斉藤里恵さんの考えはこうです。

“人の為と言うのも、度が過ぎると「偽」になる。”

度が過ぎて、押しつけがましくなるのは良くないということ。

したがって、ホステスクラブは一人の客に対してローテーションを回すかのようにいろんな女の子を席に着かせます。何故なら、ホステスはお客をリピートさせるために必ずしも前に出ていかなくていいことを知っているからです。店の誰かが一人でも気に入られればそれでいいので、わざわざリスクを冒さなくていいということです。

これは、様々なビジネスシーンにおいても同じこと。クライアントに必要以上に好かれようとして地雷を踏んでしまえば、重大なプロジェクトが失敗に終わってしまいます。敏腕ホステスの「嫌われないための技術」を見習い、適度な距離感を保つことがクライアントとの関係づくりにおいて大切なことなのです。

仕事の関係を進展させるための「共犯になるための技術」

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ビジネスを進展させていくためには、ただ関係をつくるだけでは何も進んでいきません。そもそも人間が2人で向かい合って話すのには限界があります。いつしか間が持たなくなり、精神的に疲れ切ってしまうからです。気功の世界では、「初めてのデートでは向かい合ってはいけない」という教えがあります。何故なら、人間には“気”という名のオーラが出ており、人と対面してオーラがぶつかり合うことによって相乗効果が生まれることもあれば、相手を制圧してしまうこともあるからです。

逆に、隣り合って同じものを見ることで、自然と味方同士の関係になることができます。したがって、まだ関係が浅い人とのデートは「一緒の方向を見て楽しめるもの」がいいとされています。例えば、ドライブや映画、食事はカウンター席で並んで食べるのがいいでしょう。これが「共犯になるための技術」です。

ホステスクラブにおいても、対面で接客するのではなく、隣に寄り添って相手をもてなします。そうすることにより、お客は変に気疲れすることなく心から楽しむことができるようになるのです。

“相手の心を想う。「思う」のではなく、「想って」あげてください”

この斉藤里恵さんの言葉の通り、相手を想うことが本当のもてなしとなり、お互いの関係を深めます。

ビジネスにおいても、クライアントと同じ視点で共通の目的や課題を見つけることができれば、仕事の関係を進展させることに繋がります。こういった「共犯意識」を提供してくれる場を作ることは大切で、日本流の接待であるゴルフがまさにその場でもあるのです。

クライアントが抱えている「願望を引き出す技術」

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どんな客も、心の内には困ったことを抱えているものです。ビジネスでのクライアントも同じように、本当は「こうしたい」という心の台本を隠し持っています。多くの場合、その気持ちを他人に見せることなく、表面上の関係に留めてしまっているのです。どの客も、そういった願望の引き出しを開けてくれる、息の合ったプロを常に探しています。したがって、ホステスの世界では、息の合わない、アドリブがきかない人は客からリピートされません。

プロのホステスというのは、どんな客からでも口から話を引っ張り出すことに卓越しています。不思議なもので、担当者がそういった司会ぶりを発揮すると、客は自分の話が面白いんだと錯覚してしまい、そのホステスをリピートするようになります。これが聞き手の、敏腕ホステスの客をリピートさせるための職人芸なのです。斉藤里恵さんは、聞くという行為の中で大切なことをこう言っています。

“聞くのではなく、「心」を込めて聴いてあげてください”

そして、

“話し愛”

相手の話を聴き、話し合うことで、愛が生まれるのです。

本当の意味でのクライアントの「担当」になるためには、話し手に耳を傾け、相手が抱えている「願望を引き出す」ことに徹しましょう。クライアントが怒りっぽいのなら怒りを吐き出させ、不満を持っているのなら愚痴を聞き、全てをぶちまけさせる。このように、相手の面倒な不満や願望を話させれば話させるだけ、聞き手との強靭な信頼関係が生まれます。

そこからわがままな要求が飛んでくるようになれば、その全てがビジネスに繋がるチャンスとなるわけです。競合他社が多いビッグクライアントならなおさら、あえてありきたりな対応はせずに相手の願望を引き出すことで、大勢のライバルの中でキラリと光る存在になるでしょう。

自分の「感情をコントロールする技術」

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人間は皆願望を抱え、わがままだと説明しましたが、それは生存本能として当たり前であることを覚えておいてください。ホステスクラブの客の消費行動というのは、自己利益のために対価を支払うことで、「その範囲においては」自分の好きにできる権利を得ようというものです。したがって、ホステスクラブの客は自分が「主役」になるために来客してきているのです。

しかし、六本木のある若いホステスは、仲良くなった一人の客にプライベートのことをいちいち詮索されるようになると、同伴の最中にキレて喧嘩してしまいました。この若いホステスは、その客のことをストーカーだと言って相手を悪者に仕立て上げましたが、敏腕ホステスたちは逆にこの若いホステスに落ち度があると言います。何故なら、「客は自分が主役になりたいから店に来る」というクラブの大原則にこの客は沿った行動をしている、むしろ頻繁に実践してくれているからです。客を主役にするために、上手く「脇役」に徹してリピーターにすることがホステスの仕事なのです。斉藤里恵さんも同様のことを言っています。

“ときにホステスは、何も知らないふりをすることも必要。お店は私たちのステージです。女優のように役に徹して、お客様に喜んでいただくことは大切なのです”

ビジネスシーンに置き換えて言うと、クライアントに対して感情的になって話をしてはいけないということです。もちろん腹が立つこともあると思いますが、職務として相手と接しているわけなので、相手が利益を得るためにそれ相応の対価を支払おうとしていることに対してそれを否定してしまったら、自分の仕事を否定していることになってしまいます。プロの仕事をすることにおいて重要なのが、「自分の感情をコントロール」して、個人的な本性を封印することにあるのです。

Career Supli
斉藤里恵さんのように”人の感情を揺さぶる魅力”を備えた人物は、自らの明確な行動指針を持ち合わせているものです。「ギリギリになったらやる」「めんどくさい」といった刹那的な理由で簡単に自分のゴールは変えません。ビジネスシーンで失敗しないプロというのは、自分の願望を実現するために既にシナリオを持っていて、それをブレずにひたすら遂行する人のことを言うのかもしれません。
[文・編集] サムライト編集部