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SNSに代金を支払えますか?
最初にひとつ、質問です。もしfacebookが月額500円になったら利用を続けますか? Twitterは? Instagramならどうでしょう? 多くの方が、少なからず躊躇するはずです。そう、私たちにとってSNSは無料であることが当たり前になっているのです。
SNSに限らず、サービスが“無料”であることは、いつの間にか消費者にとって当然のこととして受け止められています。ソーシャルゲームの多くはお金を払わずに楽しめ、YouTubeにアクセスすれば音楽も動画も見放題。電子書籍がお試しで無料で読めたり、各種宅配サービスの送料が無料になるのも、私たちは当然のように享受しています。
もちろん、これは消費者にとっては喜ばしいことでしょう。しかし、有料でサービスや製品を提供し続ける生産者にとって、これは驚異と言うほかありません。この“フリー(無料)”の時代において、生産者はいかなる対策を取るべきなのでしょうか。
今回は、アメリカの雑誌WIREDの元編集長のクリス・アンダーソン氏が著した『フリー <無料>からお金を生みだす新戦略』を参考に、“フリー”の時代の生き抜き方を考えていきます。
フリーを利用した、3つのビジネスモデル

まず、フリーを利用したビジネスにはどのようなものがあるのか、実際にそのビジネスモデルを見ていきましょう。
直接的内部相互扶助
消費者の気を引くように、あるものを無料にして、ほかの有料サービス・製品の購買につなげようというやり方が、この直接的内部相互扶助です。
身近な例で言うと、例えばピザ屋などで「1枚買うと、もう1枚無料」というサービスを聞いたことがありませんか? あるいは、ショッピングモールの駐車場で一定金額以上のレシートと引き換えに駐車が無料となったり、あるいは電子書籍の冒頭だけ読めたり……。これらはすべて直接的内部相互扶助というモデルの一つです。
三者間市場
多くのメディアのビジネスモデルが、この三者間市場に当てはまります。広告主と製造者の間で金銭のやりとりが行われているため、第三者である消費者は無料でその情報を受け取れるという仕組みで、テレビやフリーペーパー、ウェブメディアの多くがこの形式を取っています。
広告主は生産者にお金を払い、消費者は商品を購入したりサービスを利用することで広告主にお金を払う。広告主と生産者、消費者と広告主というように2つの市場が形成されていることから、市場の二面性と呼ぶこともあります。
フリーミアム
フリーミアムは、基本的なサービスや製品を無料で提供し、さらに高性能で付加価値の高いものを有料版として、主にウェブ上で販売する制度です。例えば、有料会員制のオンラインサイトや、無料版・有料版の両方をリリースしているアプリ、あるいはソーシャルゲーム内の課金システムがその例として挙げられます。
香水などの試供品を無料で配るサービスがそれに近いと思われる方もいるかもしれません。ただし、フリーミアムが異なるのは、実費がかからないデジタル製品であるということ。コストを抑えられるため、例えばオンラインサイトの場合、少ない有料会員で多くの無料会員を支えることができるのです。
“無料”コンテンツを消費する現代で、いかにお金を稼いでいくか

さて、『フリー』が書かれてから7年。フリー市場はますます加速しています。そんな中、私たちは無料でお金を稼ぐにはどうしたらよいでしょうか。ここから先は、2016年現在、情報に価値を与え、収益化している例をふたつ紹介します。
紹介する2人の共通点は、ブログやSNSといった“無料”コンテンツで十分に集客した後で“有料”のステージに立ったということです。
『note』–イケダハヤトはテキストの時代を作る
違いますって、これから時代をつくるんですよ。純粋な文筆業でも、これからの時代は食えるんです。そういう道を、ぼくは作ろうとしているわけです。ぼくはセミナービジネスはやりたくないので、いかにデジタルなテキストで収益化するかを追求しております。
— イケダハヤト (@IHayato) 2016年1月16日
高知県在住のブロガー、イケダハヤトさん。人気ブログ『まだ東京で消耗してるの?』を運営し、月収は500万を超えるとも言われている彼は、今『note』の収益化に情熱を注いでいます。
noteとは、個人のクリエイターが自分の「メディア」を持つプラットフォームのこと。文章のみならず写真やイラスト、音楽や映像まで届けるこのサービスは2014年春より始まり、タレントの伊集院光さんやロックバンドのくるり、女性漫画家集団のCLAMPなどの有名人を筆頭に、多くのクリエイターたちの創作活動を世に出してきました。
noteの最大の特徴は、クリエイターがコンテンツについて100円から10000円で値段をつけることができるという点です。イケダさんは、ブログで無料で公開していた、ブログ運営のコツや独自のメディア論を書いた記事を、月額500円の有料マガジンという形で販売し、多くの人の興味を引いています。
『synapse』–はあちゅうはコミュニティで信頼をつくっていく
【有名人になりたい?】
正直、私は
「有名人」になりたいです。その気持ちが、ちゅうつねカレッジの一ヶ月を通して大きくなりました。
有名である、ということは、信頼を得るということだからです。
信頼を得ると、私がいいと思ったことが広がっていく。
それに、自分の力の120%を試せる場が増えるということだと思います。引用元:4月のちゅうつねサロンまとめレポート #ちゅうつね
現代女子のカリスマとまで言われるブロガー、はあちゅう(伊藤春香)さん。彼女が、起業家の経沢香保子さんと『synapse』で運営する「ちゅうつねカレッジ」は、月額8900円ながら、2016年春時点で女性を中心に400人以上の参加者がいます。
『synapse』は、国内最大級のオンラインサロン・プラットフォームのことで、純度の高い情報や近い距離感を求め、知名度の高い主催者や同じ関心のもとに多くの人々が集まっています。「ちゅうつねカレッジ」には、二人の人脈を活用して、LINEの元代表森川亮氏をはじめ、毎月豪華なゲストが登壇し、参加者に会費以上の満足感を与えているとのことです。
はあちゅう氏はこのサロン以外にも、ライフスタイルプロデューサーの村上萌氏と「ちゅうもえサロン」も行っており、そちらの会員数は700人超。国内最大規模のオンラインサロンを構築しています。これほどの人気を博すことができたのも、はあちゅう氏がすでにカリスマブロガーとしての立ち位置を確固たるものにして、Twitterのフォロワー数8万人という絶大な人気を博していたからでしょう。
まずは“無料”から、そして“有料”へ
イケダハヤト氏、はあちゅう氏の例からわかるのは、まず“無料”で人を惹きつける準備の必要性です。情報が無料で手に入る現代。最初から有料のコンテンツには、人々は見向きもしないでしょう。
“無料”で価値を証明できて初めて、“有料”に人々の関心を集められる。これからの時代、売れるコンテンツは必ず“フリー”の入り口を通らなければならないでしょう。
参考文献『FREE <無料>からお金を生み出す新戦略』
